転生鍛冶師は剣を打つ

夜月空羽

第七十話 精霊の棲家

リリスとセシリアと身体を重ね合わせた俺は精も根も尽き果てていた。
俺の隣には同じく一夜を共にしたセシリアは俺同様にぐったりとしていて、リリスだけが今までに見たこともない充実した笑みを浮かべている。
始めはまだジャンヌとで経験がある俺が二人をリードしながら二人の処女を貰った。それからも俺が主導権を握ったままだったのだが、途中からコツを掴んだのか、慣れたのかは知らないが、気がつけば主導権をリリスに奪われてセシリアと共に絞れるだけ搾り取られた。
自分でも性欲は強い方だと自負していた。現にジャンヌとするときだって五回戦ぐらいはするし、朝までずっとしっぽりすることだってある。
けどリリスはそんな俺を満足以上に出すもの全てを出し尽くされた。
日頃、俺がジャンヌにしているようにリリスにされるとは……………。いや、わかってはいたことだけど本当にリリスさんが初めてだったとは思えないほどのテクニックでしたわ。
リリスにされるがままに犯された俺とセシリアは今回の事を一生忘れることはないだろう。
そして俺はこれからリリスとする時は精力剤を買っておくことに決めた。
「うふふ、初めてでしたがなかなかよいものですね。癖になってしまいそうです」
楽しげに呟くリリスの言葉に俺は背筋が凍った。
た、頼みますから毎日は勘弁してください……………。リリスさんと毎日は流石に死ぬ………。腹上死する可能性も否定できないのが辛いわ。
「あらあらうふふ」
リリス様は微笑みながら俺の頭を撫でてくる。
恐ろしいことに顔は笑っているもその目は嗜虐心に満ちていた。まるでいたぶる獲物を見つけた狩人のような目を俺に向けてくる。
いつの日か、俺はリリス無しでは生きられない身体に改造されてしまうかもしれん。
割とマジで………………。
「三人共起きてる? 食事の用意ができたわよ」
天幕の外からそう声をかけてくる我が愛しき君。
何故だろう? 今、凄くジャンヌ抱き着いてその胸に顔を埋めたい……………。
「すぐに行きますね。さぁ、ご主人様。そろそろ起きましょうね」
そうして俺はセシリアと共にリリスに優しく起こされてジャンヌが用意してくれている朝飯を食べるのであった。


朝食を摂取してリリスに搾り取られたエネルギーを取り戻して俺達はセシリアの案内で目的地である精霊の棲家へとやってきた。
そこを一言で表すというのであれば棲家ではなく幻想郷が正しいだろう。
「綺麗……………」
そのあまりの光景に見惚れるジャンヌ。しかし眼前の光景は確かに見惚れてもいいぐらいに美しい光景が広がっている。
「ここが精霊の棲家………」
自然に調和された森の美景はまるで有名な芸術家が描いた絵画がそのまま現実に投影されたかのように美しく、どこか神秘的な雰囲気を醸し出している。
元いた世界でもこれほどの美しい光景はまずお目にかかれないだろう。そう断言できるほどに俺達は目の前の美景に見惚れていた。
「棲家っていうのは比喩だったんだな」
「はい。この森そのものが既に精霊の棲家です」
棲家というからダンジョンみたいな場所だと考えていたけどまさかこの森そのものが精霊の棲家だったとは………。
「言い伝えでは遥か昔、この場所は神々が集う場所とされて神々が天界に去った後でも多くの神性がこの場所に宿り、精霊が住みついたとされています。そしてそれを最初に見つけたのが我々エルフであり、この場所を穢すことがないようにエルフ以外の種族は近づかせない様にしているのです」
「なるほど……………」
もしかしたらエルフが精霊に愛されているのはここを護っていてくれたからその恩返しとして四属性全てに魔法の適性を持ち合わせているのかもしれない。
「目的の精霊石はこの森の奥にある精霊洞窟にあります。急ぎましょう」
「おう」
精霊の棲家の次は精霊洞窟か…………。
ジャンヌの盾を作る為とはいえ、少し冒険心が出て来てワクワクしちまう。
冒険心を抱き、セシリアに続こうとする俺はその一歩を踏み出すと、不意に地面に穴ができた。
それも俺の足元に、ピンポイントで。
「って、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!?」
「ト、トム!?」
突然現れた穴に落下する俺にジャンヌは驚きの声をあげる。
「な、なめんな!!」
しかし俺だって伊達に師匠の地獄のようなスパルタ修行を乗り越えて、修羅場をくぐってきたわけではない。風の魔剣の力を使って俺は穴から這い上がる。
「トム!? 大丈夫なの!?」
「あ、ああ………だ、だが、これがセシリアの言っていた妨害か…………」
事前にエルフ以外の種族が足を踏み入れれば妨害を受けるとは聞いていたけど、まさかこんなにもピンポイントで妨害してくるとは思わなかったぞ。
何かしらの意思でも働いているのか? 精霊の意思とか?
思わぬアクシデントに驚くもここで立ち止まるわけには行かない。俺達の目的は精霊石。それを手に入れるまでは背を向けて帰るわけにはいかない。
「よし、行くぞ」
精霊石がある精霊洞窟を目指して行動を開始する俺達だが、移動中も妨害は続いた。
…………………俺だけに。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」
ある時は蔓が意思を持っているかのように俺の足に絡み付いて上空に高く放り投げられ。
「くそったれ! 男に触手プレイって誰得だ!?」
ある時はエロ同人誌に出てくるように枝が俺の身体に絡み付いてきて。
「くたばれやオラッ!!」
ある時は人型の木の怪物が俺に襲いかかってきたりと、精霊の棲家の妨害は俺にだけ降り注がれる。
何故に……………?
「常日頃から貴方が邪な感情を抱いているからじゃないかしら?」
「クエ」
ジャンヌの平淡な言葉が俺の心に突き刺さる。
おいクソ鳥。肯定すんな、焼き鳥にして食うぞ?
そんな俺にだけ厳しい精霊の棲家を妨害されながらも突き進み、俺達は精霊洞窟まで辿り着いた。
「この洞窟の奥に精霊石があります」
セシリアを先頭に洞窟に入る俺達。
洞窟の中は予想よりも明るく、視界に困ることはない。先程のように妨害に警戒していた俺だけど洞窟の中はそういった気配もなく順調に洞窟の奥へと足を動かす。
そして洞窟の最奥。ドーム状になっている広い空間で俺達は目的の精霊石を発見した。
「これが精霊石……………」
洞窟のあちこちにある七色に輝く鉱石。それこそが俺達が求めていた精霊石だ。
七色に輝く精霊石に見惚れているとセシリアが俺達に向けて口を開く。
「採掘は必要分だけでお願いします」
「ああ、わかった」
了承するも本音を言えばもっと欲しい。そしてジャンヌの盾だけではなく他にも使ってみたい気持ちもあるが、本来なら手に入らないレアな鉱石だ。それがセシリアのおかげで手に入るのだから文句を言うのはただの我儘だな。
そう思いながら俺はジャンヌの盾に使う分だけ精霊石を採掘してリリスから貰った魔法道具に収納しておく。
よし、目的は達成した。後は帰って盾を作るだけだ。
俺達は目的の代物である精霊石の採掘を終わらせて洞窟を出ると。
「よぉ」
洞窟を出たその先には忘れもしない存在が立っていた。
俺は反射的に鞘から刀を抜いて魔力操作を足に集中させてそいつに斬りかかるが、そいつはあっさりと防御する。
「おいおい、いきなりだな。そんなに俺が恋しかったのか?」
「ああ、この溢れんばかりの気持ちが恋心さついというのなら肯定してやるよ。グリード」
「ハッ、嬉しいね。俺も同じ気持ちだぜ? トム」
剛毅な笑みを浮かばせながら同意してくるこいつのことを俺は忘れた日など一日もない。
ジャンヌを傷つけ、泣かせた張本人。七つの欲セブンズ・デザイアの一人、グリード。
まさかこんなところで再会するとはな…………まぁいい。
「お前を斬る」
そう、俺はジャンヌを傷つけたこいつを斬る。その為にジエン流を身に付けて強くなった。
今こそ俺自身に立てた決意を果たすとき。
「いいぜ。こい」
精霊の棲家。そこで俺とグリードの戦いが勃発する。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品