転生鍛冶師は剣を打つ

夜月空羽

第二十三話 罰執行

話が纏まったと思ったら突然リリスがぶっ飛んだことを言ってきた。
「リ、リリス………どういうこと?」
「言葉通りの意味ですが?」
説明を求めてもそう返された。
しかしいくらなんでも耳責めなんて………………。
ちらりとエルフを見ると自分の両耳を押えて猫のように警戒している。
「リ、リリスさん。どうしてそんなことをする必要があるの? 魔剣を盗んだことはさっき謝ってくれたじゃない」
「その考えは甘いですよ、ジャンヌ様。確かにこの方は謝罪をしました。盗まれたのが普通の剣であるのでしたら私もここまでは言いません。ですが、この魔剣はご主人様とジャンヌ様が命を賭けてようやく倒した灼熱竜ヴォルケーノドラゴンの素材から作られた魔剣。値を付ければ数千万ゲルド、いえ、もっとあるでしょう。それを盗み謝罪だけで済まされたらお二人の沽券に関わります」
「沽券って流石に大袈裟じゃ………………」
「いいえ、大袈裟ではありません。ですから盗みを働いた罰を執り行いべきです」
「それでなんで耳責め?」
「エルフにとって異性に耳を触れられるのは最大限の恥辱です。そちらの方が本当に罪を感じているというのなら甘んじてお受けになるべきです」
「う………………」
厳しいリリスの言葉に呻くもエルフは先程のリリスのある言葉に耳を疑った。
「竜を倒した………………?」
「ええ、こちらのお二人が。正確には戦ったのはお二人ですが倒したのは私のご主人様です」
「人が、竜を…………………?」
ありえないものを見る目で俺を見てくるエルフに俺は苦笑しながら頷いた。
「まぁ、一応…………………」
途中からはよく覚えていないけど。
そこでリリスが笑みを深めてエルフに進言する。
「おわかりいただけましたか? 竜を倒したご主人様なら悪魔だろうときっと倒していただけるでしょう。その実力の一端は貴女がその身を持って体験なされたと思いますが?」
エルフは俺に斬られた腹部に手を当て神妙な顔をする。
「そのような強者の力を借りられるというのに貴女は罰も甘んじて受けず、ただ助けてもらうだけでよろしいのでしょうか? エルフの高潔さはその程度のものなのですか?」
「………………………………ッ」
な、なんかリリスがどんどんエルフを言葉で追い詰めているように聞こえるけど、もしかしてリリスは怒ってくれているのか? 俺の為に。
確かにこの魔剣は俺の渾身の一振り。それを盗まれて怒ってはいたけどエルフの事情を聞いたら仕方がないと割り切っている。それでもリリスはそんな俺の為に怒っているのだとしたら責めるような口調にも納得がいく。
リリス………………お前ってどこまでいい女なんだ。
俺の為に怒ってくれるリリスに嬉しくて思わず涙が出てしまいそうになる。
感動に浸かる俺はリリスに今度何かお礼をしようと思ってリリスを見て気付いてしまった。
あれは何かを企んでいる眼だ。
「リリス。ちょっとこっちに」
「はい」
俺はリリスを連れて部屋の隅に移動して尋ねる。
「リリス。何を考えている?」
「流石はご主人様。鋭い観察力です」
「話を逸らさずに正直に言いなさい」
下手に君の話に耳を傾けると誤魔化されそうになるからその前に先手を打つ。
「ご主人様はあちらのエルフをご自分のものにしたいとは思いませんか?」
「………………どういう意味?」
「言い方を変えましょう。ご主人様はハーレムに興味はおありで?」
「………………………………詳しく」
「はい。多くの女性を侍らせて自分だけのものにする。それは年頃の殿方なら一度は夢する願望ですよね?」
「まぁ、そうだな………………」
だってせっかくの異世界なんだから男の浪漫であるハーレムを築きたいと思うのは男の子として誰もが夢見るものだ。
「私がそのお手伝いをしましょう。多くの種族の女性達をご主人様の女にする。その計画の最初の一歩をあのエルフにいたしましょう」
「なんでそんなことを? いや、嬉しいけど」
「魔族の王位継承権は男性を優先するというお話は前にしましたよね?」
「ああ、そういえば」
魔族領の王位継承権。確かリリスの弟さんが継ぐんだったけ?
「それ、別段魔王になるのは魔族ではないといけない法がないのです」
「………………………………それってつまり」
そこでリリスは笑みを浮かばせながら言った。
「はい。是非ともご主人様には我が国の王である魔王となって頂きたいのです」
凄いとんでもないことを聞いてしまった。
俺が、魔王………………?
「魔王になるのに最も必要なもの。それは力。理不尽すらも覆し、理不尽を押し付けられるほどの圧倒的なまでの力。それが魔王になるのに必要なもの。勿論政治に関する知識も必要になりますが」
その辺りは俺の知っている魔王のイメージ通りだな。確かに魔王は強くないと。
「でもなんで俺を魔王に?」
「ご主人様はそれだけの力を有しているからです。ですから魔王になるのに相応しいのです。ですが、それだけでは魔王にはなれません。ですから他種族の女性を侍らせて人脈を作り、それを実績とするのです。そして私は未来の魔王の妃としてそのお手伝いをしましょう」
とんでもない計画を企んでいたリリスに俺は言葉を失った。
リリスがそんなことを考えていたとは微塵も思わなかった。まさか俺を魔王にするとは。
「ご主人様にとっても悪いお話ではないでしょう? 多くの女性を侍らせ、魔王として贅沢な暮らしができるのです。それとも不服ですか?」
「いや、ハーレムは男の浪漫だから不服なんてない。あるとすれば鍛冶師として剣を打たせてくれるかどうかだけど、それよりもリリスはそれでいいの?」
「私から提案しているのですからいいも何もないですが……………?」
「いや、リリスが俺の嫁になってくれるのは嬉しいけど、リリスは、その、俺なんかと結婚してもいいの? 俺の強さはスキルのおかげだし、容姿だってそこまでよくない。それに対してリリスは美人だし、頭も良くて包容力だってあるし、エロいことにも寛容だし、正直俺なんかとつり合っていないんじゃないかなって………………」
自分で言っておいて凄く情けないけど、俺とリリスは釣り合わない。
だから俺なんかよりもいい人を見つけられると思う。
そんな俺の言葉を聞いてリリスはふと笑みを溢す。
「私はご主人様のことを一人の男性としてお慕いしておりますよ? 正直に申しましてゾッコンです」
「え?」
リリスの言葉に俺は自分の耳を疑った。
俺、何時の間にリリスルートを攻略していたの?
「召喚された時はお二人の喧嘩する姿が微笑ましくて弟や妹を見る目で見ていましたし、そういう風に接してきました。ですが、ジャンヌ様の為に自らの意思で竜と立ち向かうことを選んだご主人様のそのお顔を見てから私の中でご主人様を見る目が変わりました。その時から私はご主人様に惚れています。ですからこのような提案をしているのです」
驚いた。まさかリリスが俺に惚れてそんな提案をしてくるとは思わなかったから。
なんだろう…………この胸が弾むような気持は? 思わずにやけてしまう。
「ちょっと、二人でいつまで内緒話しているのよ?」
ジャンヌがしびれを切らしてむすっとした顔で言ってくる。
「大丈夫ですよ、ジャンヌ様。もう終わりましたから」
リリスがいつもの笑みでそう告げると耳打ちで俺に言う。
「答えはいつまでもお待ちしておりますから」
「うん…」
正直気持ちの整理がつかない。リリスの提案は後でゆっくりと考えるとして今はエルフだ。
「………………………………」
頬を赤くして難しい顔で俺を見てくるエルフは覚悟を固めた戦士のように口を開いた。
「…………………正直、私は貴方が本当に竜を倒したことが信じられない。だが、私はもう貴方方に縋るしかないというのは事実。罰を甘んじて受け入れ、同胞を救えた証として御身に忠誠を捧げます」
「それで構いませんよね? ご主人様」
「…………………うん」
「では罰の執行を」
リリスに促されて俺はエルフに近づいて耳に触れようとするとエルフは怯えるように身体を震わせている。
なんか、嫌なことを強引にしているみたいで凄く気が引けるけど我慢してくれ。
俺はそっとエルフの長い耳に指を当てる。
「んっ……」
色っぽい声が口から漏れる。
まだちょっとしか触れてないんですけど?
続けて指で耳を撫でると。
「んっ…ふぅ…………」
なんでこのエルフは耳を撫でただけでそんな色っぽい声を出すんだよ!? 俺まで変な気持ちになっちまうじゃねえか!?
ハッ、まさかリリス。それを知って耳責めなんて言ったのか?
リリスを見ると笑みで返された。
エルフの耳は性感帯だと知った上で言ったのか!? 異性に耳を触れられるのは最大限の恥辱って言った意味がようやくわかったわ!!
「ふふふ、ほらご主人様。その程度では罰にはなりませんよ?」
サドの笑みを浮かべながら催促してくるリリスに俺はエルフの耳を指で挟む。
「ひぅ…ん、あっ……」
細く漏れる声、上気した頬に必死に恥辱に耐えようとする瞳が俺の中にある嗜虐心を擽らせる。
「ひぐ、んっ、ふぁ……はっ」
触り、撫で、挟むなど指で耳を弄るように触り続けるほどエルフの口から艶のある声が漏れる。
エルフが奴隷として価値が高いといった意味も分かった気がする。
ただ耳を触るだけでこんなにもエロいなんて想像もしなかった。耳を触っているだけで声を出し、身体を震わせて身をよじらせている。その反応だけでせっかく賢者になった俺が再びビースト化してしまいそうだ。顔立ちが整っているから余計に興奮する。
「は、破廉恥だわ……」
言うな。俺も思っているんだから。
「破廉恥ではありませんよ。これはれっきとした罰なのですから」
そしてリリス。せめてお前は笑みを隠せ。
そうして耳を触る度にエロい声を出すエルフに罰を与えていると。
「ではそろそろ舐めてみましょうか」
「「はい!?」」
リリスの言葉に俺とジャンヌは見事にハモった。
「リリスさん! 貴女は何を言っているの!? 女性の耳を、な、舐めるなんて……ッ!」
ジャンヌが顔を真っ赤にしながら真っ当なことを言う。
「これも罰です」
「どんな罰なのよ!? 流石に限度があるでしょうが!?」
「安心してください。舐めるのは私です」
それはそれで別の意味で安心できないと思うは俺だけだろうか?
そう思っているとリリスはエルフの背後に回って腕を回して動きを拘束するとエルフの耳に甘噛みする。
「―――――――――――っ」
「まだまだ罰はこれからですよ?」
そう言いつつエルフの耳を執拗にねっとりと舐め回してクチャピチャとわざとらしく音を立てながら耳を責めるリリスにエルフは最早我慢の限界が近い。
「ふふふ」
笑うリリス。その笑みは嗜虐心が満たされていく笑みだ。
…………もしかしてリリスってバイ? ハーレムって言いつつもそれは自分も楽しむ為に俺を魔王にする計画を立てたのか? あり得る……。
だがしかし…………。
俺はリリスに責められているエルフを見ながら思った。
恥辱に耐えようと必死に堪えているエルフにそれを崩そうと責め続けるリリス。二人を見ているとリリスの提案に乗るのもいいかもしれない。
「あわ、あわわわわ…………」
「あー、リリス。俺達はあっちにいるから終わったら教えてくれ」
「はい」
リリスのエロさに当てられてジャンヌは頭から湯気でも出てきそうなほど顔を赤くしている為にジャンヌをその場から離させる。
男の俺にとっては眼福だけど初心なジャンヌには刺激が強過ぎるな。
ジャンヌと一緒に別の場所に移動してリリスが満足するまでエルフの喘ぎ声は続いた。
罰と言いつつ一番楽しんだのはリリスだな…………。

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