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戒めの記憶

ゼノン

第1話:護衛依頼

昔々、人間と魔族がまだ手を取り合っていた頃、天使と悪魔は激しい闘いを繰り広げていた。
魔族達は、自分らの闘いで人間を巻き込むのをよしとせず、自ら天使達に無謀な闘いを挑んだ。
女神は言った。
「この程度の分際でよく闘いにこれたものね」
そう冷たく、見下すような瞳で言い放った。
魔族は怒り狂い、今度は魔王自ら天王に闘いを挑んだ。決して、勝てるものではないと、その心の中ではちゃんとわかっていたのに、魔族としてのプライドが許さなかった。
でも、その尋常じゃない闘志が、天使達を敗北という名の、地獄に陥れた。魔族はそんな天使達を嘲笑い、人間達は魔族達に対して恐怖と憎悪を抱くなった。
ある日、一人の魔族が村の青年によって殺された。これまでずっと仲良くしてきたはずの魔族を殺した青年は、女神がやったように見下すように睨みつけ、魔族の頭に唾を吐いた。
当然、魔族達はそれを怒り、人間達を滅ぼそうとした。だが、どこからが現れた一人の少年によって、逆に魔族がほぼ滅ぼされた。
少年は魔族を超える力を持っており、天王と冥王を、右手に持っていた大きな剣で殺した。少年の瞳には何も写っておらず、まるで感情そのものが抜け落ちたかのように。
その後、少年はそれっきり姿を消して、二度と現れることはなかった。






《始まりの場・グレイス》と呼ばれる街のベンチで、一人の少年が寝そべっていた。
肩ぐらいで適当に切りそろえられた黒い髪、何者も寄せ付けない闇以上に暗い瞳、薄くもなく厚くもない唇、少年の見た目で見ればやや小さい体をしている。
燦々と太陽の光が降り注ぐ季節だと言うのに、厚手の黒いコートを着ていて、中のシャツズボンもブーツも黒かった。いわゆる全身黒尽くめである。
そんな格好をしている少年の表情には暑いと言う感じもなく、汗一つもかいていない。
「ここで何してるの?」
ベンチで寝そべりながらただぼーっと空を見つめていた少年ーーゼノンの元に、街の中でもかなりの一眼を集めるぐらいの美しさを誇る美少女がやって来る。
肩より少しぐらい伸ばしたやや桜色の白髪、右が青で左が赤のオッドアイの瞳、少しばかり挑戦的に吊り上がった桜色の口元。
落ち着いた色が好きらしく、紺色のコートに中に黒いシャツを着ていて、青色のスカートを履いている。ブーツは見た感じ分厚く高級品である。
美少女の名はリサーナと言い、現在ゼノンとパートナーを組んでいる。
一年前にゼノンがギルドである依頼を受けたことにより、リサーナとパートナーを組むことになったが、ゼノンにとってにわかで組んだパートナーを未だ解消していなかった。元々、リサーナの都合もあってそうなったのだが、ゼノンはパートナーを組むことに悪い気はしていなかった。
「別に、ただ、空を眺めていただけだよ」
ベンチで寝そべる自分を見下ろしたリサーナの言葉に、いつも通り無表情で答える。
「じゃあ、今からギルド行こ。受けたい依頼があるの」
「お前の都合上、依頼を受けないといけないのはわかるが、少し急ぎすぎじゃないか?」
「別にいいじゃない。あなたは私のパートナーなんだから、付き合ってよ」
「それ、聞く人によっては誤解を生むぞ?」
「バッ、馬鹿じゃないの!?    何で私がそんな恋人みたいなゴニョゴニョ……」
顔を赤く染めて怒るリサーナを見てため息を吐いたゼノンは、体を起こすとベンチから降りる。
「それじゃあ、依頼受けに行こうか」
「え?    いいの?」
急に立ち上がって言うゼノンに、リサーナが驚いた顔を向ける。
「まぁ、パートナーだし」
「じゃ、じゃあ、今すぐ行こ!    依頼は私たちを待ってくれないよ」
「はいはい」
そんな会話を続けながら二人はギルドに向かう。





「はい。それでは、貴方達にこの依頼を託しますね。くれぐれも、本当にくれぐれも粗相のないようにお願いしますね?」
はい!    わかりました」
ギルドで依頼を受けたリサーナが、ギルド嬢の言葉に元気よく返事をしている。ギルド嬢の真剣な顔に言うセリフとリサーナの元気なセリフが噛み合ってなさすぎる気もしたが、ゼノンは取り敢えず気にしないことにした。
「で、なんの依頼を受けたの?」
「ものすごく簡単な依頼」
「内容は?」
嬉しそうに近づいてくるリサーナに依頼の内容を聞く。大変で面倒臭そうな依頼でなければ、ゼノンも同行しようと思っていたが……、
「王女様の護衛!」
同行しなければいけない内容だった。しかも、全然簡単な依頼じゃない。
「……リサーナ。その依頼、物凄く面倒臭くて大変で簡単じゃないって事、わかってて受けた?」
「そうなの?」
この依頼が難しいとは微塵も思ってなかったらしく、キョトンとした顔で不思議そうに首をかしげる。
「まぁ、うん。そうだけど……もういいか。受けちゃったし」
「ご、ごめんなさい」
リサーナはある事情によって冒険者になった少女なのだが、一年も一緒にパートナーをやっていたはずなのに、未だに依頼の難易度がわからないという問題がある。
ゼノンは気まぐれでパートナーをやらなければよかったと後悔をしてしまった。
「取り敢えず、依頼者は誰?」
「えーと、エリシア王女様」
「依頼内容は?」
「エリシア王女様の護衛二週間」
「報酬は?」
「2000ヘルズ」
「……」
一ヘルズで100円なので、2000ヘルズで200000円になる。意外と報酬金が高いとゼノンは思う。
「まぁ、護衛依頼なら……いいか」
ほぼヤケクソ気味で答えるゼノンだった。
だが、そのヤケクソで答えたゼノン達に、この後……とんでもない悲劇が待っていることはまだ誰も知ることはなかった……。


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コメント

  • 如月 薊

    ( ゚▽゚)/コンニチハ
    こちらが訂正版でしょうか?

    続き投稿楽しみにしてます

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