2.5D/リアル世界の異世界リアル
第75話
75
「ツキシドがやられたようだな……」
そんな残念そうな野太い声が聞こえて、俺はひっそりと覚醒した。
ここは……どこだろう? 天井の照明が遠すぎて相当広い空間だとわかるが、それにしたって光量が少ない。寝ぼけ眼なのでどこもかしこも真っ暗に見える。
あとは首が痛いので、長いこと椅子で眠りこけていた感じがした。
「クク……。ヤツもずいぶんと堕ちたものだ……」
「最有力候補とは片腹痛いである。魔族の面汚しめ……」
「ふほほ、他の有力候補もさぞかし笑っていることじゃろう……」
うん……うん? どこかで聞いたような会話だ。
もしかしてあれか? 四天王がいて、その中の誰かが死ぬと残りのヤツらが安全圏からそいつをディスる的な。
ネット掲示板とかでも流行ってたネタじゃないだろうか。
「元々ヤツは頭がイっていた。あぁ、グリーヴァほどではないがな……」
「それと病的なまでに臆病である。さすがにナクコには敵わんが……」
「ふほほ、確かサボリ魔でもあったはずじゃ。イツモワール君には及ばんがの……」
えっ、なんだその中途半端なダメっぷりは?
不良になりきれてない不良みたいな、かえって厄介なヤツだったのでは?
いよいよこの暗闇に俺の目が慣れてくる。
目の前にあったのは黒曜石でできてそうな大円卓だった。
そこには俺以外に4つの影があり、
「…………。え」
円卓を囲むように着席していたのは、しかし明らかに人間ではなかった。
「クク……。あんな不能、こちらで候補から外してしまうべきではないか……?」
―――そう哄笑するは、筋骨たくましい土色の図体を持つ、オーク。
「甚だ同意である。聞けば、同族の大半が他の有力候補を支持しているらしい……」
―――そう呆れ返るは、ぎろぎろとしたひとつ目が衝撃的な、サイクロプス。
「ふほほ、まぁなるようにしかならん。我々は座視で構わんじゃろう……」
―――そう宥めるは、百獣の王も恥じらう髭ぶりの、ドワーフ。
「…………わかった。ではわたしの決定を諸君らに伝えよう。……ツキシドの今回の失態については、不問とする。よいな?」
―――そう取り仕切るは、側頭部と肩先から巨大なとんがりを生やした、
「「「は。魔王様」」」
「!? ま、ままままマオウぅぅぅぅ!?」
俺は黙ってなどいられなかった。
思わず椅子からひっくり返りそうになった(驚愕)。
(いや、でも、うん、そうだな!? 似てるってか、それっぽいってか、魔王と言われたら見えなくもないな!?)
地肌を一切晒さない兜と甲冑は暗黒騎士のようだ。しかし暗黒騎士が騎乗のため細身のイメージであるのに対し、コイツは馬を潰しかねないほどヘビー級の体格。
もはやひとつの城とでも錯覚できてしまいそうな装備だった。
(……あぁ、きっとコイツが魔王だ。風格ある野太い声とか側近達の懇ろな態度からしても、魔王。第2の異世界の、魔王! 俺が殺さなければならない、魔王ッ!!)
はは、これは恐れ入った。
転移して早々にお目見えさせられるとはなッ(←さあ殺してみろw by著者)。
「……? どうしたのだツキシド? 素っ頓狂にわたしを呼んだかと思えば、わたしを観察しているのか?」
「え、いや、別に俺は……って、は!?」
はぃぃぃ!? お、俺がツキシドなのか!?
え、ちょっと待って、じゃあお前ら、本人がいる前でディスりまくってたのか!?
えげつなッ! ツキシドこと俺、可哀想すぎる……ッ!!
(! あー、でもなるほど、俺、憑々谷子童。だからツキシドなのか)
認めたくはないが勇者らしい名前だった。
だけど、俺が勇者でもあるのだったら、魔族のコイツらにバレないのだろうか。
上手いことその事実を隠しているのか?
「クク……。もしや魔王様の隙を窺っているのか……?」
「やめとけである。今の貴様では魔王様に片膝をつかせることすら不可能……」
「ふほほ、冗談は顔だけにせんか。装備が違いすぎるじゃろう……」
顔を冗談扱いされて殺意が湧く俺だったが、いざ自分の装備を確認してみるとフード付きのマントくらいしかまともに身に着けてなかった。俺は旅人かっ。
(おいおい……。そもそも俺とコイツらはどーいう関係なんだ? コイツらから殺意は感じられんが、かといって好意も感じられんし……)
ただ、俺が魔王を殺そうとしているのは承知なのだろう。
それで魔王の側近達は親切にも『お前では魔王様に太刀打ちできん!』と教えてくれている。もっと鍛えてから出直せと勧めているとわかる。
(同じ魔族なんだよな? 仲間意識は一応あるんだよな? 著者は『魔王が新たな魔王の誕生を密かに望んでる』とか言ってたし……)
となるとやはり、そういう魔族間の闘争があり、そういう魔族社会であると受け取っておけばいいのか。
物悲しい社会なわけだが、ぶっちゃけ人間社会も同じだったりするよな。
「ツキシド、久しぶりに会えたのだ。お前の失態についての報告はここまでとし、なにか世間話でも聞かせてくれまいか?」
「…………は?」
魔王からの急すぎる依頼に当惑してしまう俺。
しかもそんな折、魔王はシステム手帳らしき品を手元に広げ、金属質な篭手を嵌めたまま器用にペンを握っていた。
「ふほほ、いけませんぞ魔王様。ツキシドはあなた様の座を奪わんとする輩。本来馴れ馴れしく接してよい相手ではありませぬ……」
「クク……。有力候補と積極的に関わりたがるとは面白い。その余裕あってこその魔王様だ……」
「さすがは全魔族の長である。避けられぬ運命をまるで気に留めんとは……」
側近達が朗らかに発言する中、なぜか魔王がペンを走らせ始めた。
……その忙しなくしたためる姿は、教壇前で真面目に授業を受けている優等生と完全に一致。集中力がハンパなかった。
(な、なにしてんだこの魔王……? メモ? メモを取ってるのか……?)
俺は若干引いた。
メモを取るのはとても大事な行為だが、なぜこのタイミングでメモ?
そして魔王がメモ?
側近達は誰もメモなんてしていないので余計に違和感があった。
「……よし。ツキシド、わたしの立場や側近の言葉は気にせずに。世間話、聞かせてくれ」
魔王がペンを走らせるのを一時中断し、俺に顔を上げてくるが、
(って言われてもだな……。まず俺はこの世界に来たばっかで、ツキシドがどんなヤツかすら知らないんだぞ……)
だいたい、世間話を聞かせるってなんだ?
『あの子とこんな話したんですよ~』なんて話題が欲しいのだろうか。
魔王のくせに、そんな酒の肴にもならないものを欲しがるのか。
……まぁいい。だったら読者や著者にも聞かせてやろう。
ただし前の世界での世間話だ!
「実は武闘大会前日に、俺の婚約者であるトピアとラノベの話をしたんだよ。彼女はラノベに詳しくないんだが、ラノベに興味は持ってくれててな? そんでつい俺が情熱的に語ったら、『もう結婚式の引出物はあなたの好きなラノベでいきましょう』って。彼女が呆れたように微笑んでくれたんだ。……ははっ、自慢になっちまうが優しい嫁だろ?」
「「「創作乙」」」
側近達が半眼でバッサリだった!
いやまぁ実際、創作なんですけどねッ!?
「ほほぅ、それはなかなか羨ましいお嫁さんじゃないか。……で、その与太話の続きは?」
「ね、ねーよ! あっても与太話とか言い切ってるヤツには話したくねえわっ!」
「いいから続き、話してみろ。与太話扱いされて悔しくないのか?」
な、なんなんだこの魔王は!? 別の意味で側近達よりも格が違うんだが!
俺と性格が合わない気がする! 下手したらリア充達よりも苦手かもしれない!
(め、メンドくせぇ……。さっさとこの場から立ち去りてぇ……。いっそこの世界から消え去りてぇ……)
魔王がこんなヤツと知れて早速鬱になってきた俺は、椅子の背もたれにずっしりと寄りかかった。
その直後、
「―――失礼いたします」
音もなく俺の傍らに立ち現れたのは女の魔族だった。
いきなりの登場に俺はビクッとして、それからすぐに怖気づいてしまう。
(なっ!? む、むむむ、胸デカぁ――!?)
未だかつて1度も目にしたことのない、大玉スイカ2つ分くらいのおっぱいをぶら下げていた彼女は、まさかのサキュバスだった!
肉付きのいい長身に、コウモリの翼、ヒツジに似た角。格好は丈の短いネグリジェのような薄着と、レースアップのロングブーツ。
髪はピンク色の1本結びで、シルクハット型のカチューシャをしていた。
(や、細かいとこはいいんだよ! とにかくなんなんだこのデカパイは!? 俺、大きすぎる胸はあんま好みじゃないのに……だから最初ビビったのに……少しずつトキメキ始めてる気が……!?)
つまりこれがデカパイの真の力なのか!?
実物を直接見てない男共を、一目で黙らせる悪魔がかった魅力!?
サキュバスだけに!?
「どうしたリーゼロッテ? ツキシドに用か?」
「はい魔王様。その通りでございます」
魔王に対しサキュバスは丁寧に一礼すると、
「……平和ボケに余念がない老害どもと3分だけ会ってくる、と仰っていたにもかかわらず、一向に戻ってくる気配がありませんでしたので」
「ほほう……?」
眉を顰める魔王と側近達。一方で俺もサキュバスから視線を逸らし、目を瞑った。
ったく、魔王に対して老害とは命知らずなヤツじゃないか。
一体どこの馬の骨なんだよ(白目)。
「……ふほほ、無礼千万、極刑モノじゃな。有力候補だろうとも決して魔王様への不敬は許されぬ……」
当たり前だ! 相手は魔王なんだぞ魔王!
処刑してトーゼンだッ(常考)!!
「クク……。ツキシドの失態については不問でしたな。ではこの不敬については……?」
「即刻、制裁を加えるべき事案である。……魔王様、ご決断を!」
「「ご決断をッ!!」」
肩を怒らせて側近達が立ち上がった。
次の瞬間、俺は魔王に背を向けて走り出していた!
「こ、殺されてたまるかああああああああああああああああああああ!!」
「ツキシドがやられたようだな……」
そんな残念そうな野太い声が聞こえて、俺はひっそりと覚醒した。
ここは……どこだろう? 天井の照明が遠すぎて相当広い空間だとわかるが、それにしたって光量が少ない。寝ぼけ眼なのでどこもかしこも真っ暗に見える。
あとは首が痛いので、長いこと椅子で眠りこけていた感じがした。
「クク……。ヤツもずいぶんと堕ちたものだ……」
「最有力候補とは片腹痛いである。魔族の面汚しめ……」
「ふほほ、他の有力候補もさぞかし笑っていることじゃろう……」
うん……うん? どこかで聞いたような会話だ。
もしかしてあれか? 四天王がいて、その中の誰かが死ぬと残りのヤツらが安全圏からそいつをディスる的な。
ネット掲示板とかでも流行ってたネタじゃないだろうか。
「元々ヤツは頭がイっていた。あぁ、グリーヴァほどではないがな……」
「それと病的なまでに臆病である。さすがにナクコには敵わんが……」
「ふほほ、確かサボリ魔でもあったはずじゃ。イツモワール君には及ばんがの……」
えっ、なんだその中途半端なダメっぷりは?
不良になりきれてない不良みたいな、かえって厄介なヤツだったのでは?
いよいよこの暗闇に俺の目が慣れてくる。
目の前にあったのは黒曜石でできてそうな大円卓だった。
そこには俺以外に4つの影があり、
「…………。え」
円卓を囲むように着席していたのは、しかし明らかに人間ではなかった。
「クク……。あんな不能、こちらで候補から外してしまうべきではないか……?」
―――そう哄笑するは、筋骨たくましい土色の図体を持つ、オーク。
「甚だ同意である。聞けば、同族の大半が他の有力候補を支持しているらしい……」
―――そう呆れ返るは、ぎろぎろとしたひとつ目が衝撃的な、サイクロプス。
「ふほほ、まぁなるようにしかならん。我々は座視で構わんじゃろう……」
―――そう宥めるは、百獣の王も恥じらう髭ぶりの、ドワーフ。
「…………わかった。ではわたしの決定を諸君らに伝えよう。……ツキシドの今回の失態については、不問とする。よいな?」
―――そう取り仕切るは、側頭部と肩先から巨大なとんがりを生やした、
「「「は。魔王様」」」
「!? ま、ままままマオウぅぅぅぅ!?」
俺は黙ってなどいられなかった。
思わず椅子からひっくり返りそうになった(驚愕)。
(いや、でも、うん、そうだな!? 似てるってか、それっぽいってか、魔王と言われたら見えなくもないな!?)
地肌を一切晒さない兜と甲冑は暗黒騎士のようだ。しかし暗黒騎士が騎乗のため細身のイメージであるのに対し、コイツは馬を潰しかねないほどヘビー級の体格。
もはやひとつの城とでも錯覚できてしまいそうな装備だった。
(……あぁ、きっとコイツが魔王だ。風格ある野太い声とか側近達の懇ろな態度からしても、魔王。第2の異世界の、魔王! 俺が殺さなければならない、魔王ッ!!)
はは、これは恐れ入った。
転移して早々にお目見えさせられるとはなッ(←さあ殺してみろw by著者)。
「……? どうしたのだツキシド? 素っ頓狂にわたしを呼んだかと思えば、わたしを観察しているのか?」
「え、いや、別に俺は……って、は!?」
はぃぃぃ!? お、俺がツキシドなのか!?
え、ちょっと待って、じゃあお前ら、本人がいる前でディスりまくってたのか!?
えげつなッ! ツキシドこと俺、可哀想すぎる……ッ!!
(! あー、でもなるほど、俺、憑々谷子童。だからツキシドなのか)
認めたくはないが勇者らしい名前だった。
だけど、俺が勇者でもあるのだったら、魔族のコイツらにバレないのだろうか。
上手いことその事実を隠しているのか?
「クク……。もしや魔王様の隙を窺っているのか……?」
「やめとけである。今の貴様では魔王様に片膝をつかせることすら不可能……」
「ふほほ、冗談は顔だけにせんか。装備が違いすぎるじゃろう……」
顔を冗談扱いされて殺意が湧く俺だったが、いざ自分の装備を確認してみるとフード付きのマントくらいしかまともに身に着けてなかった。俺は旅人かっ。
(おいおい……。そもそも俺とコイツらはどーいう関係なんだ? コイツらから殺意は感じられんが、かといって好意も感じられんし……)
ただ、俺が魔王を殺そうとしているのは承知なのだろう。
それで魔王の側近達は親切にも『お前では魔王様に太刀打ちできん!』と教えてくれている。もっと鍛えてから出直せと勧めているとわかる。
(同じ魔族なんだよな? 仲間意識は一応あるんだよな? 著者は『魔王が新たな魔王の誕生を密かに望んでる』とか言ってたし……)
となるとやはり、そういう魔族間の闘争があり、そういう魔族社会であると受け取っておけばいいのか。
物悲しい社会なわけだが、ぶっちゃけ人間社会も同じだったりするよな。
「ツキシド、久しぶりに会えたのだ。お前の失態についての報告はここまでとし、なにか世間話でも聞かせてくれまいか?」
「…………は?」
魔王からの急すぎる依頼に当惑してしまう俺。
しかもそんな折、魔王はシステム手帳らしき品を手元に広げ、金属質な篭手を嵌めたまま器用にペンを握っていた。
「ふほほ、いけませんぞ魔王様。ツキシドはあなた様の座を奪わんとする輩。本来馴れ馴れしく接してよい相手ではありませぬ……」
「クク……。有力候補と積極的に関わりたがるとは面白い。その余裕あってこその魔王様だ……」
「さすがは全魔族の長である。避けられぬ運命をまるで気に留めんとは……」
側近達が朗らかに発言する中、なぜか魔王がペンを走らせ始めた。
……その忙しなくしたためる姿は、教壇前で真面目に授業を受けている優等生と完全に一致。集中力がハンパなかった。
(な、なにしてんだこの魔王……? メモ? メモを取ってるのか……?)
俺は若干引いた。
メモを取るのはとても大事な行為だが、なぜこのタイミングでメモ?
そして魔王がメモ?
側近達は誰もメモなんてしていないので余計に違和感があった。
「……よし。ツキシド、わたしの立場や側近の言葉は気にせずに。世間話、聞かせてくれ」
魔王がペンを走らせるのを一時中断し、俺に顔を上げてくるが、
(って言われてもだな……。まず俺はこの世界に来たばっかで、ツキシドがどんなヤツかすら知らないんだぞ……)
だいたい、世間話を聞かせるってなんだ?
『あの子とこんな話したんですよ~』なんて話題が欲しいのだろうか。
魔王のくせに、そんな酒の肴にもならないものを欲しがるのか。
……まぁいい。だったら読者や著者にも聞かせてやろう。
ただし前の世界での世間話だ!
「実は武闘大会前日に、俺の婚約者であるトピアとラノベの話をしたんだよ。彼女はラノベに詳しくないんだが、ラノベに興味は持ってくれててな? そんでつい俺が情熱的に語ったら、『もう結婚式の引出物はあなたの好きなラノベでいきましょう』って。彼女が呆れたように微笑んでくれたんだ。……ははっ、自慢になっちまうが優しい嫁だろ?」
「「「創作乙」」」
側近達が半眼でバッサリだった!
いやまぁ実際、創作なんですけどねッ!?
「ほほぅ、それはなかなか羨ましいお嫁さんじゃないか。……で、その与太話の続きは?」
「ね、ねーよ! あっても与太話とか言い切ってるヤツには話したくねえわっ!」
「いいから続き、話してみろ。与太話扱いされて悔しくないのか?」
な、なんなんだこの魔王は!? 別の意味で側近達よりも格が違うんだが!
俺と性格が合わない気がする! 下手したらリア充達よりも苦手かもしれない!
(め、メンドくせぇ……。さっさとこの場から立ち去りてぇ……。いっそこの世界から消え去りてぇ……)
魔王がこんなヤツと知れて早速鬱になってきた俺は、椅子の背もたれにずっしりと寄りかかった。
その直後、
「―――失礼いたします」
音もなく俺の傍らに立ち現れたのは女の魔族だった。
いきなりの登場に俺はビクッとして、それからすぐに怖気づいてしまう。
(なっ!? む、むむむ、胸デカぁ――!?)
未だかつて1度も目にしたことのない、大玉スイカ2つ分くらいのおっぱいをぶら下げていた彼女は、まさかのサキュバスだった!
肉付きのいい長身に、コウモリの翼、ヒツジに似た角。格好は丈の短いネグリジェのような薄着と、レースアップのロングブーツ。
髪はピンク色の1本結びで、シルクハット型のカチューシャをしていた。
(や、細かいとこはいいんだよ! とにかくなんなんだこのデカパイは!? 俺、大きすぎる胸はあんま好みじゃないのに……だから最初ビビったのに……少しずつトキメキ始めてる気が……!?)
つまりこれがデカパイの真の力なのか!?
実物を直接見てない男共を、一目で黙らせる悪魔がかった魅力!?
サキュバスだけに!?
「どうしたリーゼロッテ? ツキシドに用か?」
「はい魔王様。その通りでございます」
魔王に対しサキュバスは丁寧に一礼すると、
「……平和ボケに余念がない老害どもと3分だけ会ってくる、と仰っていたにもかかわらず、一向に戻ってくる気配がありませんでしたので」
「ほほう……?」
眉を顰める魔王と側近達。一方で俺もサキュバスから視線を逸らし、目を瞑った。
ったく、魔王に対して老害とは命知らずなヤツじゃないか。
一体どこの馬の骨なんだよ(白目)。
「……ふほほ、無礼千万、極刑モノじゃな。有力候補だろうとも決して魔王様への不敬は許されぬ……」
当たり前だ! 相手は魔王なんだぞ魔王!
処刑してトーゼンだッ(常考)!!
「クク……。ツキシドの失態については不問でしたな。ではこの不敬については……?」
「即刻、制裁を加えるべき事案である。……魔王様、ご決断を!」
「「ご決断をッ!!」」
肩を怒らせて側近達が立ち上がった。
次の瞬間、俺は魔王に背を向けて走り出していた!
「こ、殺されてたまるかああああああああああああああああああああ!!」
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