2.5D/リアル世界の異世界リアル
第27話
27
「……いいんですか?」
トピアが意外そうな顔をする。そりゃそうだろう。死か退学か。どちらも可能性の話にすぎないが、それでも常識的には退学を選ぶ。
だがしつこく言おう、これはラノベだ! 俺はラノベ主人公だ!
ラノベ主人公は肝心なところで常識を覆すから魅力があるのだ!  
そしてそれは大抵、成功を収めているもの! なぜか!
わざわざ非常識を採用して失敗したら、もうアホすぎてキャラ崩壊しかねないからだ!
「ああ。俺はラノベ主人公だからな」
「どういう屁理屈ですか」
「屁り……お前、ラノベ主人公の主人公補正なめるなよ?」
「はあ。思うんですけどそのラノベって本のジャンル、主人公は皆同じ特徴を持っていたりするんですか?」
「なわけないだろ。色々だ」
詳しい説明が必要そうだったので、俺はラノベ主人公について語ることにした。
「あるヤツは家庭的で料理が上手かったり。あるヤツは最強から最弱に成り下がっていたり。あるヤツは恋に鈍感なものだから気づけばハーレム作っていたり。あるヤツは基本無気力なくせに美少女の前じゃカッコつけて、恋愛フラグ立てていたりするんだよ」
「はあ。とりあえず、料理ができる男性は好みですが」
よし。今からグルメなラノベにしていこう。
料理の知識は皆無でも好きな子のためなら頑張れそうだ。
「ただその……様々な個性の主人公が存在するにもかかわらず、なぜ君はそれほど自信が持てるのですか? 君が『困難を突破できる主人公』とは限らないですよね? いえ、突破できるようには思えません」
「さらっと酷いこと言うなよ……」
俺は辛うじて苦笑した。
「……まぁ、ラノベをよく知らないヤツからすればそうかもしれない。ラノベの数だけラノベ主人公がいるわけだしな。……でもな、あまり言いたくはないが、だいぶ前からラノベ主人公ってのはテンプレ化してしまっているんだよ」
「そ、そうなんですか?」
「ぶっちゃけ俺がさっき言った特徴のヤツらで3割近くいってるんじゃないかな」
「……それ、面白いんですか?」
「面白いぞ。マンネリ感は否めないがな」
そのあたりは各著者の力量と出版社のサポートで解消されていくものだろう。
しかしながら、著者本人を絶対神として登場させるラノベはさすがにイカれていると思う。
「とにかくだ。逆の発想なんだよ。それっぽく振る舞えばちゃんとそれらしいラノベ主人公になっていくはずだ。俺の場合だとそうだな、土壇場で覚醒して敵を倒しまくるラノベ主人公?」
「……敵というのは、異能警察を指してますか?」
「そりゃ含むだろうな」
「ダメです。約束したじゃないですか。異能警察には絶対逆らわないでくださいと」
「じゃあ黙って殺されろってか?」
俺は口を尖らせた。
「勝てないとわかってても抵抗くらいはするだろ普通。異能警察が直接俺に敵対行動を取るんだったら、我慢なんてできない」
「ですが、」
「けど本当に初戦負けるだけで俺の敵がいなくなるんだったら、そうする。それは約束する」
「……となると、やはり大和先生ですか」
トピアが腕を組んで考え込む。
「すでに監視部では、わたしの方針に合わせることで体制が整えられつつあります。……君が初戦に負けたなら今まで通りの警戒レベルで監視を継続。勝ってしまったら警戒レベルを引き上げ、直ちに君の身柄を拘束、強制的に君を棄権させる予定です。騒ぎにならないよう、改めて学園には許可を取ります」
「学園は以前から警察に協力しているんだな?」
「はい当然です。君は一国を滅ぼしかねないほどの異能力者、らしいですから」
「らしいから、か」
まるでトピア個人の見解はクリアにしたような言いぶりだった。
昨日は俺が危険人物で間違いないとか言っていた。
「いずれにしても、君には一刻も早く異能力者に目醒めてもらわなくては困ります。4日後、わたしが先生から君を守ることはできても、たった1人の増援を同時に相手することはできませんから」
「増援?……先生が呼ぶってのか?」
「ありえないとは言い切れないでしょう。わたし以外の異能警察の人間は君が最強との見方をしています。大和先生もその限りではありません」
そこで俺は思いつく。
「いっそ先生を味方にしてしまうのはどうだ? お前みたいに信じてくれるかもしれない」
「ダメです」
しかしトピアは即答してきた。
「昼休み、先生と職員室でお話ししてましたよね? もし君がその時、その手を思いついて先生に打ち明けようとしたら……。わたしは無理矢理にでも君を止めてました。実はクラスの子との雑談を打ち切って、職員室から少し離れた所で様子見してたんですよ」
「どうしてダメなんだ?」
「異能力者最強と思しき人間が、プラスして『自分は異世界から来た』と自白し始めるんですよ? むしろ警戒を強めると思いませんか?」
俺はハッとした。
「そうか! 俺の最強説は異世界から来たのが理由になってしまうのか!」
「ええ。かえって事態が悪化してしまうでしょう」
俺は一国を滅ぼしかねないほどの異能力者。
その理由として異世界から来たというのは全く違和感がない。ほぼ同列の衝撃的事実として扱われるだろう。
「真偽を確かめるため、君は24時間監視された環境で手足が縛られたまま何か月も取り調べを受けることなりますね。ちなみにわたしは……たぶんクビでしょう」
俺は続けてハッとした。
しまった、トピアの立場を考えていなかった。
それに被害が及ぶのは彼女だけじゃない。……神様のアイツもだ!
「そう遠くない内にあの子……アリスも調査の対象になることでしょう。いったい彼女は何者なのか。それをこの世界に問い詰めたところで、手掛かりなど掴めるはずがありません。つまりあの子も君と同じように―――」
「もういい安心しろ。俺の事情はお前以外には言わない」
俺はこの話題を切り上げることにした。トピアが言うように悪い方向にしか事が運ばない気がしてならなかったからだ(確信)。
「わかっていただけたようで感謝します、憑々谷く―――」
「……?」
なぜかトピアの口が固まった。
なにかに気づいた様子だったので、俺は熾兎や奇姫が登場するのでは、と警戒した
が、
「今更になりますけど、君の本当の名前は?」
「…………あ」
そういえばそうだった。
憑々谷子童ってのは著者が勝手につけた俺の偽名だ。本名ではない。
(んー、だけど言わないほうがいいよな。このラノベを見ている読者がちゃんといたとして、俺の本当の名前を公表したら―――俺の世間体が死ぬ)
これまでの経緯から俺に同情するヤツはいないだろう。いかに著者の仕業で俺の言動を下劣にさせられようとも、読者が『ラノベ主人公は本来こういうものだ』と認識してるし、そもそも俺自身の意志でやってしまっている事案が多々ある。
というかほとんど俺の意志だ。もちろんわかっていましたとも。
だから絶対に本名は晒さない……(決意)!
「……まぁ、そのなんだ。やめておこう。この世界で本名を明かすのは自殺行為だ。ネットでするよりリスクがある」
「ですが……そうです、君の世界に『自分はここにいる』と伝えられる唯一の手段では?」
「それでもパスだ」
「なぜです? 君のご家族だって君のことを心配してるはずですよね?」
そりゃ当然だろう。俺の家族―――両親は過保護だ。連絡を入れずに丸1日姿を消した時点で、間違いなく警察に俺の捜索を依頼するだろう。
だがしかし、
「……両親は俺に『若い内は好きなことをやり尽くせ』と言っていた。その一方で『自己責任を徹底しろ。世界はとても非情で誰も助けてくれないと思え』とも言っていた」
「良いご両親ですね」
「ああ。だからいいんだ。まさに俺は今、その通りに生きてるだろ?」
「いえ。ただの強がりにしか見えませんが」
「……、強がりじゃない」
あっさり否定されてしまう俺。すいませんそこは空気読んでくれないですかねトピアさん。酷さの度合いは死体蹴ってるのと同じだぞ……(泣)。
「まぁそういうことにしておきましょう。だいぶ時間が経ってしまいました」
トピアが今日の特訓について話し始める。
「これから君には、ひとつでも多く異能力を覚えられるよう努力してもらいます。そのためにはまず異能力の習得法を知っていただかないとなりません」
習得法か。
なんか大変そうだな……。
「渋い顔ですね。ですが面倒ではありません。ただ想像するだけなんですから」
「え? 想像するだけ?」
「はい。自分が手に入れてみたい異能力を、頭の中から現実に向けて、強く想像するんです」
「……、それで異能力がゲットできると?」
ありえない。簡単すぎるだろう。
逆にガッカリしてしまうくらい余裕そうだ。
「ただし、です。強く想像できたからといって、必ずしもそれが現実に発現するとは限りません。発現するか否かは、運。またはその人の遺伝的素質によるものなんです。そして想像するものの規模や粗細によっても、発現成功の期待値は変わってきます」
「あーつまりなんだ、手さぐりでやってくしかないんだな?」
トピアが頷いた。
ならばと、俺は早速ひとつ目の想像をしてみる。
それはトピアが習得している異能力、加速装甲だ。
実物を見ているのだから想像なんてすぐできるはずだ―――。
「今はなにを想像しているのですか?」
「ん。お前の加速装甲だ」
「無理です。中止してください」
「は? どういうことだよ?」
10秒とかからずに俺は止められてしまった。……ううむ?
「確かにその方法は有効と思われるかもしれません。ですが実際は困難なんですよ。想像する際、わたしの存在を完全に切り離さないとならないので」
「んん? 『加速装甲を身に纏ってる俺』を想像できればいいんだよな?」
「その解釈は合ってますが滅多に成功しません。君の頭がわたしと加速装甲を切り離して想像することができないからです。これは努力でどうにかなるものではありません」
断言するトピア。
彼女がはっきりと言うのだから俺は従うしかない。
「じゃあどうすればいいんだ?」
「オリジナルです。君オリジナルの異能力を想像してください」
「オリジナル……って、いきなり言われてもな」
「難しく考えないでください。ふと思いついたもので結構です。あとはその異能力に名前を付けるといいですよ。だいぶ想像しやすくなります」
そう言ってトピアが口を閉ざす。とりあえずやってみろということらしかった。
だが無茶だ。そんな無から有を産み出すような作業、難しく考えたって中々できるものじゃない。ましてそれに名前を付けろなどと……。
(あーくそ、全然思い浮かばん。右腕に装着してるこのアリスバンドが本物の機能を誇るスキルゲッターならどんなに良かったことか……!)
俺は奥歯を噛んだ。なんかもうわからん。ええい、トピアのアルパカパンツがまた見たいから、パンチラの風を想像しみよう。ターゲットの足元から強風が吹き上がってスカートが捲れちゃうナイスな異能力だ! どうせ失敗するけど!
「?…………あの」
「失敗か! くそぅ、次だ次の異能力!」
「いえ、憑々谷君。無視しないでください。これは一体、なんの真似ですか……?」
顔を顰めながらスカートの裾を抑えているトピア。
しかし俺はキョドってトピアの問いに答えられなかった。
だ、だって失敗すると思っていましたし……。
そう、実のところは俺の想像通りに。
トピアのスカートは風でめっちゃ捲れ上がっていますた。
「……いいんですか?」
トピアが意外そうな顔をする。そりゃそうだろう。死か退学か。どちらも可能性の話にすぎないが、それでも常識的には退学を選ぶ。
だがしつこく言おう、これはラノベだ! 俺はラノベ主人公だ!
ラノベ主人公は肝心なところで常識を覆すから魅力があるのだ!  
そしてそれは大抵、成功を収めているもの! なぜか!
わざわざ非常識を採用して失敗したら、もうアホすぎてキャラ崩壊しかねないからだ!
「ああ。俺はラノベ主人公だからな」
「どういう屁理屈ですか」
「屁り……お前、ラノベ主人公の主人公補正なめるなよ?」
「はあ。思うんですけどそのラノベって本のジャンル、主人公は皆同じ特徴を持っていたりするんですか?」
「なわけないだろ。色々だ」
詳しい説明が必要そうだったので、俺はラノベ主人公について語ることにした。
「あるヤツは家庭的で料理が上手かったり。あるヤツは最強から最弱に成り下がっていたり。あるヤツは恋に鈍感なものだから気づけばハーレム作っていたり。あるヤツは基本無気力なくせに美少女の前じゃカッコつけて、恋愛フラグ立てていたりするんだよ」
「はあ。とりあえず、料理ができる男性は好みですが」
よし。今からグルメなラノベにしていこう。
料理の知識は皆無でも好きな子のためなら頑張れそうだ。
「ただその……様々な個性の主人公が存在するにもかかわらず、なぜ君はそれほど自信が持てるのですか? 君が『困難を突破できる主人公』とは限らないですよね? いえ、突破できるようには思えません」
「さらっと酷いこと言うなよ……」
俺は辛うじて苦笑した。
「……まぁ、ラノベをよく知らないヤツからすればそうかもしれない。ラノベの数だけラノベ主人公がいるわけだしな。……でもな、あまり言いたくはないが、だいぶ前からラノベ主人公ってのはテンプレ化してしまっているんだよ」
「そ、そうなんですか?」
「ぶっちゃけ俺がさっき言った特徴のヤツらで3割近くいってるんじゃないかな」
「……それ、面白いんですか?」
「面白いぞ。マンネリ感は否めないがな」
そのあたりは各著者の力量と出版社のサポートで解消されていくものだろう。
しかしながら、著者本人を絶対神として登場させるラノベはさすがにイカれていると思う。
「とにかくだ。逆の発想なんだよ。それっぽく振る舞えばちゃんとそれらしいラノベ主人公になっていくはずだ。俺の場合だとそうだな、土壇場で覚醒して敵を倒しまくるラノベ主人公?」
「……敵というのは、異能警察を指してますか?」
「そりゃ含むだろうな」
「ダメです。約束したじゃないですか。異能警察には絶対逆らわないでくださいと」
「じゃあ黙って殺されろってか?」
俺は口を尖らせた。
「勝てないとわかってても抵抗くらいはするだろ普通。異能警察が直接俺に敵対行動を取るんだったら、我慢なんてできない」
「ですが、」
「けど本当に初戦負けるだけで俺の敵がいなくなるんだったら、そうする。それは約束する」
「……となると、やはり大和先生ですか」
トピアが腕を組んで考え込む。
「すでに監視部では、わたしの方針に合わせることで体制が整えられつつあります。……君が初戦に負けたなら今まで通りの警戒レベルで監視を継続。勝ってしまったら警戒レベルを引き上げ、直ちに君の身柄を拘束、強制的に君を棄権させる予定です。騒ぎにならないよう、改めて学園には許可を取ります」
「学園は以前から警察に協力しているんだな?」
「はい当然です。君は一国を滅ぼしかねないほどの異能力者、らしいですから」
「らしいから、か」
まるでトピア個人の見解はクリアにしたような言いぶりだった。
昨日は俺が危険人物で間違いないとか言っていた。
「いずれにしても、君には一刻も早く異能力者に目醒めてもらわなくては困ります。4日後、わたしが先生から君を守ることはできても、たった1人の増援を同時に相手することはできませんから」
「増援?……先生が呼ぶってのか?」
「ありえないとは言い切れないでしょう。わたし以外の異能警察の人間は君が最強との見方をしています。大和先生もその限りではありません」
そこで俺は思いつく。
「いっそ先生を味方にしてしまうのはどうだ? お前みたいに信じてくれるかもしれない」
「ダメです」
しかしトピアは即答してきた。
「昼休み、先生と職員室でお話ししてましたよね? もし君がその時、その手を思いついて先生に打ち明けようとしたら……。わたしは無理矢理にでも君を止めてました。実はクラスの子との雑談を打ち切って、職員室から少し離れた所で様子見してたんですよ」
「どうしてダメなんだ?」
「異能力者最強と思しき人間が、プラスして『自分は異世界から来た』と自白し始めるんですよ? むしろ警戒を強めると思いませんか?」
俺はハッとした。
「そうか! 俺の最強説は異世界から来たのが理由になってしまうのか!」
「ええ。かえって事態が悪化してしまうでしょう」
俺は一国を滅ぼしかねないほどの異能力者。
その理由として異世界から来たというのは全く違和感がない。ほぼ同列の衝撃的事実として扱われるだろう。
「真偽を確かめるため、君は24時間監視された環境で手足が縛られたまま何か月も取り調べを受けることなりますね。ちなみにわたしは……たぶんクビでしょう」
俺は続けてハッとした。
しまった、トピアの立場を考えていなかった。
それに被害が及ぶのは彼女だけじゃない。……神様のアイツもだ!
「そう遠くない内にあの子……アリスも調査の対象になることでしょう。いったい彼女は何者なのか。それをこの世界に問い詰めたところで、手掛かりなど掴めるはずがありません。つまりあの子も君と同じように―――」
「もういい安心しろ。俺の事情はお前以外には言わない」
俺はこの話題を切り上げることにした。トピアが言うように悪い方向にしか事が運ばない気がしてならなかったからだ(確信)。
「わかっていただけたようで感謝します、憑々谷く―――」
「……?」
なぜかトピアの口が固まった。
なにかに気づいた様子だったので、俺は熾兎や奇姫が登場するのでは、と警戒した
が、
「今更になりますけど、君の本当の名前は?」
「…………あ」
そういえばそうだった。
憑々谷子童ってのは著者が勝手につけた俺の偽名だ。本名ではない。
(んー、だけど言わないほうがいいよな。このラノベを見ている読者がちゃんといたとして、俺の本当の名前を公表したら―――俺の世間体が死ぬ)
これまでの経緯から俺に同情するヤツはいないだろう。いかに著者の仕業で俺の言動を下劣にさせられようとも、読者が『ラノベ主人公は本来こういうものだ』と認識してるし、そもそも俺自身の意志でやってしまっている事案が多々ある。
というかほとんど俺の意志だ。もちろんわかっていましたとも。
だから絶対に本名は晒さない……(決意)!
「……まぁ、そのなんだ。やめておこう。この世界で本名を明かすのは自殺行為だ。ネットでするよりリスクがある」
「ですが……そうです、君の世界に『自分はここにいる』と伝えられる唯一の手段では?」
「それでもパスだ」
「なぜです? 君のご家族だって君のことを心配してるはずですよね?」
そりゃ当然だろう。俺の家族―――両親は過保護だ。連絡を入れずに丸1日姿を消した時点で、間違いなく警察に俺の捜索を依頼するだろう。
だがしかし、
「……両親は俺に『若い内は好きなことをやり尽くせ』と言っていた。その一方で『自己責任を徹底しろ。世界はとても非情で誰も助けてくれないと思え』とも言っていた」
「良いご両親ですね」
「ああ。だからいいんだ。まさに俺は今、その通りに生きてるだろ?」
「いえ。ただの強がりにしか見えませんが」
「……、強がりじゃない」
あっさり否定されてしまう俺。すいませんそこは空気読んでくれないですかねトピアさん。酷さの度合いは死体蹴ってるのと同じだぞ……(泣)。
「まぁそういうことにしておきましょう。だいぶ時間が経ってしまいました」
トピアが今日の特訓について話し始める。
「これから君には、ひとつでも多く異能力を覚えられるよう努力してもらいます。そのためにはまず異能力の習得法を知っていただかないとなりません」
習得法か。
なんか大変そうだな……。
「渋い顔ですね。ですが面倒ではありません。ただ想像するだけなんですから」
「え? 想像するだけ?」
「はい。自分が手に入れてみたい異能力を、頭の中から現実に向けて、強く想像するんです」
「……、それで異能力がゲットできると?」
ありえない。簡単すぎるだろう。
逆にガッカリしてしまうくらい余裕そうだ。
「ただし、です。強く想像できたからといって、必ずしもそれが現実に発現するとは限りません。発現するか否かは、運。またはその人の遺伝的素質によるものなんです。そして想像するものの規模や粗細によっても、発現成功の期待値は変わってきます」
「あーつまりなんだ、手さぐりでやってくしかないんだな?」
トピアが頷いた。
ならばと、俺は早速ひとつ目の想像をしてみる。
それはトピアが習得している異能力、加速装甲だ。
実物を見ているのだから想像なんてすぐできるはずだ―――。
「今はなにを想像しているのですか?」
「ん。お前の加速装甲だ」
「無理です。中止してください」
「は? どういうことだよ?」
10秒とかからずに俺は止められてしまった。……ううむ?
「確かにその方法は有効と思われるかもしれません。ですが実際は困難なんですよ。想像する際、わたしの存在を完全に切り離さないとならないので」
「んん? 『加速装甲を身に纏ってる俺』を想像できればいいんだよな?」
「その解釈は合ってますが滅多に成功しません。君の頭がわたしと加速装甲を切り離して想像することができないからです。これは努力でどうにかなるものではありません」
断言するトピア。
彼女がはっきりと言うのだから俺は従うしかない。
「じゃあどうすればいいんだ?」
「オリジナルです。君オリジナルの異能力を想像してください」
「オリジナル……って、いきなり言われてもな」
「難しく考えないでください。ふと思いついたもので結構です。あとはその異能力に名前を付けるといいですよ。だいぶ想像しやすくなります」
そう言ってトピアが口を閉ざす。とりあえずやってみろということらしかった。
だが無茶だ。そんな無から有を産み出すような作業、難しく考えたって中々できるものじゃない。ましてそれに名前を付けろなどと……。
(あーくそ、全然思い浮かばん。右腕に装着してるこのアリスバンドが本物の機能を誇るスキルゲッターならどんなに良かったことか……!)
俺は奥歯を噛んだ。なんかもうわからん。ええい、トピアのアルパカパンツがまた見たいから、パンチラの風を想像しみよう。ターゲットの足元から強風が吹き上がってスカートが捲れちゃうナイスな異能力だ! どうせ失敗するけど!
「?…………あの」
「失敗か! くそぅ、次だ次の異能力!」
「いえ、憑々谷君。無視しないでください。これは一体、なんの真似ですか……?」
顔を顰めながらスカートの裾を抑えているトピア。
しかし俺はキョドってトピアの問いに答えられなかった。
だ、だって失敗すると思っていましたし……。
そう、実のところは俺の想像通りに。
トピアのスカートは風でめっちゃ捲れ上がっていますた。
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