2.5D/リアル世界の異世界リアル

ハイゲツナオ

プロローグ/始まりの場所/第0話




 まずは簡潔に自己紹介をしたい。
 俺。高2男子。体格普通。フツメン(だと思う)。
 運動神経皆無。コミュ力皆無。恋愛経験皆無……。


 つまりは非リア充だった。


 青春時代のど真ん中にいる俺。だが非リア充の俺。モテる要素は客観的に見ても皆無。だからリア充になる努力なんて今までしたことがなかった。
 するだけどうせムダ、そんな時間があるなら2次元で自己満してたほうが100倍マシ―――たぶん中2の頃だ、俺がそう思うようになったのは。


 漫画とかアニメとかラノベとか。要は俺の手が直接届く快楽を愛したのだ。2次元は3次元の代わりにはならないが、とても面白くできてるからいい。特に俺のお気に入りはラノベだった。
 ラノベは漫画やアニメより圧倒的に絵が少ない。なので文章から情景をイメージしなければならない。逆に言えば俺の都合の良いように妄想できる余地があるわけで。
 極端な話、『この癒し系ヒロインめっちゃタイプ! でも見た目がなぁ』という漫画では、ヒロインの絵を見る度に惜しまなければならないが、ラノベではその苦が最小限で済む。そりゃ妄想でノーチェンな具合に修正するのが楽勝なんだからな。


 ……あ、でも『絵のない小説選べばいいじゃん』なんていうツッコミは却下だ。見た目がアレでも絵はないよりあったほうが断然いい。なぜならラノベの絵はサービスシーンが多いからだ。そりゃたくさん売らなければならないしな。ほとんどのヤツがサービスシーンの有無も購入動機にしていることだろう。


 ―――っと、閑話休題。すまんなんの話してたっけ……?……あぁ、俺は『記憶力の高さだけが取り柄』って話だったか。いやさすがにそんなわけないな。でも一応ここ、地味に重要な設定で伏線だったりするからな。わざと強引な感じにさせたけど断言しておく。この物語の最後の最後まで忘れないでおいてくれ。


 こほん。とまぁなんだ。バカのひとつ覚えみたいに伏線だとかフラグだとか。そーいう『なんかちょっとかっこいい単語』も使うようになって足かけ4年。




 気づけば俺の男友達全員、高校に入って彼女持ちになっていた件……ッ!




 そう、非リア充の俺を出し抜いてリア充に昇格していたんだ。しかもアイツら、幼馴染とか部活の先輩とか転校生とか、要はラノベのヒロインでも人気なポジションの子をゲットしていやがったんだ!
 そんなわけでさすがの俺もアイツらに触発され、このまま非リア充でいたくないと思うようになった。俺にもラノベ的展開から女友達1人くらいできてもいいだろうに。


 あぁ認めよう。
 俺も本音はリア充になりたかったんだ。


 わかっていたさ。ラノベを飽きずに読んでいるのは『リア充に憧れているから』なのだと。ラノベ自体はとても面白いがラノベを読んで余計にリアルが辛くなってしまい、だからまた快楽を求めてラノベを読む。―――そんな悪循環になっていることも俺は自覚できていたんだ。


 たぶん高3になってもラノベに没頭してるだけなんだろう。無味乾燥とした青春を過ごしてる学生の代表格だと思うぞ、俺。


 ただまぁ……うん。俺が非リア充になったのは俺の自業自得だ。高校ではクラス以外の生徒からも『いつも本を読んでるヒト』『本と対話してるヒト』『呼吸をするように読書するヒト』『本の虫の虫』などと評判にされてたみたいだし。


 どんだけ人付き合いしてなかったんだよって呆れられても仕方ないレベルだ。というか最後のってただの虫な気がするんだが……。


 いやでも実際……ただの虫なんでしょうね、俺なんて。


 ただの虫。だったら高3になる今から頑張ってもムダ。そんな時間があるならやっぱり2次元で自己満してたほうが百倍マシ。
 ―――ほら、もうどうにもならないんだよ。


 高校卒業まで非リア充が確定。そして卒業後もそのままだ。どうせ社会人かニートだしな。職場恋愛が難しいのはわかりきったことだし、ニートはデート代がないから論外だ。


 大学に行けばまだリア充になれる可能性はあったかもしれない。けど俺の学力は下の下なんだ。それであくまでも可能性なのに勉強を死ぬ気でやるというリスクは大きすぎる……。


 いいかげん俺の残念な自己紹介に眠くなってきただろうから、話を結ぶとしよう。俺はラノベが大好きな非リア充だ。彼女持ちになった友達には嫉妬してしまい、だけど高3からリア充を目指すのはもう手遅れで。


 だから俺は、神様に直接願いを言ったんだ。祈ったんじゃなくて、それもこう言い間違えてしまったんだ。




 ラノベ主人公になりたいって―――。















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