影、走る!
プロローグ 走る影
そこは影の世界。人間の住む世界とは切り離された影の国である。
その国を横断するように、二つの影が駆け抜けていた。
〈スバル、カクゴ…!〉
低い声が後ろの方から追いかけてくる。
「あーっ! もう、しつこいなぁ!」
後ろからの追っ手に少年はため息をついた。
少年はただの人間ではなかった。少年は、影の化身だった。
背中から翼のような影を操り、鯨のような速さで宙を移動していた。
腹には傷を負っていて、走りにくいのに、相手は走るペースダウンを許してはくれない。そうしているうちにも、少年の背中を狙って生き物が刀のような腕で斬りかかってきた。
少年が手の平から追っ手のいる方角へ衝撃破をうつと、木の葉の上を落ちて行く音がして、それきり木立の中は静かになった。
「っ痛ぇ……馬鹿野郎が……」
影人の少年は腹の痛みに悪態をつきながら、林の中を進んで行った。そこは、前にもたどったことのある道で、向こう方角には建物の屋根が見えた。
そこは、戴冠式のときに使う聖堂だった。入って奥へ進んで行くと、祭壇があり、その天井に大きな穴があいている。そこは人間界への入り口だった。
その時、林の揺れる音がした。追っ手がまた来ている。
早く行かなくては。
少年は一つ舌打ちをすると、一筋の白い光の見える穴へとび込んで行った。
その国を横断するように、二つの影が駆け抜けていた。
〈スバル、カクゴ…!〉
低い声が後ろの方から追いかけてくる。
「あーっ! もう、しつこいなぁ!」
後ろからの追っ手に少年はため息をついた。
少年はただの人間ではなかった。少年は、影の化身だった。
背中から翼のような影を操り、鯨のような速さで宙を移動していた。
腹には傷を負っていて、走りにくいのに、相手は走るペースダウンを許してはくれない。そうしているうちにも、少年の背中を狙って生き物が刀のような腕で斬りかかってきた。
少年が手の平から追っ手のいる方角へ衝撃破をうつと、木の葉の上を落ちて行く音がして、それきり木立の中は静かになった。
「っ痛ぇ……馬鹿野郎が……」
影人の少年は腹の痛みに悪態をつきながら、林の中を進んで行った。そこは、前にもたどったことのある道で、向こう方角には建物の屋根が見えた。
そこは、戴冠式のときに使う聖堂だった。入って奥へ進んで行くと、祭壇があり、その天井に大きな穴があいている。そこは人間界への入り口だった。
その時、林の揺れる音がした。追っ手がまた来ている。
早く行かなくては。
少年は一つ舌打ちをすると、一筋の白い光の見える穴へとび込んで行った。
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