迷宮に転生した者達の成り上がり物語

ノベルバユーザー313607

05 奴隷の活用

俺は一旦深呼吸をした。
目を瞑って、ゆっくりと。
開けると、奴の体がさっきよりも大きくなっていた。


《何やってるんですか?
早くしないと私も死ぬんですよ!》


「う、うるせぇ。
人間には人間なりの落ち着き方があるんだよ!」


取り敢えず、持っているものでもう一度
何が有効か考える。
AIは、この世界の知識があるだけで、
この状況の打開策は考えることが出来ない。


「なぁ、紙切れを丸めて投げるだけでも
覚醒は止められるのか?」


《ただ集中を邪魔するだけじゃ駄目です。
一瞬で倒せる致死性のあるものでないと。》


じゃあ、バッグの中身は全て無理だな。


あとは..今、手に持っているものを見た。
そこには、俺と同じくらいの身長で
尚且つ逆転勝利も狙える、最後の希望があった。
......人質である。


「おい、これを投げればいけるか?」


人質を装備した!!


《ちょ、何考えてんですか!
バチがあたりますよ?》


「今はそんなのどうでもいい。
できるか、できないかだけ答えろ。」


俺は、今までに無いくらいの真剣な顔で
彼女に問う。


《まだ、身体強化も残ってますし、
思い切り投げて、命中すれば....。》


よし、すまんな。これも生き残るためだ。
せめて誠意を持って、投げさせてもらう。


《しょうがないですね。
肩を両手で掴んで、奴の頭目掛けて投げてください。
この方の命は保証出来ませんが、
我々の生存確率が大幅に上がります》


「ふごぉ、ふぐ。ごぉ。」


突然、自分の危機を感じたのか
暴れだした。
これじゃあうまく持てなかったので
首辺りをチョップで叩いて気絶させた。


《もう、人間と名乗れませんよ?》


「知るかぁぁぁ!!」


俺は腕に意識を集中させ、
標準を奴の頭に合わせる。
そして....人間を辞めたのだった。


まるでミサイルのように一直線に
敵に命中する。その勢いは止まらず
後ろの壁に貫通した。


「やったか?」


《えぇ、止まりました。
私たちの勝利です》


もう、全身が痛む。
立ち上がることもままならず、
自衛隊のように、伏せて移動するしか
出来なかった。


「お前すげぇよ。
ありがとな、助かったぜ!」


あれ? 返事が無い。
ただの屍のようだ。


《そりゃそうでしょう。
あんなことして、無事でいるほうがおかしい。》


「人質ィィィ!」


俺は叫んだが、もう彼の目は開かなかった。


《ほら、そんな茶番してないで、
早く薬草で回復を。》


「へ?」


そんなんあったっけ?
彼女は呆れた声で続ける。


《まさか、このまま殺すつもりだったんですか?
レアな草を見つけたでしょう。》


「そ、そうだよな。」


言えない。
もう、放っておこうと思ってたなんて。


《あなたの能力で、アイテムなら
何回でも使用できます。》


「能力? 聞いてないぞ?」


《この世界に来る者の中で、
稀に、何もしないで特殊な力に目覚める事があります。
それが、貴方です。》


「じゃあ、呪文も教えてくれ。」


《自然の恵み。大地の宝よ。
かの者の、傷のお癒し下さい》









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