迷宮に転生した者達の成り上がり物語

ノベルバユーザー313607

01 あれから3日がたった。



水が少しずつ垂れている音がする。
この洞窟には明かりが無く、最初は何も見えなかった。
そして俺の体は、冷蔵庫にいる時のように冷えて震えている。


ここはどこだろう。もう3日ぐらいここに居るのだ。
だが、まだ焦る時じゃない。ここには幸い水がある。
例え食べ物はなくとも、一週間は持つ。




タイムリミットはあと96時間だ。
それを越えたら人でいることが出来なくなる。
死ぬよりももっと恐ろしい。
まるで獣のように狂暴になり、
自分の体まで食ってしまうようになる。
バッグの中に入れておいたサバイバルブックの知識が役にたった。


よし、さっき寝たから体力も回復した。
朝と夜がわからないこの空間で、俺は疲れたら寝るようにしている。


まずは、情報整理だ。


[一日目]
少し曖昧だが、ここに来る前の事だ。
俺は、大学の登山部の活動で近所の山を仲間と登っていた。
しかし、命綱が何故か切れてしまい、そのまま皆で落ちてしまったのだ。
そして、気づくと、何故か痛みもなく、この場所に倒れていた。
持っていた手回し発電機を使って少し探索し、水が流れる場所を把握してから寝る。


[二日目]
時計が壊れたため、何時間寝たかは知らないが、起きた時点で翌日ということにさせてもらう。
あれ? でもその他にも時間を知れる道具があったような。
次の日、落ちる前に使っていた空のペットボトルを取り出し、
水を入れた。4個持ってきていたので、全部で3リットルとなった。
この数値は、ちょうど一日に必要な水分量だ。
これにより、探索をしやすくなった俺はとにかく歩く。
だが、普通に歩けば良いのではない。
ここで、バッグの中の道具が役立つ。


①迷わないように形跡を作る。


それに使うアイテムは..小説本だ。
小説家には申し訳ないが、紙を一枚一枚取って2㍍間隔で落として行く。
こうすれば、一緒に落ちた仲間が俺の存在に気づくかも知れない
というおまけ付き。




②分かれ道の先で行き止まりになった場合、色つきの紙でさらに分かりやすく。


これはゲームの知識だが、行き止まりを発見した時に一番やってはいけないのは
何も印を付けず、別の場所に行くことだと俺は思う。
また、その分かれ道に来たとき、もうそのことに忘れてしまっているから
また、同じ失敗を犯す。そうして迷い、時間の無駄になる。
ということで、外ポケットに入っていた蛍光ペンを使う。




とまぁ、こんな感じだ。
普通は要らない知識だが、やっぱゲームはするべきだ。


この2つを実行し、効率良く探索することに成功した。
この日わかった事だが、この洞窟はかなり広い。
19歳の俺の足がパンパンになるほど歩いたのだ。
長時間歩いたはずだが、一向に出口が見えない。


だが、良いこともあった。拠点にふさわしい場所を見つけたのだ。
狭かった前の水あり拠点とは違い、そこはとても広い。
天井には、ゲームやアニメの妖精のように
青く光る美しい鉱石か、結晶のようなものがあった。
勿論水もある。
ここなら、長い間住んでも大丈夫だそうだ。


しかし、遅すぎるが、俺は今の言葉の矛盾点に気がついた。
そういえば..食べ物無いんだ。






とゆうことで、2日間の反省終了!
今日もまた、探索するので準備に取りかかる。
最初に、残りの紙の枚数だが、一昨日と昨日の減った合計分は
小説本全体の⅓だ。つまりあと4日持つということ。


え? どんだけ厚いんだよってか?
理由は簡単。俺は登山中の暇な時間にでも読もうと思って
ビルのようにたくさん積んで持ってきたのだ。
よく初対面で、小説読んでるから真面目そうとか言われてたっけ。


さて、準備は整った。
俺は早速、発電機を回し、昨日見つけて印をつけた洞穴を探そうとした。
しかし、そこには印しかなかった。


おかしい。何故無くなっている。
俺の見間違えかとも思ったが、そんなはずは..。


いや、何でそんな事で悩んでいるんだ俺。
今は食べ物を探すことが重要だろ。
よし、深呼吸、


マシンガンの音のように速く動く心臓を
俺は、落ち着きながら遅くする。




よし、治まったから別の道を探そう。
昨日は感激してすぐ寝てしまったから
まだ、この拠点も全て知った訳では無いのだ。


俺はライトを左に向け、別の洞穴を探す。
無い。
今度は右だ、無いなら横側だ。


..


結局、それを探すだけでも2時間ぐらいかかった。
一つだけ奥の方にあったのだ。


「行ってきます!」


自分以外だれも居ないが、気分でそう言ってみた。
なんかスッキリする。声を出すって素晴らしい事だったんだ
と今さら気づいた。


また、印を入り口につけ、未知の世界に足を踏み入れる。


3日だけだが、もうこの生活にも慣れてきた。
流れ作業である。まるで、プロになったような手つきで紙を均等に置いて行く。
何の『プロ』だよ、と自分で思って自分でツッコみながら。


赤の他人が見たらそうでも無いかも知れないが、結構楽しい。
俺は、ずっと新たな出会いを求め続ける。
これが冒険なんだ。登山では味わえないゲームのような体験だ。


しばらく歩いていると、何かの音に俺は気づいた。
鳥類系の動物だろうか。羽で羽ばたいているように聞こえる。
鳥だろうか。でもこんな洞窟に?
そういえば、見たことは無いけど超音波を使って暗い場所を飛び回る
豚みたいな鼻をした動物がいることを小学生の時に聞いたような気がする。


何だっけ! 結構有名な奴だった気がする。


俺がそう考えていると彼らから姿を表してきた。


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一方、彼とは違い無事合流していた二人は
マッチを使って火を起こし、暖をとっていた。


「なぁ、これからどうする?」


「決まってるじゃない。
皆を探して、食べ物を探して、それから..」


二人は何時になく、暗い雰囲気で。




「..まぁ、取り敢えず今日は寝よう。な?」


「寝れるわけないでしょう?
ここの世界は明らかにおかしい。
何なのよ..さっきの奴等」


泣きながら、目線は下に向く。
だが、その素振りによって、複数の影に気づいた。


「は、早く火を消して! また..奴等が」

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