迷宮に転生した者達の成り上がり物語

ノベルバユーザー313607

03 解析と危機

《朝ですよ。探検に出掛けましょう!》


こいつは俺の苦労を知らないのか。
誰のためにこんなヘトヘトになったと思ってる。


翌日、案の定寝れなかった俺は、
顔を拳で殴られたようなくまが出来、
只今、仮眠中である。


「クソ。何でお前はあんなに電気を短時間に食うんだ。」


《しょうがないじゃないですか。
私は進化した分、エネルギーが必要なんです》




進化と言っても、
ただうるさくなっただけのようだが。


「あともうちょっい。30分で良いから」


《ダメです。あなたそう言っていつも起きないじゃないですか。》


くそ、流石は長年俺を見てきたAI。
嘘は通じないようだ。
こうなったら、黙ろう。


《ほう? そう来ましたか。
では、こちらも....》


そう言って、振動機能とアラーム機能を使って来やがった


《秘技、無断アラーム攻撃!!》


何て迷惑な技だ!
お陰ですっかり眠気も覚めてしまった。






さて、今日は村を探しに行く訳だが。
まず先に、こいつに見て貰いたい物がある。
俺はバッグから昨日取った結晶を出す。


「なぁ。これを分析できるか?」


《了。アプリのカメラを使って撮影してください。》


おぉ、やっとAIらしくなってきたな。
言われた通りに写真を見せる


《解析に成功しました。
『マグコート結晶。』激レアです。
所持するだけで防寒や、魔法強化に使えます》


マジで。
偶然見つけたけど、採取しておいて良かった。


「魔法強化ってことは魔法を使えるのか?」


《はい。色々ありますが、人間には基本的な物しか..》


ってことはあんま期待しない方が良いな。
まあ、こいつがいるからいいか。


「じゃあ今から歩くけど、
魔法について教えてくれよ。」


俺は探索しながら聞くことにした。
怪物が出そうなこの不気味な迷宮も、
誰か一緒に喋れる奴がいると安心して前を向ける。
しかも、結構役に立つおまけ付き。




《あなたにできるのは、思考加速、身体強化、無制限のアイテム使用です。
使うには呪文を唱える必要があり、3回しか使用できません。
呪文は実戦で教えます。》


うーん。
つまりゲームみたいに、どんどん打てる訳ではないと。
しかも、炎を出したりは出来ないと。


どうやら、あまり派手なのは無いみたいだし
そこはちょっと残念だな。


《ちなみに私は、マップを知ることができ、
モンスターの発生場所を教える事が出来ます。》


結構便利じゃん。
サポーターとして期待できるな。


俺が歩いていると、今度は草を発見した。
岩の中から生えてる。ワイルドだねぇ。


「おい、出番だ。
こいつを解析よろ。」


《了。『ハイレン草』、回復に使えますがレアです。
あまり見つけられない分、効果は絶大です。》




「じゃあ、いざという時に使うか。」


その言葉に、彼女は少し不安めいた事を言い出す。


《..いえ、今がその時かも知れません。》


いつになく、小声で言っている。


「え? どゆこと。」


《警告。ゴブリンの集団がやって来ます。
数は五体。人質も用意している模様。》


ホントだ。奥から謎の殺気が。
でも何でいきなり。


《恐らく、転移魔法を使った者がいます。
何でも良いので武器を。》


俺は氷を取り出したが、これで勝てるのか?
迷っている間に、彼らは姿を現した。
松明を持っている。
人間に例えると、小学生ぐらいの身長で、棍棒を持つ。
野球少年みたいな感じだ。
俺に気付いたのか、
人質らしき、布でぐるぐる巻きにされた
ミイラのような物を前に構える。


人質を盾にしてこちらの攻撃を防ぐつもりだ。


「おい、どうすればいい!」


《親愛なる神々よ。我に知を与えたまえ。
リピート、アフタミー?
この魔法の制限時間は30秒です。》


「し、親愛なる神々よ。我に知を与えたまえ。」


突然、時がゆっくりになるのを感じた。
奴等も動きが遅くなり、勿論俺も。
恐らく、呪文の言葉的に思考加速ってやつだろう。


取り敢えず、最初は観察してみる。
どうやら、奥二人は弓担当らしい。
前の一人は人質を抱え、残りはその後ろにいる。
ゆっくり動いてくれるので、分かりやすいな。


人質の方は、目だけ見える。
それ以外はわからない。
だが、目の形的に人間だろうか。
それも、日本人特有の蒙古ひだが付いている。


さぁ、次はいよいよ倒す方法についてだ。
どうする。


《お困りの様ですね。》


いきなりすぎる登場に、俺の心臓はまた、マシンガンになってしまった。


「ってお前、喋れるのか。」


《えぇ。あなたの脳に直接話しかけれる
特殊な電波を使用しています。
武器は何かありましたか?》


「あぁ、氷があったよ。」


《それは良かった。じゃあ、頑張って下さい。》


あまりにもあっけない。


「おい、なんか教えてくれよ!」


《無理です。私に許されたのはあくまで
解説と解析と情報の伝達。
戦闘のヒントはプログラムで禁止されてます》


なら、弓兵をどうするか考えないと。
..そうだ。確か魔法は3回までだったよな。
あと、


「なぁ、この思考加速って、
脳の回転を活発にして、時間の有効活用が
出来るってことだよな。
だから、遅く感じる。」


《その通りです。時間が遅くなるのではなく、
ただ、あなたの脳の回転速度が上がってるだけです》


「それと、身体強化について教えてくれ」


《了。力が上がり、反射神経も上げる事が出来ます
持続時間は20秒。
呪文は、『力の根源たる細胞共に命ず、 
死して我に貢献せよ。』です。
これは使用後、筋肉痛に必ずなるので
あまり良い魔法ではありません。」


そうか。でも、それで良い。
作戦は決まった。そして、
魔法の効果が切れた。





コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品