if中二病が異世界転移したら━改訂版━

ノベルバユーザー313493

21話 宮廷魔術師団入団7

 「さすがにこれは‥‥‥」
 「なんだ?」


 目の前にあるのは山のように積み上がった玉虫色に輝くお金だった。今まで一度も見たことがない色だ。そしてそれがお金の形をしていると、言うことは‥‥‥


 「まさか王金貨!?」
 「そうだ、これを五十枚程やろう。それだけあればいい装備が作れるだろう」
 「いや、そうかも知れないが流石にこれは‥‥‥」
 「何をいう価値でいったらそこのランベルトが持ってった双剣の方が高いから安心しろ」


 さすがランベルト、遠慮なしだな。


 「そうゆうことならありがたく貰っとく」
 「うむ、いつまでかかってもいいからせいぜい良い装備をつくってくれよ」
 「ああ、まかせとけ!」


 俺達は王金貨と更に貰ったミスリルをタカスギにしまうと応接室に戻った。


 「最後に第三団は来週から遠征訓練があるから準備しといてくれ。あとは城の書庫は禁書庫以外の本は好きに見て構わないからな。これから宜しく頼むぞ竜次君!」
 「ああ、こちらこそ宜しく頼む」


 取り敢えず挨拶を交わすと応接室を出た。まだ日は高い、宿に戻るも銃の調整をするのもいいが、せっかく書庫の本が読めるのだ。何かないか見てみようと思う。


 まあ見ると言ってもタカスギに記憶させるだけなのだが。


 さすがは城の書庫だ、異常に広い。


 〝んじゃまあ頼んだ〟
 《道具使いが荒いデスマスター》
 〝おま、それやめろよはずかしいだろ〟
 《懐かしいデスマスター》
 〝懐かしいとかいらねぇわ!〟
 《次を取り込めますが》


 なに、暗にさっさと動けと言ってるのか?あ?なんだろうこの道具生意気じゃね?
 ほんと、疲れるわ


 俺達がひたすらに本の出し入れをする事数時間、すっかり日は落ち窓から入る光は街灯の物となっていた。


 〝何冊あった〟
 《約三千万六千冊デスマスター》


 三千万、確か日本で一番多い所で千万位だった筈だからおよそ三倍、かなりの量だ。これでは目的の本を見つけるだけで一苦労だろう。


 〝で、なんか今すぐ使えそうな物はあったか〟
 《今すぐ使えそうな本は約六百万冊デスマスター》


 おお、かなりの量だな。


 〝じゃあその中で魔法関連の本は幾つだ〟
 《約六百万冊デスマスター》


 全部魔法の本だったかー


 〝じゃあその中でも特に使えそうなのはあるか〟
 《オススメは『クロのレシピ集』『魔法大全』『魔法格闘術』『頭がよくなる魔法の本』『我が弟子に捧げる付与魔法』デスマスター》


 なかなかに、良さそうなほんがあるじゃないか、特に付与魔法は気になる。が、


 〝おい、てめぇ頭がよくなる魔法の本とか俺をバカだと言ってんのか!〟
 《本当のことデスマスター》


 ダメだ、こいつ相手をしてはダメだ。堪えろ、堪えるんだ俺!


 この実態のない奴をどうしても殴りたいという衝動をどうにかして抑えるとタカスギと共有している記憶から付与魔法について思い出す。


 『人のためになるように使いなさい』『悪い事には使っては行けません』『付与魔法は魔法のイメージを付与したいものに与える魔法だ』


 なるほど‥‥‥わからん。しかし、この人弟子をとるくらい凄い人だったのだろう。


 『最後に弟子にこれを授ける。〝透視〟これは我らが楽園を除き見る為に必要なものだ。確実に作り上げるべし』


 前言撤回。ただの変態だった。しかし、良い情報もあった。『イメージを与える』付与魔法は是非とも習得したい。帰ったら早速練習するか。


 帰り道もう一度深く思い出す。


 『付与する物質、数により抵抗が変化する。魔力との緩和性が高ければ付与は容易になり、低ければ困難になる。また数が増えると抵抗が大きくなる。
 付与をするにはまずその物質の固有波を解析しそれにあった波動の魔力を与えなければならない。
 固有波は付与を行うことにより変化する。そのため一度付与されたものに更に付与を行うにはもう一度固有波を解析しなければならない。
 さらにこれまでの研究でこの固有波が抵抗と大きく関わっている事がわかった。固有波が複雑になるほど抵抗が高くなるのだ。付与を行うと固有波が複雑になるため抵抗が高くなり難しくなる。
 今までの研究結果より金属では神聖石オリハルコンの緩和性が最も高く次がミスリル、鉄、銅となっている。また一部の魔石にはこの固有波を打ち消すものがあるのを確認している』


 この後は考察が長々と書かれていた。この人の研究結果をまとめると要は、付与をするには固有波とかいうのを解析しなければいけなくて複雑になるほど難しくなる。そういったところだろう。思い出している内に宿に着いたみたいだ。


 やどに着くとケイが丁度夕食を作っていた。


 「おう、お帰りどうだったよ」
 「ただいま。ん、とくに何もなかったけど‥‥‥ああ、もうしばらくここに世話になる」


 そういうと、広角を吊り上げて笑う。どうやらそこが気になっていたらしい。


 「そうだ、一つ聞きたい事があるんだが」
 「なんだ、なんでもいってみな。大抵の事は答えてやるよ」
 「じゃあ、鉱石の固有波について教えてくれないか」
 「なんだ竜次、お前付与魔法に興味でも持ったか」
 「ああ、使えたら便利だろ」
 「確かにな。でもあれは、まあいいか。固有波ってのは名前の通りなみ波動はどうだ。これは全ての物質が持ってるが全て少しずつ別の形をしている。これを感じとるには‥‥‥そうだな、魔力探知を極めるしかねぇな、そうすればなんとなくわかるようになるさ」
 「適当だな」
 「しかたねぇだろ。感覚の問題なんだからよ。さメシもできたしさっさと食って寝な」


 今日の夕飯は青椒肉絲モドキとキノコと干しシシュシュバインのスープ、黒パンだ。俺はそれを味わって食うと部屋に戻った。


 〝なあ、固有波について何かしらないか〟
 《え?なんデスマスター。あ、固有波についてですか。そうですね~わかりますよ。でもな~どうしようかな~教えるの面倒だな~》
 〝もういい!お前に聞いた俺がバカだった〟


 なんだこいつ、日に日に性格が悪くなってやがる。


 《やっと自覚しましたかデスマスター。そんなマスターにいいこと教えてあげます。固有波も音デスマスター》


 音か‥‥‥  


 〝ありがとな〟
 《もっと感謝すると良いのデスマスター》
 〝図々しいな〟


 音なら耳で聞こえる筈だ。


 早速耳に魔力を集中させてみる。


 別になにも聴こえないが‥‥‥


 もう少し魔力を多目に集中させてみる。十くらい集中させた所でやっとかすかにノイズのようなものが聴こえた。
 さらに四十加えたところではっきりとノイズが聞こえた。魔力消費を極力減らすために練習を続けた。


 「ぐぁぁぁあ。づがれだ~」


 実際には一分程しか経っていないのだが物凄く長い間魔法を使っていた気がする。魔力は既に底を尽きかけていた。
 しかし、それも仕方の無いことだろう。少しだけ魔力循環が出来るようになったがそれでも毎秒五十近くもの魔力を消費したのだ。一分も続ければ三千も消費したことになるのだ。普通ならとっくに倒れているレベルだ。


 「だめだ、もう寝よう‥‥‥」


 俺はベットに体を沈めるとゆっくりと瞼をとじ深い眠りに着いた。
 

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