if中二病が異世界転移したら━改訂版━

ノベルバユーザー313493

10話 魔装術

 「あそこにいるのがハリウサギだ」


 一つ目の山を越えたさきにそいつはいた。全身を針で覆ったハリウサギだ。見た目はウサギとハリネズミを足して二で割ったような感じで、めっちゃかわいい。でも狩るのだ。なぜなら━━━めっちゃ旨いから!そうこのハリウサギ。超臆病者でなかなか地上に出てこないので捕まらない。でもその肉は柔らかくて甘い凄く美味しいのだ。実は昨日の夜食べたステーキがそれらしい。しかもあのウサギ。高級食材で一羽金貨二枚もずるそうだ。つまり食べても売っても美味しい食材なのだ。まぁ自分達で食べるのだが、てなわけでは捕獲である。


 「奴は動きや気配に敏感だ。だからここからこうして‥‥‥」


 さっきの魔法の剣を更に伸ばして一突き。実にあっけなかった。本当は来るとき言ったような針での攻撃も警戒すべきなんだそうだが今回は見つかる前に仕留められたので必要なかった。
 近くへ行きハリウサギを回収する。


 「さて次はお前の番だ。シシュシュバインの説明はしたな。あとはあえて言うなら一度攻撃したらどちらかが死ぬまで追いかけてくる。そしてめっちゃ速い。そこだけ注意すれば余裕だ」
 「なんか余裕じゃない気がするが、まぁなんとかしてみせるさ」


 森の中をひたすら歩いて探す。シシュシュバインは標高の高いところにいるらしいので取り敢えず上を目指しながらだ。


 「そう言えばこの技術って名前はあるのか?」
 「ん?たしか魔装術とか言ったかな。名前なんぞ興味ねぇからよくおぼえてねぇな」
 「そうか、ありがと」


 魔装術。なかなかにいいネーミングセンスだきっと外の人に違いない。


 「そう言えば昨日水を出すのに苦労してたみたいだが今やってみな」
 「知ってたのか‥‥‥」


 お湯を出してみる。


 おぉぉ!!昨日よりも楽に出せた上に確りと量の調節もできた。


 凄いな魔装術。


 「いい感じじゃねぇか。無詠唱でそこまで出来れば十分だな。詠唱をすればもっと楽になると思うが、まぁあれはセンスみたいなもんだからな」
 「詠唱が決まってないってのが難しいんだよな。自分のイメージを言葉にするとか難しい過ぎるんだよ」
 「確かにな。俺なんてそのときそのときで詠唱少しづつ違うからな」
 「それでいいのかよ!」
 「いいんだよ。イメージでやるんだから。詠唱なんてそこまで気にする必要はねぇんだから」


 本当に豪快と言うかなんと言うか凄い人なんだがあんまり凄いと思えないのはなぜだろうか‥‥‥


 「お、いたぞ。多分シシュシュバインだ」


 見つけたと言うのでついていく。すると体調は一メートル位なのに牙が二メートル近くありそうな奴がいた。おそらくあいつがシシュシュバインだろう。ケイに確認したがあれであっているそうだ。


 「よし、じゃあさっさと行って一発殴ってこい」


 殴ったら攻撃してくるとかなんかRPGみたいだ。取り敢えず思いっきり刀で首筋を斬る。


 あれ?


 斬った。全力ではないが思いっきり殺る気で斬った。それなのにシシュシュバインには少し傷が付いただけだった。


 そう言えばこれ、ミスリルだよな。ミスリルの刀で斬れない皮ってどんなだよ!


 内心めっちゃビックリだ。どうやら今の一撃で俺は敵認定を受けたようだ。めっちゃ睨まれた。おそらくこんな事を言っているのだろ。「んぁぁ!?ガキが俺に喧嘩売るとぁいい度胸じゃねぇか、死ぬ覚悟は出来てんだろうなんぁぁ!?」最悪だ。どうやって倒そうか、ミスリルの刀で傷を付けるのがやっとだったんだ。普通はどうやっても斬れないだろう。かといって熊のときのように口の中から斬るにしてもその前にあの牙で俺が串刺しになりそうだし‥‥‥


 おっ、戦闘準備オッケーってか。


 足に力を入れていた。おそらく突進だろう。なら避けられる相手が動いた瞬間に逃げればどうにかなるだろう。


 シュッ!


 ズドゥォォォン!!


 痛ぇぇ。何が起きたよ。今奴が飛び出したと思ったら次の瞬間には俺が飛ばされてた‥‥‥速いとは言っていたが、速すぎだろう。これじゃ魔装術で関知してからじゃ間に合わないし、黙視でも意味がない。とか、考えている間にもまた飛んで‥‥‥あぁ、意識が遠退いていく‥‥‥さっきは足に魔力を集めれば早く走れるとか言ってたけどどうやって、さすがにここでヒントは貰えないよな。さっきはイルカを参考にしたが今度も何かないか?
 動物で速いって行ったら(ズドン!)チータだけど、別に特別何か能力を使ってわけでもない(ズドン!)だろ。じゃぁ、速いものは、車は、タイヤを回し(ズドン!)てるわけだし‥‥‥いや、車のタイ(ズドン!)ヤってどうやって回してんだ?確かに燃料を‥‥‥どうするんだっけか。わからん。別の奴にしよう、早くしないとそろそろ体が。既にあばら骨が何本か折れている気がする。


 「おーい大丈夫か?」


 声を出して答える余裕は全くないので取り敢えず親指を立ててグーサインを出しておく。


 「なら頑張れ!死ぬ前にはヒールかけてやるから。俺がよそ見しねぇ限りはしなねぇよ」


 おいおい、そりゃお前がよそ見したら死ぬってことじゃねぇか。やってらんねぇな、こんなん修行じゃなくてただ強い奴と戦わされてるだけだろ。


 さっきまで奴の動きが止まっていたどうやら休憩ももうおしまい。準備万端のようだ。


 では第二ラウンドと行きます、かっ!


 今度は魔法で地面に穴を開けて落とし穴を作る。丁度奴からは見えない位置だ。最初からこうすればよかったんだろうが何せこれは一応特訓だ。落とし穴を使って勝ったら特訓の意味がない。それに深すぎるともし万が一牙が折れてしまったら大変だ。さらにはそもそも刀が通らないのだから落としても足止め程度にしかならない。と、言うことでいままでやらなかった。まぁ余裕がなかったのもあるが。


 【奴を止める穴を、落とし穴】


 なんとなくそれっぽい詠唱をしてみた。落とし穴の下には申し訳程度に石の杭が出ているがおそらく意味がないだろう。俺は更に至るところに落とし穴を作る。こうして少しでも足止めをして早く走る術を手にいれるのだ。速いか‥‥‥アニメで行ったら○ム○ムの実のギア○○ンドみたいな感じでもいいのだが‥‥‥確かあれは血流を早くする方法だったはず。体全体を強化すれば‥‥‥取り敢えずそれっぽいのを練習してみる。と、奴が向こうに最初作った落とし穴にはまったようだ。作戦成功だ。
 さて、さっきは体周りに着込むように纏ったから今度は体の内側に纏うイメージでその中を魔力で一杯にする。なんとなく上手く行ったがまだ穴だらけで肝心の脚は強化されていなかった。今度こそはと脚の先まで行き渡らせる。まだ漏れるがなんとか上手く行ったようだ。さて、これで取り敢えずは抜け出してきても逃げることは出来るだろう。あとは止めを刺す手段だが刀まで魔力を纏わせるのはまだ出来そうにない。そこでだ、それようの刀ではないがなんとか出来ないかやってみる。奥の手と言うやつだ、成功率は30%と言ったところだろうか。取り敢えず刀を手に奴のところへ向かう。そろそろ出てくる頃かも知れないから注意しながらだ。落とし穴の近くにいると待っていたと言わんばかりに飛び出してきた。予想していたのでなんとか避けることに成功する。物凄い緊張感だ、奴が脚に力を込めた瞬間に俺は思いっきり後ろに飛ぶ。その先にあった落とし穴を飛び越えて。その瞬間奴も飛び込んできたが落とし穴に気がつかなかったようでまた落ちた。


 今だ!!


 梓苑流剣術━━━奥義、天紅衝蕾てんくしょうらい


 一番最初に攻撃した首の傷にあわせて攻撃を打ち込む。この技は線ではなく点での攻撃だ。上段からの刀の切っ先に体重を全て乗せて打った攻撃は見事首を貫いた。懸念していた刀が折れると言うこともなく無事討伐することができたのだ。


 「よくやったじゃねぇか!最後のあれは武器に助けられた見てぇだがまぁなかなかいい技だったぞ。その調子で頑張りな。今日は帰ってご馳走だ!」
 「うぉぉぉ!!」


 俺は柄にもなく勝利の雄叫びを上げると奴、シシュシュバインをしまう。ケイが回復魔法をかけてくれたので傷は癒えた。あとは帰るだけだ。

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