if中二病が異世界転移したら━改訂版━

ノベルバユーザー313493

8話 ケイの宿屋



 「はい、確かに確認致しました。依頼の達成となりますのでカードの提出をお願いいたします━━━━はい、これでポイントが2入りましたので次のランクアップまでは88となります」


 カードを受けとると、組合を出て詰め所に向かう。一応お礼と挨拶をしにランベルトのところへ行く。
 詰め所の中には誰も見当たらなかったので声をかけてみる。


 「すみませーん」
 「あ、昨日の‥‥‥」


 そう言って出てきたのは昨日ランベルトと一緒に賊を追っていた騎士だった。どうやら覚えていてくれたらしい。


 「あのランベルトはいますか」
 「あぁあいつはさっきマナブースターがなんたらかんだら言って出ていったよ」
 「そうですか、ありがとうございます」


 ザザンさんのお店に行ったらしい。確かに昨日行くと言っていた事をすっかり忘れていた。てか騎士が仕事中に私用で買い物に行っていいのか?
 取り敢えず礼を言ってザザンさんのお店へ向かう。


 「あ、いた!」


 扉を開けるとそこには当然だがランベルトとザザンさんがいた。


 「これはこれは竜次さんどうかされましたか」


 店に入るとホクホク顔のザザンさんが出迎えてくれた。


 「いえランベルトに用があって‥‥‥」
 「ん?俺か?」
 「俺か?じゃねぇよ!まさかその日知り合ったやつを家にほっぽって会議行くとかありえないだろ!もし俺が何か盗もうとか考えたらどうするんだよ」
 「いや、しねぇだろ。こう見えて人を見る目はいいんだぞ」
 「それでもだ!‥‥‥まぁいいや、何言っても無理そうだし。昨日はありがとうな。今日は宿をとるからまたな。それだけいいに来た」
 「おうそうか、いつでも来いよ!名前を言えば管理人が鍵渡してくれる筈だから」
 「ああなにかあったら頼むよ」
 「それと宿、きめてねぇならケイの所に行きな。東区の壁沿いの宿だ。ボロいがいい店だぞ。俺の紹介って言えば間違いねぇ」
 「じゃあそこにするよ。ありがとな」
 「おうよ!」


 取り敢えず店を出た。なんだろう物凄く疲れた気がする。


 取り敢えず西区の壁沿いへ向かう。西区は民家等が並ぶ住宅街だ。中心へ行くほど土地が高くなるため大商人等は中央の方を好んで住む。また北区は貴族街となっており一般人は立ち入る事ができない。東区は獣人区と呼ばれ獣人が多く暮らしている。組合があるのは商業区とも呼ばれる南区だ。コロッセオもここにある。
 暫く歩いているとちらほらと街灯がつき始めてきた。昨日は日が落ちる前に家に入ってしまったので観ることはなかったがなかなかにきれだ。


 っと、ここかな


 街灯を観ていて通りすぎるところだった。確かに見た目はかなりボロい店だった。


 「すみませ━ん」
 「あぁん!?なんだボウズ、ここはガキなんぞ泊めねぇぞ」


 おぉ、いきなりメンチ切られたよ。おっかねぇースキンヘッドってのがまた怖い。宿屋の主人というよりどこかのヤクザの頭って言われた方が納得できる見た目だ。


 「あの、ランベルトの紹介で来たのですが‥‥‥」


 そういうと一気に表情が明るくなる。


 「なんだ、そうだったのか。ならさっさと言ってくれよ!オレァここの店主のケイだ。あいつとはスラムからの仲だからよ。よろしくな!」
 「はい、此方こそ。間宮竜次ですよろしくお願いします」
 「おう!何日泊まる?」
 「三十日でお願いします」
 「オーケー。飯が朝と夜ついて一日銅貨三枚だ!計算は苦手だからやってくれ。料金は前払いでな」
 「さすがに安すぎじゃ?」
 「おま、親友のダチをこんなボロ屋敷に泊めるんだそんなにいくらもとれねぇよ。けどしっかりと色々手伝って貰うからな」


 取り敢えずそうゆうことにして泊めてもらう。タカスギから三十日分、銀貨一枚を出す。


 「え~っと、銀貨一枚っつ~ことぁ銅貨十枚返せばいいんだな」
 「いや、いいよ。その分頼むから。よろしくな」
 「そうか?ならありがたく受け取っておくぜ。その分期待しとけ!あ、部屋はあんまり期待すんなよ」
 「どっちだよ」


 取り敢えずいい人そうでよかった。前になんかの本の台詞に「いい人の友達がいい人とは限らない」って書いてあったから少し不安だったのだ。
 二階の部屋に行く。確かに狭くてボロいが掃除が行き渡っていて綺麗だった。ベッドもふかふかでシーツも汚れていない。十分に満足できる仕上がりだ。


 「飯ができたら呼ぶからそれまで待っててくれや」


 そう言い残してケイは下に降りていった。


 〝タカスギ、魔法書を出してくれ〟
 《なぜですか?》
 〝なぜってそりゃ、おま、読むため以外何があるんだよ〟
 《できたら私が既に読み終えましたが》
 〝アホか、お前が読んでどうするんだよ。まさかお前が使うのか〟
 《アホではありませんデスマスター!折角読んだのに。もういいです》
 〝いや、意味わからないからだから、お前が読んでも意味ないだろ〟
 《マスター、私を誰だと思っているのですか。今や私とマスターは一身同体。全ての知識は共有されるのです。ですから私が読んだ本はマスターが読んだ本と同義なのです》
 〝いや、意味わからない〟
 《‥‥‥マスターはバカですか。困りましたね、私、バカに説明をするのは苦手でして‥‥‥》
 〝おい!お前さっきからバカバカうるせぇよ!さっき自分で一身同体って言ったばっかりじゃねぇか。つまり俺がバカならお前もバカと言うことになる!!〟
 《なんだ、解ってるじゃないですか。では私はこれで、漫画の続きを読みたいので》


 おい!お前!‥‥‥


 色々言いたい事はあるがまぁつまりは俺達の知識は共有されていると言う事だろう。確かにあの本を想像すると内容が全て解った。うん、便利だ。便利なんだが‥‥‥こいつ(タカスギ)の個性が豊か過ぎてすげぇうざい!早急にどうにかしなければ。
 で、こんな下らない問答をしていたらケイからお呼びがかかった。できたのだろう。


 「うぉぉ!旨そう!ランベルトといいケイといい料理上手いな」
 「そりゃスラムをなめちゃいけねぇぜ。ろくにない食材を工夫して旨いものを作る、そんなことをずっとしてたんだ。これぐらいはできるさ。さ、冷めねぇうちに早く食え飯は温かいうちが一番だからよ」
 「確かに、頂きます」


 ケイの料理もかなり旨かった。何の肉かわからないがステーキが一番旨かった。スッゴい柔らかいのだ。口の中でとろけると言うやつだった。飯を食い終わると部屋へ戻る。ここはランベルトの家と違って風呂はないのでタオルで体を拭う。桶を借りると練習がてらお湯を出す。とは言ってもやはり最初から上手くは行かなかった。って言うか簡単な話、お湯を沸かしてそれをタカスギにしまっておけばいいのだがそれに気がついたのは少し後の事だ。


 「う~ん、なかなか上手く行かないな‥‥‥」


 既に十回ほど試しているが全然でない。一回だけ一滴でたがそれでおしまいだった。


 どうするんだったっけか、


 もう一度本を出して開いてみた。「イメージを具現化する」


 あっ、完全に忘れてたわ。イメージ、そうイメージ。ならお風呂の蛇口を捻ったときどばっと出るイメージで‥‥‥


 ドゴォォォォ


 ヤバイヤバイ出しすぎた。取り敢えず慌てて止める。危うく部屋が水浸しになるところだった。結構コントロールは難しかった。が、何はともあれお湯を出すことには成功したのでタオルを浸けて絞り体を拭う。


 うぉぉ~あったけぇ~。


 なんだろうこれっぽっちの苦労とも呼べない苦労だがそれでも風呂のありがたみを感じることができるいい機会だった。この後無事さっぱりした俺は直ぐに寝ることができた。








 

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