ドラゴンテイマーになった僕は鶏を育てて暮らす。

ノベルバユーザー313493

8話 僕と海

 「随分と日も暮れてきたな」


 「うん、どうしようか」


 「帰る?」


 「いや、砂浜に行かない?」


 「いいですよ」


 「その前に皆にお土産買っていかない?いつでもこれるけど、その――――――今日は特別だから」


 「確かに皆の思い出に残るようないいやつを探そうか」


 「それなら私いいの知ってます」


 ココナの先導でお店に入る


 「ありました。これです」


 「これは?」


 入ったのは織物の店だ。様々な織物でできた製品が置かれている。そのなかでも独特のデザインの物は持ってきた


 「ミンサーって言うんですよ。これには“いつの世までも末永く”という意味があるんですよ。どうですか、ピッタリじゃないですか」


 「確かにいいんじゃないかな」


 「こんなことよく知ってたわね。もちろん私も賛成よ」


 「じゃあ決まりだな」


 ミンサーのタオルを数枚手にとって持っていく
 

 「さて、お土産物買ったことだし行こうか」


 「はい!」


 門をくぐり砂浜へ出た


 「綺麗」


 「今日はそればっかだな」


 「でも綺麗なもので一杯だったのは事実よ」


 「ちがいない」


 最早綺麗が口癖のようにやりつつあるがこの街へきて良かったと思った
 目の前にはオレンジ色に輝く夕日が見える


 「えぃっ」


 「私も」


 二人とも靴を脱いで砂浜を駆けていく。そして海にくるぶし辺りまで浸かると水の掛け合いなんてものまで始めた。実に絵になる


 「冷たい!」


 「司もおいでよ」


 「あぁ今行く」


 靴を脱ぎ捨てて砂浜からココナ達の頭を飛び越えて海へ行く。着地と同時に水飛沫が上がり二人がずぶ濡れになった


 「も~、びしょびしょですよ」


 「あ~あ髪ベタベタだし、最悪」


 そう言うわりには二人とも楽しそうだ


 「ごめんごめん」


 「絶対思ってない」


 「これはお仕置きが必要ね」


 二人が構えると水が飛んできた


 「ちょ、それ違うでしょ」


 「何がですか」


 「魔法を使っちゃいけないなんて事はない筈よ」


 「そうだけどさ、なら!」


 掌を前に出す


 「お返しだ」


 「あったか~い」


 あんまり冷たい水ばかりを被っていると風邪を引いてしまいそうなのでお湯をかけてみた。温度は40度と少し熱い程度だ


 「みて」


 マヤの指差す方を見ると夕日が地平線の向こうへ沈もうとしていた
 海から出て体を乾かし靴を履いて砂浜に座って眺める


 「また来たいですね」


 「いつでもこれるわよ」 


 「そうゆうことじゃなくて」


 「わかってる。来年も再来年もまた三人でこよう、まだまだ人生先は長い、何が起こるかわからないけど三人でなら大抵の事はなんとでもなる」


 「確かにね、このメンバーに勝てるのはそういない筈よ。少なくともこの国では国を挙げて他の賢者全員でもけしかけないとまず無理ね。それでも負けないけど」


 「そうですね、まさに最強家族」


 「そうだけど油断してると寝首をかかれかねないから気を付けないと」


 それからまた暫く夕日を眺める。少しして夕日が沈みきり辺りに夜の帳が降りる


 「帰りますか」


 「そうね」


 「そうだ、これ」


 そういってさっき買ったブレスレットを渡す


 「綺麗ですね、でもいつこんなのを?」


 「ほらトイレに行った時に」


 「なるほど」


 「それにしてもほんと綺麗。まるで海みたい」


 「でしょ、みて三人お揃い」


 「ほんとだ、でもそれ司さんには可愛すぎじゃないですか」


 「ほんと、でもいいん思い出じゃない」


 「確かにね」


 「ありがと」


 「ありがとうございます」 


 ふいんき的に今そんなことを言われると涙が出てしまいそうだ


 「さて、冷えてきたし帰ろうか」


 「そうですね」


 誤魔化すように空に浮かぶ星を見上げる。そして景色が変わった


 「おかえりなさい」


 「ただいま、ありがと」


 「いえ、仕事ですから。それにもうすぐ―――――」


 「お、お帰りなせぇ」


 「・・・」


 丁度交代の時間だったようで中からシューディールとクロがやって来た


 「丁度いいや、これ皆へのお土産」


 「ありがとうございます」


 「これはミンサーか嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか」


 「ミンサーというといつの世も末永く、この場合はずっと働いてくださいと」


 「・・・」


 なんか家がブラック企業みたいな言い方じゃないか。まぁ1日12時間労働者とかまさにそうなのだけど


 「まあある意味そう言うことです」


 「わっーたよ。俺とて辞める気なんざねぇから安心してくれや」


 「そうですね、それに僕は辞められないですから」


 「確かに、カ―――――」


 「それは言わない約束です」


 「・・・」


 なかが良さそうで何よりだ。四人に挨拶をして屋敷に入る


 「「「おかえりなさいませ旦那様」」」


 「ただいまこれお土産です」


 「これはありがとうございます」


 「では」


 「はい、おやすみなさい」


 二人とも別れて部屋に戻る。今日は疲れた。ベッドにダイブすると直ぐに夢の中へ旅立つことが出来た
































 「じゃ行ってくるよ」


 ココナとスカイの背中に乗る。今日はココナとデートの日だ、目的地は王都だ


 「今日は何をしようか」


 「そうですね、劇を見たいです」


 「わかった」


 王都につくと劇場へ向かう


 「やっぱり人が多いですね」


 「そうだね、今日の演目はなんなんだろう」


 「え~っと革命譚って書いてありますね」


 「革命?」


 「そろそろ始まるみたいですよ」


 舞台の中央に男が現れ紹介を始めた。そこそこ有名な劇団のようで立ち見の人すらいる


 「―――――ではお楽しみ下さいませ」


 男が下がって行く。そして舞台が始まった


 「面白かったですね」


 「うん、でもなんだかあの主人公王帝陛下ににてる気がするんだよな」


 「あ、それ私も思いました。あの最初の子供にアメをあげるシーンなんか聞いたまんまで、他にも武芸が達者ではないとか」


 「だよな」


 なんだかいやな感じだ、帰ったらマヤに相談してみた方がいいかもしれない


 「さて、次はどこ行こうか」

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