ドラゴンテイマーになった僕は鶏を育てて暮らす。

ノベルバユーザー313493

1話 僕とスカイ

 「おかえりなさいませ主様」


 「ただいま――――――って、スカイその格好は」


 「主様にお仕えするならばこの格好の方がよろしいとヤルタが」


 あの人の仕業か・・・うん、グッジョブ


 「似合ってるよでも動きづらくない?」


 「はい、問題ないです」


 「それじゃこれからもよろしく」


 「はい!」


 さて、何をしようか。今日やろうとしていた交渉は案外すんなり終わってしまった――――――しそうだ。前々からやろうと思っていた物の開発でもしようか


 「フランシェルさんいますか」


 「なんですか旦那様」


 「少し厨房を借りてもいいですか」


 「もちろんです。何か手伝うことはありますか?」


 「そしたらできたものを試食してみて合うソースでも考えてみてください」


 「かしこまりました」


 鍋に水を入れて火にかける。沸騰したところでお湯に卵を入れた。


 「1・2・3・4・5・6・7・8・9・10」


 お湯から卵を上げて卵を割ってみた。まだ中はトロトロでただの生卵だった。僕は今温泉卵を作ろうとしているのだ


 「できましたか?」


 「失敗ですね、もう一度やってみます」


 今度は60秒つけてみた


 「う~ん、またダメだ」


 思いきって5分つけてみる


 「おっ!」


 少し白い部分ができはじめた。少し進歩だ、今度は10分つけてみた


 「完成だ!」


 程よく白身が固まり黄身を割るとなかから卵がトロッと出てきた。スプーンに掬って少し食べてみる


 「うん!」


 完璧に温泉卵だ。思ったよりもかなり茹でたが完成だ。もうひとつ作るとフランシェルさんに渡す


 「美味しい!美味しいですよ旦那様!直ぐにソースを考えてみます。旦那様はあと何個かこれを作ってください」


 すごい勢いで調味料を合わせ始める。ときにはレモンやみかんの果汁なんかを搾って合わせたりしていた


 「できました」


 できたものには透明の液体がかかっていた


 「これは?」


 「トロントの実を搾ったものです。少しだけ塩を混ぜてみました」


 一口掬って食べてみる。鰹出汁のような味のなかにほんのりと柑橘系のような香りが混ざって甘い温泉卵とよくあって美味しかった


 「そういえばこの料理の名前ってなんですか?」


 「温泉卵です」


 「温泉卵―――――それならこれは温泉卵の果汁かけですね」


 温泉卵の果汁かけをもう一口食べる


 「これを売り出そうと思うんだ。一応公爵になった訳だしいくらかの収入は必要だと思うから」


 「たしかに、いつまでも旦那様の稼ぎだけでは大変ですしいつか足りなくなるかもしれないですからね、お店を持って安定的に収入を得るのは賛成です」


 そうすると幾らくらいで売るかな。卵は今一つ1000クルシェンで卸してるから、ひとつ1200クルシェンかな、ソース、出汁は別売りで


 「参考までに売るとしたら幾らくらいの値をつけますか」


 「そうですね―――――――1500円てところですかね」


 「なるほど、それで買いますかね」


 「買うと思いますよ。ただお店は王都がいいですね。テティーヌだと人口が少ないので売れる数にも限りがありますし、そのてん王都なら人口的にも問題ないかと」


 「なるほど、そしたらその方向で考えてみます」


 とりあえず物は完成した。あとはどう売るかだ、多分ただ売るだけでもそれなりには儲かると思う。けど、それなりじゃなくて沢山売るためには何か一工夫した方がいいだろう


 「そうだ、」


 この時間ならお風呂だな、まだはやいけどたまにはいいだろう。お風呂に行きお湯を出す。蔵に服をしまうとタオルを取り出して体を流すとお風呂に使った


 「スカイいる?」


 「主様?お背中流しましょうか」


 「いや、それはいいよ。お願いがあるんだ、前に言ってた竜達の食糧問題を改善するためにとある場所で仕事をして欲しいんだ」


 「かしこまりました。では準備しますので少々お待ちいただけますか」


 そう言うとザパッーンと勢いよく立ち上がる音がした


 「いや、明日からだから大丈夫だよ」


 今度はザブンと座る音がする


 「こっちの生活はどう?」


 「そうですね、とても快適です」


 「でも竜の状態の方が楽じゃない?」


 「たしかにそうですが食事が美味しいのでプラスマイナスで考えるとプラスですから」


 そうか、確かに向こうにいた頃は焼いた肉だけだったしこっちでの食事は全てが初めて、まさに革命だったのだろう


 「それなら良かった。何かやりたいこととかはない?僕にできることなら何でもするから」 


 「では―――――」


 そう言うとザパッンと勢いよく立ち上がる音がした。さらにペタペタと歩く音が、そして


 「なんで、こっちに来る!?」


 スカイの体が見えないように後ろを向く


 「できる事ならなんでもすると、ですからお背中を流させてください」


 「そうだけど、でもそれはまずいよ」


 「何がまずいんですか?」


 「違うこと、違うことにして」


 「わかりました、そうゆうことなら」


 バッサーン


 水が飛沫を上げて波が暴れる。体が揺らされて倒れそうになるがそんなことを気にできないほどに背中に当たったスカイの胸が僕の意識を奪う。背中越しにスカイの体温、息づかい、鼓動、胸の突起までもがクリアに伝わる


 「悪いことだってわかってます。でも今だけ、今だけでいいですから――――」


 その声はいつものように無機質で業務的なテンポではなく必死に何かをこらえるような、そんないつもとは全く違う様子だった


 腰に回されたスカイの手の上に僕の手をそっと重ねる


 「ごめん―――――――情けない話だけど今の僕には3人も養う甲斐性はないんだ」


 「そんな、情けなくなんかないです。それに私は主様に養って貰わなくても大丈夫ですから」


 「それじゃダメなんだよ、貴族としても、僕としても、昔気質かもしれないけど男は女を養えてこそだと思うんだ。家にとじ込もってろとまでは言わないけど必要以上に外で働く必要はないと思う。でも今の僕はスカイに仕事をさせようとしている。だから今は無理だ」


 「―――――――わかりました。でも背中を流すくらいはさせてください」


 はぁ、こんなところ誰かに見られたら大変だな


 「わかった、それじゃお願いするよ」


 「はい!」


 タオルを腰に巻き風呂から上がる。脇に置いてある椅子をとり腰をかけた。


 「では」


 ん、スカイのすべすべの手によって石鹸がのばされていく。ときおり背中を押したりマッサージをしながらやってくれて、とても気持ちいい。そして、背中が終わると徐々にお腹のあたりに回り始めた


 「もういいよ、ありがとう」


 そそくさと立ち上がり風呂から上がった


 「これは本当に明日から大丈夫だろうか」


 屋敷に戻るとココナとマヤに呼ばれた


 「何?」


 「スカイについてよ」





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