ドラゴンテイマーになった僕は鶏を育てて暮らす。
21話 僕とスルトと死の恐怖
家に帰った僕は家を蔵に仕舞おうとして諦めた。流石に重すぎた。ちなみに小さい方の鶏舎も無理だった。そこで仕方なく大きい鶏舎をパーツ毎に分解してしまっていく。流石にこれを壊されるのは困る。さらに家の中の物もポンポンと蔵に入れていった。
「結構スッキリしたな」
家のなかはまさにもぬけの殻だ。鶏達を箱に乗せると街まで走り出した。
屋敷に着くと庭の一角にコンクリート製の小屋を作らせてもらった。コンクリートにしたのはなるべく音が漏れないようにするためだ。作業が終わるとシュトロフ様がやって来た。
「すまなかった」
「いえあそこにいれば全て壊されていたでしょう、それに鶏達まで、ほんとうにありがとうございます」
「司くんお願いがある。君にも戦って貰いたい、今この街を護るには君の力が必要なんだ」
そうお願いするシュトロフ様の瞳には必死さが見えた。僕が考えているようにみえたのだろう。さらには土下座までしようとし初めた。
「そんな、やめてください。もちろん僕も戦いますよ。僕にだって守りたいものはありますから」
男がしかも一領を任される領主が土下座までしようとしたのだ。無理ですと言って逃げるのは簡単だ、実際僕だけなら今すぐいけば恐らくかなり遠くまで逃げられるだろう。それでもだ、ここで断るのはあまりにも恥ずかしい事に思える。それにどこが安全かなんてわからないし。
「そうか、ありがとう。本当にありがとう。無事護り通せたら出来る限りの礼をしよう」
そう言って戻って行こうとした。しかし、上を向いて動かない。
僕もシュトロフ様がみている東の空を見上げる。
「んな!?」
そこには黒い壁があったのだ。見つけたのは今朝だ。それがあんなに、既に3、40メートルはあるのではと思われる高さにまで成長していた。このペースだと明日の朝には奴が現れてしまうだろう。
「急がなければならないな。司くん、疲れているだろう今の内に休んでくるといい」
「そうさせてもらいます」
正直今も辛いのだ。素直に用意された部屋に行く。身体強化五重掛けはするべきではなかったかもしれない。
どれ程寝ていただろうか、目を覚ますと外が騒がしかった。窓から外をみる。
外は夜になっており真っ暗だった。しかしその中に一つ際立って黒い物体が浮かんでいる。
「まだ出てはいないか」
 
まだ出現していないみたいだったが黒い物体はすでに100メートルはあるのでは、というほど大きくなっていた。
正直また辛いので素直に休む。やばくなったら呼ばれるだろう。
「北條様、お食事のご用意ができましたがいかがいたしますか」
腹の虫が鳴いた。
こんな時まで仕事とは、いやこんなときだからか、どうあがいても死ぬときは死ぬのだ。諦めたのだろう。
「頂きます」
起き上がり寝癖がないか手で確認する。とりあえずは無さそうなので扉を開けた。
立っていたのはどこか青年に似たロマンスグレーの執事だ。
食事はかなり豪華だった、最後だからかもしれない。一口サイズのステーキにジャガイモのスープ。カレーとカツ丼だ。凄く庶民的なメニューが庶民的ではない量で並ぶ。
ステーキは口に入れるととろりと溶けてしまい直ぐに無くなってしまった。
ジャガイモのスープはゴロっと入ったジャガイモがホクホクでスープにもジャガイモの旨味が溶け出ていて美味しい。
カレーはフレイヤ祭の時よりも少し辛めの味付けだがバターとチーズが入り辛さを中和してくれているだけでなくコクががプラスされていた。
カツ丼は衣がサクサクで一口噛む度に肉汁がブシュッブシュッと飛び出てなんとも幸せな味だ。ご飯に掛けられているタレも甘辛くご飯によく合う。全てあっという間に食べきってしまった。カツ丼に至ってはタレをなめたいがそこまでするのははしたないので理性の力で我慢した。
「とても美味しかったです」
「それは良かった。まだありますがどういたしますか」
「動けなくなりそうなので遠慮しておきます」
今すぐ寝たい気分だが仕方がない。水を流し込み席を立ち上がった。
ドンッ
カタカタカタカタカタ
食器が揺れる。
地震だ。
もしや、と思い窓から外をみると赤い手が出てきていた。ここからでもわかるほどの大きさだ。
シュトロフ様がやってくる。
「司くん」
「はい」
僕は覚悟を決めて答えた。
「既に街壁から魔法部隊が攻撃を行っている。司くんも準備して行ってくれ」
「わかりました」
僕が特に準備するものはない。屋敷を出て走って街壁に向かう。
街壁に付くと既にスルトの全身は見えていた。黒い剣を持ち全身に炎を纏った、あれは魔人だ。
「北條くん、来てくれたか。奴の弱点は恐らく水だ水魔法を頼む」
僕は頷くと蔵から証の杖を取りだし構える。いつもはこれを使うと威力が高くなりすぎるので使わないが今回は問題ない。全力前回で放つ。
(水?いや水だとあまり高温に蒸発してしまうだろう。なら)
特大の岩を生み出し回転をかけるとスルトにぶちかます。
【岩槍弾】
全力前回で作った岩槍弾は狙い違わずスルトの頭に当たる。
「んな!?」
頭に風穴が空きそのまま飛んで言った。
「あの手の魔物は肉体がない、核は移動してどこにあるかわからないし上に核の周りはヒイイロカネやオリハルコンを凌駕する、だから魔力を削ぐんだ。そうすればいつか死ぬ」
たしかにそうゆうことならいつか死ぬだろう。しかしそれではこの街は守れない。
【水球】
凍らない凝固点ギリギリ程度に冷やした直径100メートル程の水球を作る。それをスルト向けて放つ。
バッン
あまりの高熱と水がぶつかり爆発が起こった。更にその水蒸気を利用して魔法を放つ。
【絶対零度領域】
一瞬にしてスルトが氷付けにされた。
「うぉぉぉ!!行けるぞ!!!」
そんな、声がどこかで上がる。一気に周りの士気が上がった。しかし、直ぐに氷がスルトの炎によって溶かされ出てくる。
そしてスルトが持っている炎の剣をひと振りする。するとその剣線に沿って炎の波が押し寄せてきた。
それは一瞬にしてして目の前に到達する。
【蔵】
扉を開けて中に入る。直後辺りを炎が埋め尽くした。蔵は僕以外の人、生物、魔法を通さない。たがら僕は助かった。炎の波が止んで外に出る。
「あぁぁ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
辺りには焼け焦げた人が広がっていた。まだ息はしていても既にもう助からないのではという人で溢れ帰っている。
足が動かない、体がいうことをきいてくれないのだ。人の焼ける臭いが鼻につく。
「ウェェェ、ブフォッ、グェッグエッ」
口のなかが酸っぱい。
鼻がツンとする。
地面が僕の嘔吐物で溢れた。
目の奥から涙があふれる。
(逃げなきゃ、逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ)
どこか遠くへ、足が動かないので腕を使ってほふく前進で進む。
後ろを振り替えるとまたスルトがさっきの攻撃を放とうとしている。
【ぐらぁぁ《蔵》】
扉を開け中に逃げ込む。街に火がついた。それを必死に消している。人がいる。屋敷の方に目をやった。何人かが火が着いたなにかを必死に消そうとしている。僕はそれをみて気がついた。あれは鶏達の小屋だ。火を必死に消そうとしてくれている。
心の中に何かが生まれた気がした。
「今だ、攻撃再開!少しでも進ませるな!援軍が来るまで耐えろ!!」
そんな声が聞こえた。
目を向けると階段から人が現れて必死に魔法を放っている。
皆自分達の街を護るために必死なのだ。
(そうだよ、皆街が大切なんだ。怖いはずなのに必死に戦ってるんだ。少しでも勝てる可能性を残すために)
「やるしかないか、どうせ死ぬかもしれないんだ。やれるだけやってやろう」
恐怖を乗り越えて蔵から刀を持ち出す。
「第2ラウンド開始だ!僕はもう逃げない」
「結構スッキリしたな」
家のなかはまさにもぬけの殻だ。鶏達を箱に乗せると街まで走り出した。
屋敷に着くと庭の一角にコンクリート製の小屋を作らせてもらった。コンクリートにしたのはなるべく音が漏れないようにするためだ。作業が終わるとシュトロフ様がやって来た。
「すまなかった」
「いえあそこにいれば全て壊されていたでしょう、それに鶏達まで、ほんとうにありがとうございます」
「司くんお願いがある。君にも戦って貰いたい、今この街を護るには君の力が必要なんだ」
そうお願いするシュトロフ様の瞳には必死さが見えた。僕が考えているようにみえたのだろう。さらには土下座までしようとし初めた。
「そんな、やめてください。もちろん僕も戦いますよ。僕にだって守りたいものはありますから」
男がしかも一領を任される領主が土下座までしようとしたのだ。無理ですと言って逃げるのは簡単だ、実際僕だけなら今すぐいけば恐らくかなり遠くまで逃げられるだろう。それでもだ、ここで断るのはあまりにも恥ずかしい事に思える。それにどこが安全かなんてわからないし。
「そうか、ありがとう。本当にありがとう。無事護り通せたら出来る限りの礼をしよう」
そう言って戻って行こうとした。しかし、上を向いて動かない。
僕もシュトロフ様がみている東の空を見上げる。
「んな!?」
そこには黒い壁があったのだ。見つけたのは今朝だ。それがあんなに、既に3、40メートルはあるのではと思われる高さにまで成長していた。このペースだと明日の朝には奴が現れてしまうだろう。
「急がなければならないな。司くん、疲れているだろう今の内に休んでくるといい」
「そうさせてもらいます」
正直今も辛いのだ。素直に用意された部屋に行く。身体強化五重掛けはするべきではなかったかもしれない。
どれ程寝ていただろうか、目を覚ますと外が騒がしかった。窓から外をみる。
外は夜になっており真っ暗だった。しかしその中に一つ際立って黒い物体が浮かんでいる。
「まだ出てはいないか」
 
まだ出現していないみたいだったが黒い物体はすでに100メートルはあるのでは、というほど大きくなっていた。
正直また辛いので素直に休む。やばくなったら呼ばれるだろう。
「北條様、お食事のご用意ができましたがいかがいたしますか」
腹の虫が鳴いた。
こんな時まで仕事とは、いやこんなときだからか、どうあがいても死ぬときは死ぬのだ。諦めたのだろう。
「頂きます」
起き上がり寝癖がないか手で確認する。とりあえずは無さそうなので扉を開けた。
立っていたのはどこか青年に似たロマンスグレーの執事だ。
食事はかなり豪華だった、最後だからかもしれない。一口サイズのステーキにジャガイモのスープ。カレーとカツ丼だ。凄く庶民的なメニューが庶民的ではない量で並ぶ。
ステーキは口に入れるととろりと溶けてしまい直ぐに無くなってしまった。
ジャガイモのスープはゴロっと入ったジャガイモがホクホクでスープにもジャガイモの旨味が溶け出ていて美味しい。
カレーはフレイヤ祭の時よりも少し辛めの味付けだがバターとチーズが入り辛さを中和してくれているだけでなくコクががプラスされていた。
カツ丼は衣がサクサクで一口噛む度に肉汁がブシュッブシュッと飛び出てなんとも幸せな味だ。ご飯に掛けられているタレも甘辛くご飯によく合う。全てあっという間に食べきってしまった。カツ丼に至ってはタレをなめたいがそこまでするのははしたないので理性の力で我慢した。
「とても美味しかったです」
「それは良かった。まだありますがどういたしますか」
「動けなくなりそうなので遠慮しておきます」
今すぐ寝たい気分だが仕方がない。水を流し込み席を立ち上がった。
ドンッ
カタカタカタカタカタ
食器が揺れる。
地震だ。
もしや、と思い窓から外をみると赤い手が出てきていた。ここからでもわかるほどの大きさだ。
シュトロフ様がやってくる。
「司くん」
「はい」
僕は覚悟を決めて答えた。
「既に街壁から魔法部隊が攻撃を行っている。司くんも準備して行ってくれ」
「わかりました」
僕が特に準備するものはない。屋敷を出て走って街壁に向かう。
街壁に付くと既にスルトの全身は見えていた。黒い剣を持ち全身に炎を纏った、あれは魔人だ。
「北條くん、来てくれたか。奴の弱点は恐らく水だ水魔法を頼む」
僕は頷くと蔵から証の杖を取りだし構える。いつもはこれを使うと威力が高くなりすぎるので使わないが今回は問題ない。全力前回で放つ。
(水?いや水だとあまり高温に蒸発してしまうだろう。なら)
特大の岩を生み出し回転をかけるとスルトにぶちかます。
【岩槍弾】
全力前回で作った岩槍弾は狙い違わずスルトの頭に当たる。
「んな!?」
頭に風穴が空きそのまま飛んで言った。
「あの手の魔物は肉体がない、核は移動してどこにあるかわからないし上に核の周りはヒイイロカネやオリハルコンを凌駕する、だから魔力を削ぐんだ。そうすればいつか死ぬ」
たしかにそうゆうことならいつか死ぬだろう。しかしそれではこの街は守れない。
【水球】
凍らない凝固点ギリギリ程度に冷やした直径100メートル程の水球を作る。それをスルト向けて放つ。
バッン
あまりの高熱と水がぶつかり爆発が起こった。更にその水蒸気を利用して魔法を放つ。
【絶対零度領域】
一瞬にしてスルトが氷付けにされた。
「うぉぉぉ!!行けるぞ!!!」
そんな、声がどこかで上がる。一気に周りの士気が上がった。しかし、直ぐに氷がスルトの炎によって溶かされ出てくる。
そしてスルトが持っている炎の剣をひと振りする。するとその剣線に沿って炎の波が押し寄せてきた。
それは一瞬にしてして目の前に到達する。
【蔵】
扉を開けて中に入る。直後辺りを炎が埋め尽くした。蔵は僕以外の人、生物、魔法を通さない。たがら僕は助かった。炎の波が止んで外に出る。
「あぁぁ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
辺りには焼け焦げた人が広がっていた。まだ息はしていても既にもう助からないのではという人で溢れ帰っている。
足が動かない、体がいうことをきいてくれないのだ。人の焼ける臭いが鼻につく。
「ウェェェ、ブフォッ、グェッグエッ」
口のなかが酸っぱい。
鼻がツンとする。
地面が僕の嘔吐物で溢れた。
目の奥から涙があふれる。
(逃げなきゃ、逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ)
どこか遠くへ、足が動かないので腕を使ってほふく前進で進む。
後ろを振り替えるとまたスルトがさっきの攻撃を放とうとしている。
【ぐらぁぁ《蔵》】
扉を開け中に逃げ込む。街に火がついた。それを必死に消している。人がいる。屋敷の方に目をやった。何人かが火が着いたなにかを必死に消そうとしている。僕はそれをみて気がついた。あれは鶏達の小屋だ。火を必死に消そうとしてくれている。
心の中に何かが生まれた気がした。
「今だ、攻撃再開!少しでも進ませるな!援軍が来るまで耐えろ!!」
そんな声が聞こえた。
目を向けると階段から人が現れて必死に魔法を放っている。
皆自分達の街を護るために必死なのだ。
(そうだよ、皆街が大切なんだ。怖いはずなのに必死に戦ってるんだ。少しでも勝てる可能性を残すために)
「やるしかないか、どうせ死ぬかもしれないんだ。やれるだけやってやろう」
恐怖を乗り越えて蔵から刀を持ち出す。
「第2ラウンド開始だ!僕はもう逃げない」
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