ドラゴンテイマーになった僕は鶏を育てて暮らす。

ノベルバユーザー313493

11話 僕とシチューとステータス

 村の入り口には男の人が二人待機していた。恐らく見張りだろう。


 「こんにちは」


 「こんにちは、珍しいね。こんな村に何のようだ」


 無精髭を生やしたまだ若い、恐らく同い年くらいの人が話しかけてきた。


 「僕、そこの森の中に住んでるんですけど、一人だと淋しくてそれで観光に来たんですよ」


 「なるほど、たしかに一人は淋しいな。でもこの村には観光できるような物なんかないけぞ?」


 「それでもいいんですよ」


 「そうかい、それなら思う存分見ていってくれ」


 お辞儀をして門を潜ると村に入る。麦畑にトマト、きゅうり、カボチャにキャベツ色々な野菜の畑があった。そうこの世界には時期というものがないらしく、トマトでもなんでもいつでも取れるのだ。だから食料に困ることはない。
 牧場の前を通るとき一人のおばさんに出会った。


 「おや、みたことない顔だね」


 「そこの森に住んでる北條司っていいます」


 「私はそこの牧場で牛を育ててるメラってんだ宜しくね」


 牛か~やばいすき焼きが食べたくなってきた。


 「そうだ、ミルクって売ってますか?」


 「ミルク?そんなもんどうするんだい?」


 「飲むんですよ」


 「お前さんがか?変な人だね。まぁあるよ、そうだね1リットル250クルシェンでどうだい」


 「わかりました。じゃあ4リットル分お願いします」


 「はいよ」


 そういうと奥へと入っていき樽に4リットル分、入れて持ってきた。樽と引き換えに1000クルシェン渡す。と蔵にしまった。


 「へぇ~あんたまほうが使えるのか、もしかして偉い人だったりしたかい?」


 偉い人?たしかにココナは有名人だしお父さんら領主だから、その弟子の僕はもしかしたら偉いのかもしれない。


 「たぶんそんなことないですよ、それに今のはスキルです。魔法も使えますけど」


 「なるほどね、まぁあたしにはよくわからないんだけどね。じゃまたね。またあったら声でもかけてくれ」


 そういうと笑いながらどこかへ行ってしまった。さらに村を歩いていると中央に噴水があった。しかもこれだけ街にあっても不思議でないくらいの豪華な彫刻が施されていた。


 「凄い。いいものがあるじゃん」


 蔵から椅子を取りだし腰かけるとボーっとした。ぴちゃぴちゃという水の音に耳を傾け目を閉じる。水の音を聴いていると心から穢れが漱がれていくように感じられる。


 「おい、あんた、おい」


 重たいまぶたを開けると入り口でみた人がいた。


 「お、やっと起きた。まさかこんなところで寝てるとは思わなかったわもう暗いけどどうする?なんなら家に泊まってくか」


 「いや、大丈夫です。起こしてくれてありがとうございました」


 「どういたしまして、俺はこの村の村長の息子でハイズっていう。なんかあったら言ってくれよ」


 「ありがとうございます。僕はそこのトト森に住んでる北條司です。よろしくお願いします」


 お辞儀をすると入り口から村を出る。火は危ないので【照明ライト】を使い身体強化を施して家へ向かった。家に着くと取り敢えず風呂に入りご飯を食べる。
 まさか牛乳が手に入るとは思わなかった。これでシチューが作れる。あとチーズも。チーズはこの世界にはないみたいだったからもっと牛乳が手に入ったら沢山作って売ってもいいかもしれない。


 コトコトコト


 次の日、早速シチュー作りにでた。ジャガイモに人参はある、玉ねぎは街で買ってきた。この前作った煮物と玉ねぎを炒めて水分を抜く。バターとニンニクを入れた鍋に炒めたジャガイモと人参、玉ねぎをいれ牛乳を投入。確りと煮込むある程度火が通ったところで火を弱くしてじっくりと煮込む。その間にダイヤモンドを作る。モルタルを塗っているときは作れなかったのでまだ50個しかない。18万個への道はまだまだ遠い。


 「できたかな」


 蓋を開けて中をひとまわしすると少し舐めてみた。


 「うぉ~シチューだー!!肉がないけどー」


 シューチューはご飯にかける派とそのまま派とがいると思うが、僕はそのまま派だ。シチューをかけるのは悪くはないとおもうが、どうもカレーライスと混同しているように思えてしまうのだ。カレーはご飯と共に食べることで完成するがシチューはそれ単体で完成している。つまりご飯を合わせるのは邪道だと思うのだ。


 と、まぁそんな事はどうでもいいのだが。取り敢えずシチューは旨かった。
 風呂に入ってふと手の甲をみてみる。職業にはレベルが存在しそのレベルによってスキルを得られたりステータスが上昇したりする。現在僕の職業レベルは36と出ている。本によるとレベル50になると職業が変化するらしいが、実際にレベルが50になったのは過去2人程しか記録にない。


 「これほんとどうゆう仕組みなんだろう」


 まぁいいか。考えてもわからないし。ちなみにこの前調べてみて現在のステータスはこんな感じだった。


 北條司


 職業
 ドラゴンテイマーLV36


 体力460(+160)
 魔力1670(-470)
 筋力620(+80)
 視力3.4
 瞬発力920(+480)


 固有スキル
 ・蔵
 ・自動回復オートリジェネ


 スキル
 ・身体強化
 ・副業


 ()は職業LVに応じた+-値だ。


 たった5ヶ月ちょっとでこれだけステータスは上がるものなのかと疑問にも思うが、ココナ曰くこれだけ高ければ王帝直属近衛騎士団に入れるらしい。
 これは二週間程前の記録なので今はどうかわからないがこんなもんということだ。


 それから約1ヶ月経ち、納品の2日前になった。現在卵は750個予定より150個も少ない。


 「ここは素直に謝るしかないか」


 領民証に手紙、卵を持ったことを確認すると家をでた。街までは1日だ。身体強化を施して走る。途中トライアイウルフと遭遇したので【氷針弾アイスニードルブリッド】で無力化し、蔵にしまった。これでまた素材が売れる。そして日が暮れて少ししたところで街に着いた。


 「こんばんは」


 「おや、司さん。久しぶりです」


 「久しぶりです」


 領民証をだして取り敢えず通してもらう。


 「そうだ!スクランブルエッグ、美味しかったですよ!!!あれ1日で売り切れて今や幻の料理になってますからね。今回は卵の納品ですか?」


 「はい、そうですけどなぜ?」


 「ココナに食べたか聞いたら司さんが卵を作ってるって言ってたんですよ!」


 「なるほど、そしたら明日のお昼か明後日にはメニューに並ぶと思いますよ」


 「それは楽しみだ!そうだ、父が依頼を出しているんだとか、確か手紙を出すんだったよね!私が渡しておくよ!!」


 それは助かる。蔵をだして手紙を預ける。


 「じゃあ明日の昼くらいに組合に行ってくれれば報酬が受け取れると思うから」


 「ありがとうございます」


 お礼をいうと別れて宿に向かった。さすがにこんなに暗くなってから家に行くのは迷惑だろう。僕はお財布が心もとない事もあり、一泊3000クルシェンのカプセルホテルのような所に泊まった。
 

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