ドラゴンテイマーになった僕は鶏を育てて暮らす。

ノベルバユーザー313493

1話 僕と小さなドラゴン(鶏)

 目を開ける。


 一面暗闇におおわれている。しかしさっきいた場所のように真っ暗というわけではない。
 どうやらここは森の中のようだ。とは言っても僕の周りはログハウスを中心として少しばかり開けていた。


 「どうやら無事転生したみたいだな」


 自分の体をペタペタ触ってみる。


 「ん~、転生の割には前と姿が全く変わってないように思うんだけど、これってむしろ転移なんじゃ?」


 いくつか疑問に思うこともあったがとりあえず我が家に入る。家に入るとテーブルに灯りが灯されていた。僕は部屋の横に幾つかの扉を確認するとその中の一つを開ける。中は真っ暗だったが、ベッドのような物を確認すると壁に手を当て一歩一歩確かめるように部屋を歩く。どうやらベッドで間違いないらしい。僕はそのまま身を傾けるとベッドにダイブした。


 「おやすみなさい」




 「#@#」


 コーッケコッコー


 鶏のような鳴き声に目を覚ます。窓から外を見ると少しずつ明るくなり始めていた。僕はリビングに行くと椅子に座り昨日渡された紙に目をやった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ・身体強化:MPを消費することにより一定時間全ての能力を2倍に引き上げる。レベルの上昇で消費MPを抑える事ができる。


 ・家:転生時、転生者の半径50センチ以内に家を設置できる。


 ・エルフの秘薬:瀕死の物を回復させられる。


 ・風邪薬:どこにでも売ってる普通の薬。


 ・養鶏について:養鶏を始める若者へ送る超超素晴らしい本。


 ・職業セット:その人の職業に必要な物を全て揃えた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 なるほど、少し気になる表記もあるがつまりテーブルの上に乗っているのがそれと、テーブルの上には確かに瓶に入った液体と、バファ○ンと書かれた薬箱、日本語で養鶏についてと書かれた本がおいてあった。まぁこれは要らないだろうけど他の物はなかなか有用だ。椅子から立ち上がると部屋の中をぐるっと扉を開けて周った。寝室が三部屋に何も置いてない部屋が一つあった。リビングの土間には鍋と包丁があるだけだ。
 お腹が空いたのでとりあえず家を出る。幸い家の周りは森なので何かしらあるだろう。


 コケッコー


 うるさいな、そう思い声のした方に行く。家の裏の方だ。そこに行くとなんと鶏舎があった。


 目を擦ってみる。


 やっぱり鶏舎がある。何故だ?鶏舎なんてあの紙には一言も欠いてなかったぞ?鶏舎の横には少し大きめの倉庫もあった。そこには恐らく餌だろう、が入った麻袋が12と、牧場なんかで見る巻かれた藁が20、斧と鍬と三又の鍬のようなものがあった。鶏舎に入ると白い鶏が10羽いた。さらに樽の上に紙が置いてある。


 「私だよー、君は多分勘違いしてるだろうから教えてあげるけどその世界でのドラゴンは鶏の事だから。まぁ頑張ってね~」


 (・・・)


 「はぁ~!!!!なんじゃそりゃ!?」


 えっ?つまりドラゴンテイマーって鶏テイマーってこと!?


 嘘だろ


 僕の夢の僕TUEEE生活が


















 「ん、まぁ仕方がない。もとからドラゴンテイマーなんて仕事はなかったんだ。そうだ、そうなんだ」


 僕はさっさと切り替えるとその倉庫から麻袋を持ってくる。中をみてみるとやはり麦やトウモロコシのような穀物だった。それを鶏舎の中にあった木箱に入れる。すると鶏がよってきて嘴をツンツンと餌に差し入れする。


 「沢山食べるんだぞ~」


 餌やりを終えると鍬を持って家の前に行く。


 「ここら辺でいいかな」


 家の横に行くと鍬を勢いよく振り下ろす。鍬をあげてはまた振り下ろす。それを何度か繰り返すと早々に息が上がってしまった。


 (つかれたな)


 少し腰の痛みを感じ始めたそのとき、あることを思い出した。


 【身体強化】


 このスキルを使えば少しは楽になるのではないだろうか。そう思うもすぐに問題に気がついた。そもそもスキルってどうやって使うのかという重大な問題に、そこでとりあえず心の中で身体強化と唱えてみる。特に何も変わった感じはしなかったがとりあえず鍬を降ってみる。


 (ん!?)


 さっきまでと同じように振り下ろすと、ブッンという音を立てて地面に突き刺さった。


 「ふぇ!?」


 どうやら成功したらしい。さっきよりも深く突き刺さった。鍬を引き抜くと今度はさっきの半分くらいの力で耕す。暫く経つと鶏舎と同じくらい、約100坪程度の範囲を耕せてしまった。倉庫に行くと麻袋を2つ持って出る。
 さっき確認したのだが、12袋あった麻袋の内の2つは米とジャガイモだった。米は育てたことがないが、ジャガイモはある。とりあえず家から包丁を持ってくると麻袋一杯のジャガイモの中から幾つか取り出すと半分に切る。本当は石灰を付けて数日干すのだが石灰はなかったの断面を下に埋める。だいたい四分の一ほど植えると倉庫にあったブロックを持ってきて残りの部分を囲うその内側に米を筋撒きする。よく分からないがこんなもんだろう。
 気がつくと日がだいぶ高くなっていた。僕は袋からジャガイモを数個取り出すと土間に行く。わざわざ食べ物を探しに行かなくてもこれを食べればいい、そう思い鍋を出したところで気がついた。


 ガスと水ない・・・




 ・:・


 僕は現在大きな樽を持って森の中を歩いている。中には水が並々と入っている。さっき家から30分ほど行ったところで小川を見つけたのだ。現在帰宅中である。家に着くと真っ先にタンクに水を入れる。余った水は畑に撒いた。
 家の扉の横にある薪を3つ4つとると部屋に入り釜の中に入れる。火打ち石があったのでやってみるがもちろん点くわけがない。使ったことがないんだから当たり前だ。森に入ると木の棒を持ってきて薪にあてる。薪を足で抑えると木の棒を薪にグリグリと押し当てた。少し凹んだ、そこに棒をあて身体強化を発動する両手で棒を挟むとくるくる回す。暫くすると煙が上がり始めた。


 「よし!」


 そのまま続けて回すとぽっと火がついた。さらにそこに息を少し吹き掛けて火を強くする。火が少し強くなった所で釜戸に入れた。後はほっといてもそのうち広がるだろう。タンクの詮を回して水を鍋に少しだけ入れる。次にジャガイモの土をよく洗って落とすとそれを鍋の中に入れた。準備が終わる頃にはいい感じに火が強くなっていたので鍋を火にかける。ジャガイモを蒸している間に外に出ると出しっぱなしにしていた袋を倉庫に戻す。


 (そういえば蔵なんてスキルもあったな)


 すっかり忘れていたが、何でも収納できるアイテムボックスみたいなやつだった気がする。
 とりあえず心の中で蔵と唱える。すると目の前に高さ10メートルほどの大きな扉が出現した。


 「でかすぎだろ・・・」


 そうつぶやくとみるみる内に小さくなり僕がやっと入れる程度の大きさに変わった。どうやら扉の大きさは変えられるらしい。扉をスライドさせると中は真っ暗闇だった。どこまでも続いているようにも見えるし、目の前までしかないようにも見える。不思議な場所だ。これが認識できる範囲ということなんだろう。とりあえず袋を中に入れると扉を閉める。すると陽炎のようにゆらゆらと揺れて消えてしまった。


 (なんか焦げ臭くね?)


 慌てて家に入ると案の定、ジャガイモはまる焦げだった。これが僕の異世界生活最初の食事。


 名付けて『ジャガイモの焦げ焦げ焼きだ!』











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