スキル盗んで何が悪い!

大都督

第17話


 必要な物を街で買い、用事も終えて教会の方へと帰宅する事にした二人。
 教会の前ではエベラが掃除をしていた。


「エベラ〜、ただいまニャ」

「戻りました」

「おかえり、二人とも。今日は早かったわね?」

「今日はギルドとミツの装備を見に店を回っただけニャ。これはお土産ニャ」

「何かしら? まぁまぁ〜こんなにお肉を、ありがとうねプルン」

「エヘへ」

 肉屋で購入した肉の細切れをを渡すとエベラはとても喜んでいた。
 やはり子供達を思うと食料は嬉しいのだろう。


「あら、これは?」

「あっ、それは自分が防具店で買った時に渡された宣伝用の板です」

「格闘大会のお知らせニャ、なんの腹の足しにもならないニャよ」

「あらあら、もうそんな時期なのね。今年も賑わうでしょうね」

「ムサイオッサン達が殴り合うだけニャ」

「まぁプルンったら。でもそうね、賞品が凄いから皆必死になってるものね」

「ん?」

「へー、賞品出るんですね」

 賞品という言葉に反応してしまった、プルンもその事は知らなかったのだろう。


「ちなみに何が出るニャ?」

「えーと、上位三位以内に入れば賞品があるみたいね」

「三位が〔治力の盃〕」

「盃って何ニャ?」

「お椀みたいな奴だよ」

 名前からして何かを治すのかな?


(ユイシス、治力の盃ってなに?)

《治力の盃。中に水を注ぐと治療薬に変わります。入れた対象者の魔力に応じて中身の効力が変わる効果があります》

(中身の効力が変わる?)

《魔法使い等の魔力を持つ者がこれを使用すると、その魔力量によって水が回復ポーションになります。逆に剣士や魔力が無い者が使用すると状態異常回復薬が作れます》

(へー、意外と便利かも。ちなみに自分とプルンが使うとどうなるの?)

《ミツは魔力を持ってますので回復ポーションへと変わります。反対にプルンは魔力はありませんので水は状態異常回復薬となります》

 これはパーティーに支援の人がいないパーティー用だろうな、ヒールやキュアクリアも使えるから自分は欲しいとまでは思わない。


「二位が賞金の金貨100枚と〔瞬速の足枷〕ね」

「物はともかく、賞金がつくニャ!」

「瞬速なのに足枷って、矛盾した名前だね」

(これは?)

《瞬速の足枷。装備した対象の移動速度の増加の効果を出すことができます》

(足枷なのに何で早く走れるようになるんだろう……)

《足枷と言っても鎖では繋がってません、足に付けるリング上の物です》

 スキルの〈速度増加〉が使える自分にはそこまで魅力は感じないかな。


「一位賞金の金貨300枚と〔天使の腕輪〕」

「ニャー、これはヤバイニャ!」

「凄い金額だね。アイテムも天使って言うくらいだから祝福ありそうだね」

《天使の腕輪。装備した人の全てのステータスを20パーセント上昇させる効果を持ってます》

(ステータス20パーセント上昇! これは普通に欲しい……。今はステータスはそれ程高くはないけど、将来ステータスは上がると思うし20パーセントはでかい……)

《天使の腕輪の他に、ネックレス、指輪、イヤリング、シューズと全5種類あります、効果は全て同じですが、すべてを装備するとステータス上昇率が上がります》

 天使シリーズみたいな物だろうか。
 効果は一つ一つが魅力的だな、全て集めるのは無理でも一個は狙ってみよう。


「参加賞もあるみたいよ」

「何ニャ何ニャ!」

「酒場のエール1杯無料券」

「「いらないー」ニャ」

「ウフフ、そうね、あなた達には残念賞ね」

「プルンどうする出場してみる?」

「無理ニャ、どうせ出るのは、冒険者で言うシルバーランクやグラスランクの強者ニャ」

「そうだね……」

(やっぱりそうだよね、町内イベントみたいな小規模なら参加する人も少ないだろうけど、この街以外と大きそうだしな、参加人数も多くなりそう)

 出場者は国から集められた強者や武士ばかりだろう、参加者も多いから予選もあるだろうし今回は見送ると思う。


「でもどんな奴がいるか気になるから見に行くニャ!」

「そうだね、戦いの勉強にもなるかもね」

「ネーネ、おかえり〜」

「おぉ、ただいまニャ。今日のご飯はお肉ニャ! いっぱい食べるニャ」

「うん! お肉大好き!」

「さぁ、ご飯の準備をしましょう、ミツさんもどうぞ」

「良いんですか?」

「いいニャ、いいニャ、ミツのおかげで買えたような物ニャ」

「じゃ、頂きます」


 その夜、楽しい食事を終えて部屋へと戻る。
 昨日から始めたスキルのレベルアップ作業、昨日はMP使い切るところまでやってヒールがレベルアップできた、今日の訓練もヒールにしとこう。戦闘で回復は必需品だからね、目標はレベル5かな。

「よし、始めるか……。ヒール、ヒール、ヒール……」

 レベルは上がらなかった、昨日上がったばかりなのでそんな気はしていた。
 最後のMPを使って自分へのご褒美にアイテムボックスから飲み物でも取り寄せるかね。

「今日はコーラにしよう。前世では30代に入って全然飲まなくなったし。若い体が炭酸を欲してるぜ!」

 アイテムボックスから出した飲み物は程よく冷え、周りには水滴がついていた。

キンキンに冷えてやがる…あ、ありがてぇっ…涙が出る訳でもないけど…犯罪的だ…うますぎる…
染みこんできやがる…体に…ぐっ…溶けそうだ…
本当にやりかねない…コーラ一本の為に…
スキル盗みだって……もうやってるけど…

 前世では下戸だったためにお酒は飲めなかった。
 飲み会でもジュースかお茶の自分、この体だとどうなんだろう、飲めるかな?



 次の日

 プルンと冒険者ギルドへと次の依頼を受けにやってきた。


「これなんかいいニャ!」

「なに?」

「スヤン魚十匹納品ニャ」

「スヤン魚? なにそれ」

「この時期に釣れる魚ニャ。余ったら晩飯にするニャ」

「それって結構釣れる物なの?」

「運が良ければ夕方までには終るニャ」

「じゃ、二人分頼んどこうか」

「おっ! 勝負するニャ! シュッシュッ!」

 釣りなのにシャドーのワンツーを始めるプルン、そんな彼女をスルーして受付に依頼を提示した。


「これお願いします」

「はい、こちらですね。依頼中にスヤン魚を狙って獣も出てくるかもしれませんから注意してくださいね」

「ニャハハハ! 釣った魚を取られたら間抜けニャ」

「「……」」

「何ニャ?」

「プルン、フラグ出すね」

「オチが見えそうね……」

「ニャ? ニャ?」


∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴


 ライアングルの街から南へ馬車で移動のうち、バーチス川と言う名の川に場所についた。
 川の反対側には小さな村があり、そこの村人も子供連れやお爺さんがスヤン魚釣り用に釣り竿やエサを売りに来ている。
 一種のイベント会場みたいな感じだ。


「ふ〜、馬車移動もけっこう疲れるね」

「流石にお尻が痛いニャ」

「へ〜」

 そう言ってプルンのお尻を撫でている方を見たら、バっと! 両手で隠されてしまった。
 別に邪な気持ちでお尻を見てたわけじゃないよ。
 心配して見てただけなのにホントダヨ。

「結構人がいるね」

「ウチのお尻じゃなくてあっちを見るニャ。あそこのチーム魔法で使ってるニャ!」

「いや、だから……ま〜いいや。ホントだね、氷の魔法で囲って捕まえてるんだ」

 追い編みの要領で捕まえてるのか、あれなら魚も傷が少なくて良品として受け取ってもらえるんだろうな。

「頭いいニャ……」

「魔法だから簡単に消せる分、他の人に迷惑かけてないチームだね」

「あんな方法がありニャらリッコ連れてくれば良かったニャ!」

「リッコって氷の魔法使えないでしょ? 自分らはのんびり釣ろうよ」

「うっ……。確かにニードルじゃ魚が潰れるニャ、仕方ないニャ」

「しかし、凄い量だな、目に見えて何処にでもいるんだな、これなら坊主で終わることも無いだろう」

 川の方へと目をやると、手づかみでも取れそうな程の魚の数。
 川底の深い所には魚群も見える。
 周りの釣りをしてる人を見ても、魚カゴには数匹の魚が必ず入っていた。


「釣れたニャ!」

「何! 早い!」

 プルンの一匹目はカツオの一本釣り並に早かった。
 これは糸を入れたら釣れる釣り堀状態なのではないか?

「ニャハハハハ! どうしたニャ、ミツ早く釣らないとウチ終わっちゃうニャよ」

「わかってるよ」

 焦る必要はない、時間も魚も余裕なんだから。
 そう思いながら自分は第一投を投げ入れた!



 10分後……



「何故……釣れない……」

「10匹目ニャ!」

「っく」

「あれあれ〜? どうしたニャ〜、素振りの練習かニャ〜? ウチこれで依頼分終わっちゃったニャよ〜」

 プルンは挑発スキルでも持ってるんじゃないかと思わせる奴だな。


「っく! 場所が悪い! 向こうで釣ってくる!」

「ニャハハハ、頑張るニャ〜」

「その笑いをギャフンに変えてやる!」

「ウチのカゴがいっぱいになったらミツの空のカゴと交換してくれニャ〜」

 聞こえない〜聞こえない〜、空のカゴなんてありませんよ〜。

 釣り場を変えるために上流へ移動。
 人は少なくなったけどその場で釣ってる人のカゴには魚がいる、皆釣れてるから良い場所なんだろう。

「ここなら……んっ?」

 ドテッ!

 足場の苔に足を滑らせたのだろうか? 五歳くらいの男の子が大きく転んでいた。

「はぅ……」

「坊や大丈夫かい?」

「……うん、大丈夫だよ」

「ボッチャま!」

「あっ、じ〜や」

 ボッチャまと呼びながら駆け寄ってきた白髪の執事服を着た品のある人が来た。
 爺や? この子何処かのお坊ちゃんだったのだろうか。

「ボッチャまお怪我はございませんか!」

「ん〜、平気だよ、ちょっと転んだだけ」

 男の子が擦りむいた足をこちらに向けて見せて着た、血は滲んでるが男の子の言うとおりかすり傷程度だと思う。


「ヌォォォおお! ボッ、ボッチャまの体にキズ! 早く治療術士に治させましょう!」

 品のある人と言う発言は撤回しとこう。
 熱い……いや暑い人だ。


「大丈夫だよこれぐらい?」

「なりませぬ! ボッチャまに傷がついてしまっている! これは私の不始末でございます!」

 爺やさん、子供の方が怪我したのになんであなたがそこまで泣くかな……。


「あっ、あの〜。その傷自分が治しましょうか?」

「なっ! 青年、君は治療術が使えるのですか! ならばお願いします! ボッチャまを! ボッチャまをこの痛みの苦しみから解き放ってやって下され! ボッチャまオオオおお!」

「は……はい、わかりました、直ぐ治しますから」

 わかったから、肩を掴んで揺らすのは止めてください。


「治る?」

「動かないでね、ヒール」

 この子ホント全然泣かない子だな?
 男の子はこちらに足を向け、ジッと怪我が治っていくのを見つめていた。


「治った! じ〜や、僕の足治ったよ!」

「ヌォォォおお! ボッチャま! 良かった良かった! ボッチャまの体に傷が残らず本当に良かった!」

「お兄ちゃんありがとね」

「青年ありがとうございます! 心よりお礼申し上げます。これは治療費として是非お受取りください」

 執事の爺やさんは懐から金貨数枚を出し、自分の手に差し出してきた。

「いえ、気にしないでください」

「ボッチャまの傷を治していただいたのにお礼ができないのは、我がフロールス家の名誉に関わります。何卒お受け取り下さい」

「フロールス家、貴族様ですか?」

「これはこれは、ご挨拶もせずに失礼いたしました」

 気づいたかのようにこちらに深々と頭を下げ
自己紹介始めた執事の爺やさん。


「こちらのボッチャまは近くにございます、ライアングルの街を納めております。領主フロールス伯爵家の次男様のロキア・フロールス様で御座います。そして私がそこの執事長を詰めとさせて頂いておりますゼクスと申します」

「はじめまして、ロキアです」

 ゼクスの自己紹介に続いてロキアがゆっくりと自己紹介してくれた。
 初々しい挨拶は可愛らしい物だ、ゼクスが後ろで小さく拍手している。


「こちらこそ失礼しました。自分はミツ、旅をしながら街々を渡ってます。今は縁あってライアングルの街で冒険者をやってます」

「ほほぉ、ミツさんは冒険者でしたか、道理で何やら強気波動のオーラを感じましたぞ」

「そうなんですか? 自分は普通にしてるつもりなんですけど」

「いやいや、実は私も元冒険者でしてな、相手の内なる力が少しは解るのです」

 ゼクスは真っ直ぐと見ながら自身の感じたことをそのまま言ってるようだ。
 元冒険者の感と言う奴だろうか?


「ゼクスさんは冒険者なんですね」

「ほっほっ、元っでございますよ。では、尚更こちらをお受け取り下さい」

「でも……」

「冒険者は何かとお金がかかるものです、経験冒険者の意見として、これはいずれミツさんのお役にたちますでしょう」

 自分の手に握った金貨を見て、義務や名誉だけではなく、自分のことを思って渡した金貨は返せる訳もなく、自分はゼクスをみて感謝の言葉と頭を下げた。


「はい、では先輩冒険者の助言として受け取らせていただきます。ありがとうございます」

「いえ、無理を言ったみたいで申し訳ございません」

「いえいえ」

「じ〜や、早くお魚釣るよ」
 
「はい、ボッチャま! 私がエサとなりハリとなりて、川の魚を取り尽くしてみせましょう!」

「あはは、じ〜やの冗談面白い」

 いや……。その人ならやりそうな気がする。

「じゃ〜ね、お兄ちゃん」

 バイバイと小さな手を大きく振って、ロキアはまた走って行ってしまった。

「失礼いたします、また、いつかお会いできる日があると良いですな」

「はい、ありがとうございます」

「では、ボッチャま! お待ちください〜」

 お互いに頭を下げ、ゼクス達はその場を離れていく、本当嵐のような人だったな……。
 手に持つ金貨をアイテムボックスにしまい、釣りを再開することにした。

 ふと見ると下流の方ではプルンがまた釣り上げたのだろう、魚をこっちに向けて手を振っている。
 若干顔がドヤ顔でムカついたが、今の自分は機嫌が良いから気にしない、でも後でなにか仕返ししてやろう。

 お昼も過ぎ未だに一匹も魚カゴに入っていない、釣りはもう諦めモードに入っていた。

(釣りってさ、魚が釣れるから楽しんじゃないかな……)

《魚を釣りたいのですか?》

(君は何を見てるんだい、自分はスイングするだけの趣味はないよ)

 ユイシスの言葉に少し疑問が感じた、考えたら、確かに……必ずしも釣る必要は無いか。
 さっき見かけたパーティー見体に魔法での捕獲もありなんだしそっちで試してみようかな。

 先ずは他の釣り人の迷惑にならない様に少し離れてやってみよう。

作戦1投擲を使ってみる。
駄目だった……。当たったけど、石が魚を貫通してしまった、これは納品しても悪品扱いだろうな。

作戦2罠仕掛けを使ってみる。
駄目だった……。下流と違って上流の川の流れが強すぎて魚が居そうな所に行けないから、更にはまだレベルが低い自分の罠仕掛けスキルでは水の流れる強さにすぐ壊れてしまった。

作戦3即毒を使ってみる。
駄目だった……。と言うよりこんな物使ったら川が大変なことになる、使う前にこの作はボツだ。

 もうこの依頼は諦めるかな……。
 人には向き不向きがあるもんだ、そう言いながら自分は横に置いた空の魚カゴを見つめていた。


(ユイシス何か方法無いかな?)

《スティールで捕まえれば良いのではないでしょうか》

(え?)

 ユイシスの言葉に自分は少し疑問を持った。

(スティールってスキルや物をだけじゃないの?)

《はい、通常スティールは[物]〈スキル〉を取る事ができます。しかし、他のスキルとの組み合わせでスティールだけでは無く、現在ミツの持つスキル全てが強化されています》

(えっ? じゃ〜、何でスティールで魚が取れるの?)

《ミツの持つスキルの中に能力強化があります、このスキルの効果によってスティールの発動効果が2倍となってます》

「えっ……に、2倍……」

 思わず口に出す程に驚いた。
 2倍と言う事はだ、今のレベルを簡単に倍にした数が今のスキルレベルと考えて良いのか?

(全てって事はさっきの投擲も?)

《はい、能力強化スキルが発動してます》

(ちなみにさ、今の強化されたスティールだと、何処まで盗む条件が変わったの?)

《はい》

 ユイシスの説明はこうだ。

①強化により、自分の目に見える物であるなら遠くの[物]を取る事ができる。

②寝ている対象者のスキルを盗む事ができる。

③使用者の体重以下の生命体を、近くにスティールできる。


 また随分と便利になったと思った。
 物は試しと少し遠くからプルンの様子を覗うことにした。

 プルンの魚カゴは既に魚が少し溢れていた、どれだけったのか……。
 ニコニコしながら針に、ウネウネと動いているミミズの様なエサをつけるプルン。

(よし……茶化された分の仕返しをしてやる!)

 エサを付け川に竿を振り下ろすプルン、その時目を離した瞬間を狙った!

 自分が狙った物、それはカゴに入っはいった魚!

 では無く、ハリ先に付いたエサに向かってスティールをした。
 シュッとハリから消えた釣りエサは手元にきた、エサはまだウネウネと動いている。
 これで目に見えてる物、生きている生命体がスティールできることを一度に2つ証明できた。

(ふふふ……プルンには悪いけど仕返しはシッカリとさせてもらった! せいぜいエサの付いていないハリをたらしてるんだな)

《……せこいですよ》

(五月蝿いよ)

 戻って早速魚に試してみよう。


「また釣れたニャ!」  

「なっ! 何だと……」

 振り向くと確にプルンは魚を釣り上げている……。
 見なかったことにしてさっさと自分の釣り場に戻ろう……。

「よし、周りには釣り人はいないな、流石にこんな足場の悪いところには釣りに来ないか」

 ユイシスの言葉を信じて川底にいる魚に向かってスティールを試してみる!

「スティール」

 ビチッビチッビチッ!

「やった! 成功だ!」

 目の前に現れた魚は地面を暴れ川に逃げようとしていた、そんなことはさせない! 直に魚カゴに入れ初の魚ゲット。
 釣った訳では無いが魚を取ったことに変わりはない。

「よし! この調子でやっていくぞ!」

 その後、自分はスティールを使い続け、カラだった魚カゴをいっぱいにすることができた。

(魚もいっぱいホクホクやで〜)

《ミツ、スティールのレベルがもう少しで上がります、あと数匹捕まえることをオススメします》

(もう? でも、カゴにこれ以上入らないよ)

 ユイシスに〈スティール〉を進められるが横にあるカゴは既に魚が溢れそうなほどにいっぱいだ。

《魚に即毒をかけて死亡させて下さい。そうすればアイテムボックスに入れることもできます、入れる前にはキュアクリアを使えば毒も消えますので問題ありません》

(けっこうエグい事させるね)

《魚の品質上昇にもなります》

(キュアクリアかけるのは良いけど、MPが一気に持って行かれそうだな……)

《MPの消耗は一回分です》

(こんなに何匹もいるのに?)

《魚ですから》

(そうですか)

 自分は川に毒が入らないようにとカゴを川から出し、少し離れたところで〈即毒〉を試すことにした。
 初めて使う〈即毒〉は掌が少しピリピリする気がした?

「即毒」

 ビクッ! ビチビチビチビチビチ!

 カゴが大きく揺れ動き、中の魚が一気に動き出した。
 暫くするとカゴが静かになったので中を覗き込むと、中の魚は全て動かなくなっていた。
 続いてキュアクリアをかけて死んでいる魚を鑑定してみた。


スヤン魚 [優品]
傷も無く、鮮度が高く身も張って美味い。

「おー、優品になってる。ハリの傷とか無い分更に良くなったのか」

 魚を全てアイテムボックスにしまい、〈スティール〉のレベルを上げるためにもう一度川岸へと戻った。

「よーし! これならもっと取っちゃおう!」

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