Re-start 異世界生活って結構自分に合っている件

ロミにゃん

80 "見える者" シルバーズ兄弟とフィオナ前編

どれくらいの時間が経ったのかな・・・
ずっと真っ暗だ・・・
目を開けているのかも分からないし、自分の手足があるのかも分からない。
何も見えない、本当に深い深い闇・・・

「あの女の子はどこに行ったのかな・・・」

ため息混じりに呟いた時、誰かが私の右手をそっと握った気がした。

「え!?」

真っ暗で見えない為、誰か居るのかも分からない・・・とても怖い・・・


すると突然、目の前にフワッとした無数の光が見えた。

一番近くにあった光の中に何か見えた気がして近づいて中を覗いてみると、更に三つの光が見えた。

「あれ?リオン?」

更に隣の光の中にはレオが見え、その下の光の中にはフィオナが見えてた。

「一体ここは何?・・・」
「アーカイブス・・・」

私の手を握っていたのはあの女の子だった!でも姿は公園でみた小学生の姿をしていた。

「え?アーカイブス?何のため?」
「全てが集まる場所・・・今も増え続けている。膨大な記憶の保管庫・・・」
「記憶の保管庫???」
「触れば見れる・・・」

試しに目の前のリオン達のアーカイブを触れてみる事にした。

「わ!またフィルム!?ちょ!?ぎゃゃゃゃ」
「・・・」

光の中から、ドッと大量のフィルムが飛び出して私の身体だけに絡みつき、光の中、記録の中に吸い込まれた。




ーシルバーズ兄弟とフィオナのアーカイブー

立派な屋敷の庭にある大きな樹の下で静かに読書をする少年がいた。
読書をする少年の髪は、金色でフワフワしていて肩くらいまである。
木陰で読書を楽しむ姿が微笑ましく思えた。

少し離れた場所で、同じく金色の髪を持つ少年が居た。
その少年の髪は短く、右手には剣を持ち威勢良く声を荒げ、とても勇ましい。

「はっ!はっ!やぁ!」

力強く握られた剣を振るう度、風を切る音が聞こえた。
でも、どことなくぎこちなく見えた。
剣さばきがぎこちない?合ってない感じ?

そんな対照的な二人を見て使用人達がヒソヒソと話している声が聞こえた。

「旦那様が亡くなられた時はこのシルバーズ家も、どうなるかとヒヤヒヤしたけど、奥様が国王様の弟王子と再婚されてあの二人も王位継承権を得られて、私達も職を失わず済んで本当によかったわねぇ・・・」
「レオリオン様は国家騎士を目指すそうよ、それに比べて身体の弱いエミリオン様は身分の卑しい孤児にご執着何だとか・・・」
「正確には奴隷の枷をつけてないそうよ。奴隷の枷をはめられる直前で救われたそうよ。でもそんな奴隷まがいの子なんかと仲良くするなんて、変わり者よねぇ」
「その奴隷を拾ったって言う、ゴールド家の当主の最高司祭様なんでしょ?シルバーズ家が今も残っていられるのはその息子、副騎士団長のカイン様のおかげだそうじゃない。カイン様がゴールド家の次期当主になられるみたいだし、カイン様が騎士団長になるのも時間の問題ね、彼の方の下で働いて恩を返そうだなんて、レオリオン様もまだ10歳だと言うのに本当にしっかりしてるわねぇ」
「少しは兄を見習ってほしいわね」
「奥様は国王様に取り入ろうと、ずっと屋敷に戻らないし、シルバーズ家も何かとまだまだ不安ね」

本を読んでいるのはリオンで、剣を握っているながレオか・・・
二人とも超可愛い。美少年!
リオンは髪も長いし女の子と間違いそうなくらいだ。
レオの方も10歳だと言うのにとても綺麗な顔立ちをしている。

洗濯物を干し終え屋敷の中に入っていく使用人を横目に私はリオンの方へ向かおうとした時、また大量のフィルムが目の前を覆い、その風圧に足がよろけ、気がつくと、今度はキャタルスシティの神殿の場面に移り変わっていた。

祭壇の前で、跪き祈りを捧げる、幼いリオンとレオと女の子が居た。

「・・・私は明日はじめて儀式に出るの。私の力がこの国を護るからだって。」
「フィオナの祈りは歌を歌ってるみたいで僕、好きだよ!フィオナがこの国を護るなんて、すごいや!ね!兄さん!」
「あぁ!フィオナがこの国を護って、俺達がフィオナを守ってやるからなっ!!」
「うん!2人に守ってもえるなら私頑張る!沢山祈りを捧げて悪い敵からこの国を護る!」
「ねぇ、フィオナ!歌って!あれ僕好きなんだ!」

フィオナが詠唱を始めると、聞き覚えのある物だった。

「あ、『Serenade Selene』・・・」

「何か言った?」
「ぼく何も言ってないよ」

あ、私の声が聞こえた!?

「セレナーデ、セレーネ?って聞こえた気がしたよ??もしかして、神様がフィオナの歌に名前をつけてくれたんじゃないか!?」
「そうだよ!きっとそうだ!赤い髪の神様、今日は居ないけど、いつもフィオナの歌を嬉しそうに聞いてたし!」
「そうだね!この歌の名前は今日からセレナーデセレーネだ!」

今、私が命名したようにも感じたけど・・・気のせいかな?



するとまたしても大量のフィルムが現れ、強制的に時間を変えた。

目を開けると今度は初めての『Serenade Selene』が終了した後だった。

リオンとレオは月の神殿の外でボロボロの姿で泣いていた。

「兄さんフィオナが死んじゃうよぉ、ぐすん」
「ぐすん、泣くな!男だろ!」
「兄さんだってぇぇわぁぁぁぁん」

レオがリオンの頭をあでながら必死に零れ落ちる涙をこらえようとしていた。
何があったのだろうか、全く分からない。

神殿に入りフィオナの姿を探すと、ある部屋に見覚えのある男の姿があった。

国王様だ!隣にいる悪そうな顔つきの奴は・・・大臣っぽい。

「ま、まさか、こんな小さな子供に此れほどまでの力があるたわ!これで、我が国の防衛力は数年は保つだろう!くくく」
「だが、こんな幼い子供にこんな酷な事を・・・」
「奴隷落ち寸前の所で拾った命、奴隷と変わらん。このまま我が国のために命を捧げされる方がこの者にとっても幸せかと思います、くくく、国王様、いつ隣国が攻め入るやもしれません、それと、近年では魔神の出現数も増えております故、この者の命一つで、数十万人の命が護れるのであれば・・・」
「・・・」

ゲスい!そうか、この時はまだ国王になる前!
現国王を毒殺する前だ!
フィオナの力を使って、のし上がったクズやろう!

ふと、祭壇の上に目をやると、力を使い果たし裸同然の姿で力なく横たわるフィオナを見つけた。
確か、『Serenade Selene』はほぼ24時間祈り続ける儀式だったはず・・・
初めての儀式だったとして、24時間も体力が持たなかった!?

「初めてにしては上出来!よし、この子供にそれなりの地位を与えよう!教養を身につけさせ、一流の教師をつけよう。身体の隅々までその能力を引き出させるため学者達に調べさせ、この国の為だけにその力を振るわせるのだ!くくく。その為には国王は邪魔だ、死んでいただかなければ・・・くくくくく」

このクズ野郎!
私は目の前のクズ野郎に何とかして一発お見舞いしてやろうと思ったけど、またしてもフィルムに時間を変えられてしまった・・・

目まぐるしく時間が変わり、ちょっと疲れてきた気もする・・・

その後、クズ大臣は外堀を固め国王に毒を盛り自らが国王になった。
初めての『Serenade Selene』の後からリオンとレオは変わり始めた。
レオは国家騎士として地位を求め、リオンは貴族としての階級を求めそれぞれ違う方向からフィオナを守るため。
力がなければ何もできない事を小さな身に嫌と言うほど味わいながら、2人は強くなる事を目指した。

フィオナは少しでも自由を得る為に自分の境遇を受け入れ、得られる物は全て食らいつき必死で学び習得し、最年少で最高司祭の地位にまで上り詰めた。

時間は流れ数年が経ち、クズ国王主催の夜会が開かれている宮殿にリオン達の姿があった。

レオは立派に国家騎士なっていて、フィオナの護衛をしていたけど、メインホールには入れず、外で待機していた。

「おい、エミリオン、中でフィオナに何かあればわかっているな」
「・・・分かっています。兄さん」


年頃に成長したリオンはとても美しく女性貴族達からもとても人気が高く絶えず周りにはリオンを狙う女達に囲まれていた。

「シルバーズ子爵、宜しければ私と踊っていただけませんか?」
「ダメよ、シルバーズ子爵、あちらでゆっくりお話をいたしません?」

リオンは誘いには全く乗らず数十人一人一人に笑顔で優しく断っていた。

あれ?全然チャラくないじゃん。
ん?あれ?って何で私、ドレス着てるの????
この場に合わせた格好になってる!?!?
髪をアップにセットされてるし、あれ?メイクもバッチリ????

窓ガラスに映った自分の姿を確認してこっぱずかしくなった。

会場にいる女性達はみんなリオンを取り囲む中、私はカーテンの後ろに隠れようとしていた。

「何で、こんな格好してんの!もう!あ、リオン見失っちゃった・・・」
「私の名を呼びました?」
「わわっ!」

カーテン越しにリオンが私の方を見ていて驚いた!

え!?私が見えるの!?何で!?
すると、会場の灯りが消え、ホールの真ん中あたりだけが照らされていて、次々と男性のエスコートでペアになった男女が集まりだした。

「申し訳ないのですが、僕と踊っていただけませんか?」


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