Re-start 異世界生活って結構自分に合っている件

ロミにゃん

70 星月隼人



"記憶の泉"についての情報は、執事のクラウドさんに調べてもらうことにして、私達は、話を続けた。

「そういえば、橘と仲の良かったアイツは元気にしてるのか?」

アイツ???

「ほら橘と大学から、いつも一緒の同期の、アイツ」

・・・大学からの一緒の同期???

「あぁ、部署異動した子?異動した後はロミちゃんもあの子の話をしなくなったわね」

え・・・桜子さんも知ってるの???

「ロミーさんと同期で部署移動した人・・・あ、もしかして、蒼野さんだっけ?」

「蒼野?・・・」

「まさか、ロミー、彼女の事も覚えて居ないのかい?君達は大学の時からの親友だったじゃないか」

「え???ジャックまで蒼野って人のこと知ってるの???親友???」

そんな人、知らない・・・
みんなが知っていて、私だけが知らない・・・

記憶の欠け方が不自然な気がする・・・どうしてみんなが知ってて私だけ・・・
この記憶の欠け方には何か理由があるはず、そんな気がしてならない。

親友?と同じ職場に就職したんだ・・・
しかも同じ部署って・・・
どんだけ仲良しやねん

「そういえば"イレギュラー"は確か『忘れろって言ったのは自分』とも言ってたっけ・・・ちょっと、蒼野って人の事は分からないけど、みんな、話を聞いてもらえますか」

オブザーバーさんが"イレギュラー"と呼んでいる存在が、私を呼び寄せたのは間違いない。
これまでの"イレギュラー"が私に接触してきた時の事をみんなに話した。







「"イレギュラー"と呼ばれるその女性が、ロミちゃんの記憶を消して、この世界に呼び寄せただなんて・・・。私達はロミちゃんと一緒に来たのには理由があるのかしら?」

私のせいで巻き込まれたって事になる・・・

「その声の主は、君と遊ぶためだけに、ここに呼び寄せた。って言ってたみたいだけど、"イレギュラー"って人について、心当たりは無いのかい?」

記憶がないせいなのか、質問されても答えられない・・・
もどかしい・・・

「まだよくわからないんですけど、"イレギュラー"と呼ばれるあの女の人、懐かしいような気がしたんです。あと、ジャックと話をしてる時にも、同じように懐かしく感じてたんです。だから、どう、って訳でもないんですが・・・」

「ロミー・・・」

私の名を呟いてジャックは困り顔で優しく笑って頭をなでてくれた。

そう、これ、今まさにこの状態。
いつも頭をなでてくれるジャックの事を頭の片隅ではずっと前から知っているような気がしてた。
保護者みたいってずっと思ってたけど、それも違う。って本当はずっと分かってた。
ジャックの私への接し方は、想いを寄せる相手へ、もしくは、恋人そのもの・・・

私はこの事を無意識のうちに考えないようにしていたのかもしれない。

でも、今更、怖くて聞けない・・・

「今、何を考えてるのか教えてよ」

私の顔を覗き込み、優しく微笑むジャックの顔を見ると胸が苦しくなる。
覚えていない。と言う、ジャックへの申し訳ない気持ちでいっぱいだから、これは罪悪感からくる苦しみ。

「わ、私・・・」

「あ、やっぱり、待った」

苦し紛れに何か答えようとした時、ジャックの人差し指で唇を塞がれた。

「聞いといて、何なんだけど、頭の中、ぐちゃぐちゃしてるんじゃないか?私のせいで、君が苦しむのは、本意ではない」

「んぐぐ、」

はい。その通りです。

「それと、君に"巻き込まれてこの世界に来た"とは思ってないからね」

「んぐ・・・」

「私も、ロミちゃんのせいでこの世界に来た。なんて思わないわ」

「僕もロミーさんのせいだなんて思ってないから安心して」

「俺は、橘達よりも前にこっちの世界に来てるし、全くお前のせいだなんて思ってないぜ」

みんな・・・

「みんなも同じみたいだ。だから一人で背負うとしないで、みんなにどんどん相談してくれないか?」

「んぐぐ、んぁ!」

ジャックの手をどかし、みんなの方を見ると、みんな笑っていた。
なんか一人で悩んでた事がバカバカしく思えてきた。

「うまく、説明できない事が多過ぎて、ごめんなさい」



ーお昼ー

桜子さんの計らいで二人で話を出来るよう散歩へ行くように。と、外に追い出された。


「敷地内でいい?それか、市場とか行く?」

「あー、いえ。ジャックと話ができればどこでも大丈夫です」

「・・・」

たぶん、ジャックは私について聞いても知っている事は話してくれないだろうな、いつもごまかされるし。
でも聞かなきゃ。知りたい。

「ジャックが知っている、私について、教えてください。私、ジャックの事を思い出したい!」

「・・・」

何も答えてくれないジャックの背中を見つめていても、胸が苦しくなるだけだった。

「・・・やっぱり市場行こうか?GATEで」

ほら、何も教えてくれない。それどころか目も合わせてくれない!!

「いや、私、ジャックが教えてくれるまで、行かないです」

「ふぅ・・・じゃあさ、"俺"の気持ちはどうなるんだ」

少し低く冷たい声にドクン。と心臓が締め付けられた。
"俺"?何?

「俺が君の事を話して、思い出す保証もないだろう?君の話をする事がどれだけの苦痛だと思う?」

ジャックの気持ち、確かに考えてなかった気がする・・・
でもそれだけ苦しいって事は、やっぱり・・・

「私達って・・・付き合ってたんですか?」

私は勇気を振り絞って聞いてみた!!
もう耳まで真っ赤だよ!
違ったらメッチャ恥ずかしいやつだからね!!!
ジャックの反応は!?これだけは絶対答えてもらうんだから!!!

数メートル離れた場所に立っていたジャックが物凄い勢いで迫ってきてる!?
え!?わっ、わっ、ちょ!?
あれ?気がつくと逃げ場がない!?

ジャックは左手で前髪をかき上げると、一呼吸して、手を伸ばした。

こ、これは!!壁ドン!!!!
無理ぃ!!!顔が近過ぎますぅぅぅぁぁあ

「俺を見て、ちゃんと、俺のことを」


スルリとアイマスクを外され、至近距離で見るジャックの表情は、真剣そのもの。
こんな顔、初めてみた・・・?????

「あ、アレ?この感じ、前にもあった気がする・・・」

「そうだよ、"あの日"もこうして、君と・・・」

・・・・・・!!!!!!!

一瞬の出来事で驚きを隠せない!!!
顔が!唇が!私の唇に触れている?????

「・・・"俺の頭の中は君でずっといっぱいだった"」

その言葉、知ってる!
あの日も今の言葉を言っていた!?
私はガクッと膝をついて涙を流した。

「す、すみません・・・」
「キスしたのは俺なのになんで君が謝るかな・・・はは」
「・・・"隼人さん"」
「え?い、今、名前を呼んだかっ!?」
「えーとね・・・星月 隼人、職業は美容師、独身。たしか、今42歳?であってる???」

ジャックは嬉しさのあまり私の肩で、項垂れて笑いながら言った。




「だいぶ、限界だったんだ、俺・・・」

私はジャックのいう"あの日"を思い出したようだ。
全部じゃないかもしれないけど、"あの日"会ったのが最後だとするのなら、私達は、"付き合っていない"








ー食堂内 バニラサイドー

「あーぁ、ジャック、とうとうロミちゃんに手を出したわね」

「でも、ロミーさんとジャックは知り合いだったみたいだし、もともとそんな感じだったし自然だろ?」

「上城君って、本当にロミちゃんの事なんとも思ってないの?」

「何言ってんだよ、ロミーさんは部下だから、心配して当然だろ」

「本当にぃ?ぜーったい?ただの部下と上司ってだけ?自分に嘘ついてない???」

「三日月、いい加減にしろよ。」


こいつら、こんなとこからコソコソ覗いて何話してんだ?
お、ジャックの奴とうとうぶちゅっとやったみてぇだな。
ロミーの寝顔を毎日見に来たり、悪い虫がつかないように金魚の糞みたいにロミーにひっついてたもんなぁ・・・
思い出すだけで、笑えるぜぇ。ケケケ
でもまぁ良かったんじゃねぇーの?
ロミーが幸せなら、俺様は何でもいーけどな。


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