Re-start 異世界生活って結構自分に合っている件

ロミにゃん

56 見えない声


ー?????ー


眩しい・・・

「ふーん、"観測者"まででてきたか。ロミー強運だねぇ」

まただ。またこの声。

「パワハラ上司に虐められてた頃と比べると断然今の方が楽しいでしょー?」

何故、今、ババアの話?でもまぁ楽しいけど。

「きゃはは、そーでしょう!そうだロミー、魔神が目覚めるのは、夕刻の鐘が鳴るタイミングだよ。私からのプレゼントだよー」

は????






視界は真っ暗になった。





「ロミーさん、ロミーさん」

上城さんに起こされ、気がつくとどこかの工場内???
そこら中パイプが張り巡らされている。

観測者とバニラが宙に浮いたまま話をしていた。

『久しいね、キメラくん、いや今はバニラだっけ?』

『おぉ!200年ぶりくらいか?』

『200年で随分と可愛らしい姿になったねぇ』

『お前は変わらねぇなぁ』

「観測者さーん、ここどこー?」

私は宙に浮く二人に手を振り話を戻させた


「『この国の地下。人工魔神を作る施設さ』」

観測者が下の方を指を指してた。
下の方から心臓が鼓動するように赤い光が見える。

私達は下へ下へとおりて行く。
下に近づくにつれて私の眼が疼きを増していく。



ドックン、ドックン、
心音が大きさでだんだん近づいているのもわかる。

大きな水槽のようなものが見えてきて、中に何かいる様に見えた。



「『この人工的に作られた魔神は意志を持たない。目を覚ませば見境なしに破壊のみを繰り返す。この国の者は、これを手なづけられると思っているようだけど、』」

「空の器にただ、心臓を取り付けただけ。だと言ってます。」

「その様な危険な存在が、この街で暴れたら、甚大な被害がでてしまいます!!!」

観測者がフィオナの両肩に背後から腕を回し、抱きしめたい。
フィオナは一瞬戸惑いを見せながらも、決意をしたようで杖を取り出した。

「ロミー様、魔力を使用させていただきます!」
「うん!!使って!」


フィオナが祈り始めると巨大水槽の周りに大小様々な無数の魔法陣が現れた。

綺麗なその声はまさしくセレナーデ。

みんなフィオナに魅了されている。
ずーっと見ていたいくらいだよ。
私もウットリしちゃう(o´罒`o)

はっ!?そんな場合じゃない!!!

「観測者さん、って呼び辛いから、取り敢えず、オブザーバーさんって呼ぶね。」
『構わないよ』
「オブザーバーも観測者もあんまりかわらねぇけどなぁ、ぎゃはははは」

そうだ、今朝から聞こえるあの声、今日の事を言ってたよね?
あれ、何だろう、こっちの世界に来てから、夢だと思ってたけど、時々過去の事を思い出すのに関係している気がする。

今朝からのは過去の話じゃなくて、直接語りかけてきていたよね?

もしアレが本当なら

「オブザーバーさん"魔神の目覚め"は夕刻の鐘が鳴るタイミングですか???」
『・・・フィオナ次第で目覚めの時は変わると思っていたが、君には正確な時間がわかっているみたいだね』

宙に浮いた観測者は私の目の前にきて、目を細めた

「ロミー、観測者様はなんと言っているのだ!?」

リオンも焦っている。

『やはり君は異世界から来た者の中で2番目にイレギュラー要素が強いようだね』

ん???

『私はロミー、君を"観測者"として最後まで見届けよう』

私を見届ける?私だけ???
オブザーバーの言うことがよくわからないんだけど、バニラどういう事?

『お前だけが受けた呪いが関係してるんじゃ無いのか』

呪いと聞いて私は自分の顔に手を当てた。
たしかにこの瞳は呪いを受けたせいで、今も皆んなにアミュレットを通して魔力を吸い上げてもらわないと、苦しくなってしまう

初めから私がキメラに勝つことがわかっていて、勝者にのみに与えられたこの呪い。
"あの声"と関係しているのかな?

『私は見ていたよ。君達がこの世界にやって来た時からずっと。君だけは初めから卓越した才能を持っているようだ』

「ロミー!」

リオンに腕を掴まれた。

「観測者様はなんと言っておられるのだ!!」
「いっ、痛い!リオン、離してよ」

私の腕を掴む手に力が入っていて、緊迫した状況だと分かる。

「待って、リオン、今そのぉ私個人の事を話してて、その、なんて言うか・・・」
「関係ない事を話している暇など無い!この街の民の命がかかっているのだぞ!」

焦るリオンの目の前にオブザーバーさんが近づいて、リオンの肩に手を乗せ、頷いている。

『ごめんね、エミリオン。そう伝えてもらえるかい?』
「ごめんね、エミリオン。って言ってます」
「なっ、私の方こそ申し訳ありません。取り乱しました事をお詫びいたします」
『私の言葉をもう一度伝えてもらえるかい』
「はい。『リオン、ここの責任者を捕まえて、状況を説明し、国王に報告させるんだ。恐らく取り合ってもらえないだろうが、何もしないよりは良いであろう。ジャックと輝には、ハンター協会へ行きクエストを発注してもらう。』」
「はい!直ぐに責任者を捕まえて、国王に報告して参ります!!!」

リオンはフィンを連れて直ぐに出発した。

「『イレギュラーな事が起こる予兆が現れている。ロミーの言う通り、この人造魔神は夕刻には恐らく目覚めるだろう。ロミーとジャックには魔神が目覚める直前にGATEを使い、どこか街から遠く離れた場所へ飛ばしてもらう。その先で、冒険者達を待機させ一斉に叩く。』」

「クエストの発注と言っても、魔神が現れる。だなんて信じてもらえるでしょうか?それに魔神の討伐を喜んで受けてくれる冒険者がいるかどうか・・・」

ジャックの意見に私と上城さんも同意見。

「『それなら安心するといいよ、私も付いていくから(ニコニコ)』」

・・・オブザーバーさん、何か考えがあるみたい。

「オブザーバーさん、私はどうすれば???」
「『ここでフィオナの詠唱の邪魔をする者を迎え討つんだ。』あ、はい!フィオナの事はお任せください!」


ジャックと上城さんに敬礼をすると
二人も敬礼をしてくれた。

「あ、でも僕等は観測者さんの言葉がわからないけど、どうすればいいのかな?」

上城さんが質問すると、バニラが肩に乗った。

「俺様が通訳してやろう!ぎゃっはっはっ」

バニラは何をそんなに楽しんでいるんだろうか・・・
ジャックがGATEを出し、ハンター協会へ向かった。

私はとりあえず、誰も近づけないように、このフロアにトラップを仕掛けた。

足を踏み入れると、眠ってしまう魔法。
"tili-tili bom"〈子守唄〉

歌を聴かせ眠らせる魔法だ。
ゲームの中では詠唱して魔法陣が発動されている間、いつも私は子守唄を歌っていた。
ロシアの子守唄でちょっと怖ーい歌。
大学生時代の病んでいた時期に友人に動画見せてもらってハマって聞いていた曲。

ゲーム中に怖い歌を歌う私をNightmareなんて変なあだ名で呼ばれた時期があった事を思い出した。







ん???
詠唱する声が聞こえない?
アレ???
フィオナ???止まってる???

フィオナの声も水槽の中の魔神の鼓動も聞こえない。
それよりピクリとも動かない???

何???


突然、キーーーン、と耳鳴りがした。

『くすくす』

誰かの笑い声??

『あったねぇ、"Nightmare"とかあの頃、呼ばれてたねぇ』
「ま、また!?なんで、それ知ってるの!?(私の黒歴史の一つ!!!)」
『くすくす、早く思い出しなよ、私達の事。それに"あの人"は相当ショック受けてたよー』

後ろから声が聞こえたような気がして振り返っても誰もいない。
私はキョロキョロと声の主を探しながら返答する。

「は?私達とか、あの人って誰!?ってか、あんたは誰なのさっ!!!」

髪を触られたような気がして私は振り払った!

「ちょっと、姿見せろーーー!」

『ん???"オブザーバー"に気づかれた・・・アイツ邪魔だなー。』

???

『くすくす、私の目的は、ロミー、アンタと遊ぶ事。まだまだこれから、いーーーっぱい遊んでもらうからね』

「なんで私がアンタと遊ばないといけないの!?いいから姿みせろー!!!」

今度は背中を触られ、振り返ってみるけど、やはり誰も居ない。

「もう!お前は何を知ってるのさっ!?」
『初めての彼氏の事から、好みのタイプ、アンタの癖、思考、なーんでも知ってるよ。紳士が好きな事も。リオンみたいなチャラ男は大嫌いな事もね。キメラにつけた名前、アレ、アンタの部屋に昔あったぬいぐるみにつけた名前でしょ』

は!?何でそんな事まで知ってるの!?

『私があげた、"イケてる紳士オヤジ"特集の雑誌だって未だに本棚のいつでも手に取れる位置に置いてるんでしょ???』

?????????

「ちょっとまて!何でそれ知ってるの!?(赤面)」

待て待て、待て!アレはたしかに貰った。
でも誰に貰った???????

アレ???

どうして思い出せない????

頭の中がぐるぐるしてきて、手で顔を覆った。
思い出そうとしても思い出せない。
アレ???

「お前、誰だよ、私の事なんでそんなに知ってんだよ・・・」


目の前に誰かが立っているのがわかった。
でも光が眩しすぎて、よく見えない。
でも口元だけは見えた。
歯を見せて笑っている。
その笑い方で悪い奴だと言う事は直ぐにわかった。

姿はハッキリとは確認できないけど、知っているような気がする。


『くすくす、早く思い出してね。頑張れロミー、まったね〜』




ドサッ・・・







「ロミー、ロミー!!!良かった!戻ってきた瞬間、突然倒れたから驚いたよ」

ジャックの膝の上で目が覚めた

「あれ?ハンター協会は?」

「それは終わったよ、本当に大丈夫か?」

「もう、大丈夫です、ありがとう、」

今は、"アレ"に関する話している余裕はない。

目の奥がズキズキする。




とにかく、魔神に集中しなくてちゃ





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