Re-start 異世界生活って結構自分に合っている件
52 キャタルスシティ シルバーズ邸
20分程、馬車に揺られ、ようやくリオン邸に到着した。
早速、ジャックが馬車に乗り込んできた
「ロミー!大丈夫かい!貧血って聞いたけど、取り敢えず、部屋まで運ぼう。」
そう言うとジャックは私をまた抱きかかえようとした!
「あーーーー、お姫様抱っこは、恥ずかしいからダメです!!!ただの貧血ですし、ちょっとクラクラするだけで、歩けますよ」
私は立ち上がってみたものの、やはりフラついて二人に支えられた。
結局、ジャックさんに抱っこされてしまった。
「はぅぅぅ(赤面)」
恥ずかしくてずっと顔を両手で覆った。
「直ぐに寝る?それとも、何か口に入れてからにするかい?」
ジャックの問いに私は顔を隠したまま、
「下ろしてください!歩けますよ!ご飯食べたいです!下ろしてぇ!お腹すきましたぁ!!!歩きますー!!」
くすくす笑う声が耳に入る。
「忙しい子だね(くすくす)」
やーめーてー!おーろーしーてー!!!
恥ずかしさのあまり私は足をバタバタさせると、ようやくジャックは私を椅子の上に下ろしてくれて、目を開けると、ヨダレが出るほどの豪華な料理が並んでいた。
「ロミー、貧血だって?しっかりと食べて今夜はゆっくり休むと良い。ここは私の家だ、遠慮なく寛いでくれたまえ」
「あ、ありがとう 」
リオンが普通のことを言うとなんか調子狂う
その後、食事をしながらリオンが明日の日程を教えてくれた。
明日の夜の神事に向け、フィオナは早朝より、神殿で清めの儀式を一人で篭り行うようで、私達も基本的には清めの儀の最中は部屋に入ることは出来ず、神殿自体は関係者以外立ち入り禁止になり、警備も厳重になる。
今回の目的は3年に一度行われる『Serenade Selene』と呼ばれる神事は夕刻から日の出まで行われる。
「フィオナが祈り始めたら君達3人は常にそばを離れてることはできない」
夜通し、警護をするってことね。
「あれ?ってことは、フィオナも朝までずっと祈り続けるってこと?」
「はい。基本的に一度始めたら止める事は出来ません。十分に効果を得る為には、長時間私が祈り続けるほかないのです。。。」
フィオナ達の表情は険しい。
何かあるみたいだけど、ここは一先ず質問するのはやめておこう。
夕食を終え、デザートが出てきたところで、フィオナが席を立ち男性陣が、席を立ち、とりあえず、私も慌てて立ち上がった。
「私は明日に備えて、これで失礼いたします。」
フィンがフォオナを部屋まで案内して行った後、リオンが席を移動して、私達の直ぐ近くの席に座った。
「君達には、私の話しておく事がある。」
いつも女性の前で笑顔を絶やさないリオンが真剣な表情をしている。
「明日の事だが、フィオナの生まれ持った能力により、奏でるような詠唱スタイルから『Serenade Selene』と言う名前が付けられている。」
そういえば、初めて会った時も、綺麗な歌だなぁって思ったんだよね。
セレナーデって、"小夜曲"とか"愛を奏でる"って言う意味もあるからそう言う事か。
「ただ、3年に一度これを行なっているが、確実にフィオナの寿命は奪われている。命と引き換えに、この国を守らされているんだ」
フィオナは、4歳の時、その力を認められて、それ以来この国の為に、その命を捧げているのだと言う。
「国を守る為にフィオナの命がどう関係しているのか、詳しく教えてもらえますか」
ジャックがリオンに質問するとリオンは使用人達をその場から離れさせてから答えた。
「この国の国王は、戦争の道具としてフィオナをこの国に縛り付け、フィオナの命を使ってこの国の防衛力を保ちつづけているんだ。君達もシルバーシティに来た日、絶大な防衛力を見たであろう」
「あのレーザー光線みたいなやつ!!!」
私の受けた呪いのせいで引き寄せてしまった魔神を一撃で退けたアレ!!!
「あの力は毎日少しずつフィオナの命を捧げることによって生み出された力。アレを一発放つのにフィオナの何年分の命が奪われているかと思うと、非常に腹ただしい、だが、そんな言葉だけでは私の心情は言い表せない!それに、フィオナ本人が一番苦しんでいるからだ!!!!」
リオンは声を荒げ、ドンッ!っとテーブルに拳を強く打ち付ける。
こんなに感情をあらわにするリオンは初めて見る
「このままではフィオナは長くは生きられない!!今回の儀式だって、本当は中止にさせたいくらいなんだ!!!この国は、間違っている!!!」
そんな事、他の世界から来た私達に言われてもなぁ
この国の事だしねぇ?
うーん、
「フィオナの力を奪い合って戦争だっておきかねない。君達にはフィオナを守ってもらいたいんだ。ハンター協会は中立的立場だ、協会には助けを求める事はできない」
ハンター協会ねぇ
ゲーム上だと、お金さえ払えばハンターを雇えるけど、戦争の道具としてハンターを使うのはどうかと思うし、いずれはどちらかの側に付かなくては、ゲームは進めないんどけど、、、
リアルに選べと言われると中々難しいなぁ
「シルバーシティはキャタルス王国領内だ。私は領主と言っても、国に属す身だ。できるだけ多くの兵を集め備えるしかない。もし戦争になれば、確実にフィオナを奪い合いになる。君達にはフィオナや街の者達を守ってもらうことになる。」
親衛隊にはなったけど、戦争のするなんて聞いてない。
まだ戦争すると決まったわけじゃないけど、国家騎士になるのが面倒で、親衛隊になったのもあるけど、結局面倒に巻き込まれてる気がする。。。
「ねぇリオン、今回の任務は、フィオナの護衛でいいんだよね?」
「あぁ、そうだ」
「今回の護衛が終わった後の事なんだけど」
「君達にはフィオナの為にその命を捧げてもらう」
リオンが右手をクイッとあげると、武装した兵士達が部屋に入ってきた。
「はぁ、リオンはそっちを選ぶわけだ」
武装した兵士達が私達を取り囲み、ジャックと上城さんは席を立ち、銃を装備した。
私とリオンは座ったまま、会話を続けた。
「こんな事はしたく無いのだが」
壁にかかっていた大きな鏡に、リオンが魔法で、シルバーシティの桜子さん達のいる屋敷を投影させた。
みんなを人質にして、私達を従わせようって事だね
「へぇ、私の力知ってて、喧嘩売るんだ。フィオナはこの事知ってるの?」
「私の独断だよ」
リオンはいつになく真剣顔つきをしている。
一度狙った獲物は逃がさないと言ったところか。
「フィオナの知らない所で、こんな風に、脅して兵力増やしてるの?」
「フィオナの名前を出すな」
図星な上、罪悪感たっぷりなのね。
「はぁ、どうします?」
私はジャックと上城さんに意見を求めた
「僕は二人に任せるよ」
「そうだねぇ、私もロミーに任せるよ」
ふむ、ならまずはリオンに一発くらわしてやろうかな
「あ、でも、ロミー、暴力はダメだよ?」
あれ?ジャックに心読まれてる???
「や、やだなー殴るわけないじゃないですかぁーあはははははー」
「ロミーさん殴る気だったんだ、、、」
ゲームなら、物語を進めて行く上で、重要な分岐点と言える瞬間ではないでしょうか。
リオン達に着くか、リオンの敵に回すか。
エンディングに影響する選択。
そんな大事な選択を私に託されても正直迷惑。
「はぁぁぁ、リオン、人質を取れるのはリオンだけじゃないよ。私にだってフィオナを簡単に人質に出来るって事、覚えといて。」
私が指をパチンと鳴らすと、フィオナの悲鳴が聞こえた。
「なっ、フィオナに何をした!!」
私は左手の人差し指にはめたアミュレットをリオンに見せた。
「この指輪は私の体内から絶え間なく溢れ続ける濃い魔力を分散させるための装置。その行き着く先をフィオナ一人に絞ったんだよ。まさか、フィオナがくれたアミュレットでフィオナ自身が苦しむとはね」
「や、やめないか!フィオナを傷つけるな!」
「リオン、私の仲間に危害を加えたら、フィオナの身体は吹き飛ぶよ。大人しく私が従うと思ったら大間違いだよ。私はそんなに優しくないから。」
リオンは武装した兵士達を退かせ、フィオナのいる二階へと走っていった。
「さっきのはちょっとやり過ぎじゃないの???」
「あぁ、あれは、ハッタリですよ。フィオナに魔力を流したなんてウソです。ちょっとしたイタズラですよ。偵察用の魔法でネズミをフィオナの部屋に送り込んだんです(ニッコリ)」
「ね、ネズミ?それで悲鳴を?」
「効果覿面じゃないか」
しかし、これからどうするか。。。
選択はしなくてはならない。
「戦争は避けたいですね」
「僕も同意見だよ」
「私もだ。さっきは、ロミーに任せようとしてすまなかったね。」
「あー、いえ、とりあえず、私達もフィオナの部屋に行きません?」
階段を上ると使用人と兵士達が扉の前にいて、私達の事を恐れて、誰も近づいてこない。 
それどころか後退りしている。
フィオナの部屋に入り顔を合わせた。
「これは、一体どういう事なのでしょう???」
フィオナは状況を理解できていない様子で、私達とリオンの顔を交互に見ている。
「フィオナ、案ずるな。きみの悲鳴に驚いただけだよ。大きなネズミとはね。。。やられたよ」
魔法で作られたネズミをリオンが踏み潰し、細かな光となり砕け散った。
「フィオナ、おやすみ」
私は手を振り上城さん達と部屋を出た。
少し遅れてリオンが部屋から出てくると、
使用人達や兵士達を全員フロアから退がらせ、みえなくなってから、私達に部屋に来るように言って、となりの部屋に入っていった。
扉は少し空いていて、中でリオンが腕を組んで待っている。
キィィイ。パタン。
リオンの後ろ姿は、怒っているように見える。
「リオンは本気で我々を脅す気無いんじゃないか?迷いを感じるのは気のせいじゃないだろ?」
リオンは黙ったままずっと後ろを向いている。
「フィオナに危害を加えられたと思って、怒ってるよね?リオン」
「当たり前だ」
「リオンが私達を脅すからだよ。お返しだよー。フィオナには申し訳なかったけど。」
リオンが振り返り、私の方へ近づいて、手を伸ばした。
「ロミーさん、僕の後ろに。シルバーズさん、ロミーさんに気軽に触れないでもらえませんか」
伸ばした手がピタリと止まりゆっくりと下された。
リオンは下を向いたまま、歯をくいしばるのが見えた。
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