Re-start 異世界生活って結構自分に合っている件

ロミにゃん

1 ストレス社会は辛いです



ジリリリリリリリリ・・・


豪快な目覚まし時計の音で目が覚めた私、橘ロミー25才。彼氏いない歴3年。
寝癖、目の下のクマ、お肌ボロボロ。
女子として身体のメンテナンスはしっかりしておきたいけど、
一年前からうちの部署に来た係長の理不尽なパワハラにより、現在人生絶不調。

殴り書きのメモからの簡単なデータ入力を頼まれ、あらかじめ用意されたフォーマットに入力して提出すれば、

「こんなの作れって誰が頼んだの?“資料”作って下さいって言いましたよね!?“資料”!」

資料用のデータは貰っていないし、最初と全く言ってることが変わってたり、
欠員がでて残業を頼まれ仕事をすれば、

「何してるんですか!?何してるんですか!?残業は基本的にしてはいけないんですよ!?わかってるんですかっ!?わかってるんですかっ!?」
自分は遅く来てさっさと定時で帰るくせに!なんで!?

電話にでるタイミングを逃し他の人が電話を取れば、

「電話が鳴ってるのに微動だにしないのを何度もみています!電話に出てください!」

と、まぁこんな感じで理不尽な事を毎日毎日あーでもない。こーでもない。

私のする事なす事すべてが気に入らないのかなんなのか、目の敵にされているような・・・
唯一の休憩時間であるランチタイムでも食事をしながら、休憩の半分以上は係長の長〜い申し送り・・・
なぜ食事中に仕事の話!?

きっと今日も出勤したら嫌味を言われるんだろうな・・・
そして、貴重な休憩時間を奪われるんだろうか・・・

ダラダラと仕事に行きたくないオーラ全開で、それでも、会社へ行くための準備をはじめた。
長くなった前髪を切ろうと鏡の前に立ち、ハサミを持ち前髪を束ね、ジョキんっ!と切った。

「へぁぁぁぁぁあ!!」

つい、叫んでしまった・・・
少し切りすぎてテンションがダダ下がりの中、身支度を済ませて朝食を食べながらふと、テレビの占いの情報が目に入った。

あ、今日も最下位か、はぁぁぁぁぁぁぁ。
大きなため息と同時に机に顔がめり込むんじゃないかってくらい突っ伏した。

「最下位のあなた!〝残り物には福がある〝でしょう!これで今週末は乗り切ろう!」

朝っぱらからテンション高めのアナウンサーの声はちょっと頭痛い・・・
しかし、本当に毎日休む理由を探してしまう・・・
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・

出勤前から自暴自棄な私は重い重い腰を上げ、会社に向かった。

駅の階段を登って行く途中、同じ部署の桜子さんに声をかけられた。

「おはよーロミちゃん!今夜楽しみね!あー早く夕方にならないかなぁ!ねっ☆」

実に元気♡そしてこの笑顔!唯一の癒し。
通勤ラッシュのぎゅうぎゅう詰もこの笑顔と共になら乗り越えられる。
あー救いだ。彼女がいてくれるから今の仕事もなんとか耐えられている・・・
いつも愚痴を聞いてくれて、励ましてくれる、そんな心強い存在!
大好きだ。結婚してくれ!笑。

三日月 桜子先輩 27才 彼氏あり。
心の友。私の頼れる存在。結婚してくれ。
ハイスペック彼氏が羨ましい。
一年ほど前にうちの部署に入ってきたんだけど、彼女とは共通の趣味もありすぐに打ち解けた。
私の黒歴史を知っている唯一の存在である。
30分ほどの短い時間だけどこの通勤時間はいつも笑顔が絶えない。
出勤してしまったらお通夜のような空気が流れるから・・・

「ロミちゃん、前髪切った?可愛いよ」
「はぁぁあ、切りすぎたんですよぉ〜うぅ」

と、言いつつ会社に着いてしまった・・・
少しでもパワハラ上司と会いたくないから、ロッカーでギリギリまで悪あがきをして、5分前に部署に入ると、さっそく現れた。

「遅いんじゃないですか?もっと早くにきて、始業時刻と同時に仕事が始められるように準備したらどうですか。他の皆さんはもう仕事始めてますけど」

でたよ、朝一からの嫌味。
これでいつもモチーベーションさらにダウン。
残業はするなっていうけどサービス早出はしろって言うとか、マジ理不尽。

そもそも5分前にもういるっつーーの!
タイムカード押して10秒でデスクにつけるわ!
と心に留めて、逃げるように自分のデスクへ・・・

朝から嫌味MAXの女性は、
通称ヒステリックねちねちクソババa、(咳払い)もとい、朽田係長がパワハラ上司である。
この人こそが、悪夢であり、ストレスの元凶でーす。

「今日は一日、上の会議室にいますので、何かあれば連絡してください」

よっしゃー!ラッキー!
クソババa(咳払い)係長、今日はいない!
なんか視界が明るくなった気がする!
空気も心なしか澄んでる気がする!
今日は仕事が捗りそうだー!
わーい!隣の席の桜子さんと目を合わせにっこり笑って仕事を始めた。

ーー

係長のいない午前はとっても仕事が円滑に進めることができ、部署内の空気も明るく笑いが絶えなかった。
11:55に部署内の全員に共有メールが届くまでは・・・
一瞬ざわついた後、空気が凍りつくのがわかった。

桜子さんが社内メールみた!?と、
困惑気味な表情で声をかけて来たので、私もメールチェックをした。

『ただしく業務を送るために基本を忠実に守って仕事を進めてください。電話も率先して出てください。数字入力だけなら誰にでもできます。一つの仕事に時間がかかっていては、生産性が低すぎます。臨機応変に対応してください。残業をしないで帰りましょう。先日のようなミスで他の人に迷惑をかけないようにしてください。朽田』

え?なにこれ?おっかしーなぁもしかして私への当てつけ????
しかも社内メールで?
みんなの視線を感じるような・・・

「係長、マジ厳しいー」とか
「うわー女は怖い怖い」とか
「これ、橘のことじゃね?」とか

いろいろとみんなが話してるのが聞こえてくる・・・
私は思考回路が停止してしまってPCの前で白目を向いて廃になっていた。
休憩のチャイムが鳴っていたことにも気がつかず、気がつくと、部署内には桜子さんと私だけになっていた。

「これはロミちゃんのことじゃ無いよー!みんなに当てはまることだから!ねっ!ねっ!」

と励ましてくれているけど、いちど堕ちたら戻りようが無い・・・
また頭痛がひどくなってきた・・・
あぁ呼吸も乱れてきたわ・・・

「あははーこの仕事やめよう。なんか、どーでもいーや。ぜーんぶ捨てよう。うん。それがいい。やる事が陰湿的なんだよ!ご機嫌とってまで仕事したく無いわ!くそ!マジうぜー!クソババア!!!」

と静まり返った部屋のドアが突然開く音がして、体がビクッと反応した。
もしかして朽田!?
やばっ!!聞かれちゃった!?
桜子さんと二人でとっさにデスクの下に身を隠した。


コツン、コツン、

足音が近づいて来る!!
終わった!絶対終わった!!絶対ババアだ!
辞めると言ったけど、絶対またながーーーーーーい説教タイムだ!
あぁぁぁぁぁぁぁ死にたい!

突然桜子さんに腕を掴まれ驚いて立ち上がってしまった。

「わぁっ!!??」

男の人の声?
え!?あぁぁぁあ!ハイスペックイケメンの上城部長!
私が突然立ち上がった事に驚いた様で部長は胸に手を当てていた。

私は声が裏返しながら、慌てて私は桜子さんの腕を掴み逃げるように部屋を出た。

エレベーターに乗り込み扉が閉まったのを確認し桜子さんと顔を合わせ同時に言葉を発した。

「「聞かれてないよねっ!?」」

見つめ合ったまま数秒後、私と桜子さんはふきだしてしまった。


上城 輝部長28才
この歳で部長って結構異例らしい。
でも、上層部の誰かの息子と言う噂もある。
ハイスペックでイケメンときたら、女性社員は色めきだつに決まっている。

クソババa(咳払い)朽田係長は年下の男が上司が気に入らないらしく、結構部長がいない時にネチネチと言っているのをよく見かける。

「あはは、もーあの顔は反則ー!可愛かったぁ!ロミちゃんの驚いた顔も笑っちゃったけどねっ☆」

さらっとディスったな・・・笑
でもこうして理解してくれる人がそばにいるって本当に救われる。
半年本当に耐えたなぁ、そろそろ限界だわ帰ったら転職サイトでも調べよう。

まずはランチ食べよう。お腹すいた。




朽田のオババに会わずに帰るためにみんなも午後からは集中して仕事をしているのがわかる。私もその一人だ!!
黙々と作業を進めミスのないように慎重にチェックをして、資料を部長に提出しに向かった。
午前の一件を聞かれていないか一抹の不安を抱え平常心を保ちつつ。
それが空回りしていてようとも、定時で上がり、桜子さん家に行くんだ!

「こちらの資料の確認をお願いしまーす☆」

早く帰りたい気持ちが語尾に出てしまったが、そんなことは気にしない。
部長がしなやかに丁寧に資料のチェックをしているあいだ朽田のオババが帰って来ないかとソワソワしつつ席に戻るとさっきの、声の跳ね上がり具合を桜子さんに笑われた。


定時のベルが鳴り、みんなが帰りだした。

「俺残業だわー」とか
「飲みに行こうぜ!」とか
見慣れた週末の光景だ。

私は今から桜子さんとカラオケ行ってストレス発散するんだ!
桜子さんと夢中になって話をしてたら上城部長がすぐ後ろまできている事に気がつくのが遅れて驚いてしまった。

「おっと、驚かせて申し訳ない。橘さん、この資料、急いでたのでとても助かりました」

あ、褒められた
最近はヒステリックねちねちクソバa(咳払い)係長に怒られてばかりで、ひさびさに褒められるとなんか嬉しい。
私はイケメン耐性があまり付いていないせいか直視できない。

「他の手伝いを率先してやってくれるのはいつも助かっています橘さんはいつも頑張ってくれてるから」

でもイケメンはやっぱり言うこともイケメンだなぁと感心してしまう

「この後なんですが、ちょっと時間ありますか?」

「あー、すみません、今日はこの後、とーーーっても大事な予定がありますので、お先に失礼します」

かぶせ気味に返事をしてしまった私は他の女性社員達の嫉妬の目線にも気付かず桜子さんと会社を出た。

「ロミちゃん、さっきの良かったよ。イケメンをフるところ」
「私には桜子さんだけがいればいいんだもぉーーーん♡」

桜子さんに抱きついて笑いながら電車に乗って、この後はお待ちかねのカラオケからの桜子さん家だ。
帰宅してから家からほど近いカラオケで待ち合わせして、日頃のストレスを発散して歌いながら酎ハイを少々・・・
お酒に弱いわたしは1缶ですでにフラフラ笑
カラオケで二時間程歌い、遅めの夕飯の材料を近所のスーパーに買いに来た。
たわい無い会話を楽しみつつお泊りが楽しみすぎて妙なテンションの私の現在の格好は、上下水色のジャージ。
こんな格好は桜子さんにしか見せられない。
コンタクトも外しメガネだし、ほろ酔いの私達は気分がいい。

桜子さんと分担してお買い物をしてると、後ろから聞き覚えのある男の人の声に呼び止められた。

「あれ?もしかして、橘さん?」

振り返るとそこにはイケメン上司がいてハッとした。

「(げっ)ど、どうも・・・」

「ごめんね、プライベートの時間に話しかけたら迷惑だよね」
「い、いえ・・・こんな格好で会いたくなかったです(小声)」

私は気まずすぎて顔がひきつる。

聞こえない程の小声だったため
一瞬首をかしげるイケメン上司の顔すら神々しく、見るのも辛い。

女性社員の間では"上城スマイル"は有名でこれを見たくて、会社の通行口やエレベーターホール、部署の前などに密かに毎朝ファンが集まっているのだ。

でも私は仕事に必死で色めきだっている余裕もなく気にもしていなかったから、今日はイケメン上司と絡む事が多くちょっと慣れなくて挙動不審です。

それに今ココが会社ならば絶対に女性社員達から何を話したのか事情聴取されそうな気がする。


アレ?・・・酔っているせいかな?頭がボーとしてふらふらするような・・・

「すみません、さっきちょーっと・・・飲みすぎたかもしれません、フラフラす、る」

「橘さん!大丈夫・・・!?」

心配する部長の顔が近い気がする・・・
あ、だめだ、部長の顔が霞んで、み、、える・・・




スーーッと視界が暗転した。

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