異世界生活研修所~ワルキューレ嫁と英雄譚~

まきノ助

32 オーガの巣

 三日目は領都ハーマルから西のイエビクの町に行く。

 俺達6人は幌馬車に乗って領都ハーマルを出て、誰にも見えない所に来てから【転移門】を出す。
「イエビクの丘に、テレポゲート、オープン」

 ブーーーンッ!

 オーガに襲われたイエビクの町は、何事も無かった様に平和に見える。

「町の東に大きな川が南北に流れてるので、オーガは西側から来たと思われる。西には森が広がり、緩やかな丘が続いてるんだ。ユウリくん、又【レーダーマップ】で【探索】してくれないか?」
「はい」

 俺は【レーダーマップ】と【探索】で町の西方向をチェックする。
 敵性表示は何も出ていない。

「やはりスキルでは、何も確認出来ませんね」
「やっぱり同じなんだ」

 ジーッと、レーダーマップを目を皿の様にして見ていると、一部にモザイクの様な違和感が有るのを、又発見した。
「ルミナ先生ここを見てください!」
「どれどれっ! ほうほう。……これは認識阻害の結界が貼って有るのかも」
 んっ、デジャブ?じゃないね。

 俺は、広げてある地図の一点を指差す。
「この辺りに、結界が貼って有るかも知れないです」
「うむっ。まだ早いから、今からそこへ行って見よう」
「はい」

 幌馬車は町に入らず、西の街道を進む。1時間ほど走って、幌馬車を降りて森の中へ徒歩で入る。
「グラーニここで又、留守番しててね」
『分かりました。お気をつけて』

 六人は道の無い森の中を、マップを頼りに小1時間ほど進んで行く。
 暫くすると、

 パッリーーーンッ!

「あっ、結界があったけど、又ユウリが壊しちゃった!」
 ルミナが俺をジトッと見つめた。

「マップを見ながら先頭を歩いてるんだから……、やっぱりこうなるでしょう?」
「ユウリはやっぱり非常識です!」
 ルミナはSなのかな? 言葉攻めなのかな?

「あっ、マップに映ってる。……中級魔族は居ませんね、オーガが8匹です」
「偶像を確認しに行きましょう」
 ボアズが言った。

「私が皆に【認識阻害】の魔法を掛けてあげるわ」
 ルミナが提案する。

 ポワワ~~~ン

 更に進んで行くと谷合にオーガの集落があった。
「広場の真ん中に、又『災厄の偶像』が置いて有ります!」
 ユングが小声で言った。

「すでに魔力は補給済みの様ですね、禍々まがまがしい負のエネルギーが溢れ出ています」
 俺はボアズに進言する。
「群れが増えないようにオーガを倒して、像を破壊しましょう」

「有難うユウリ君、皆もお願いします」
「「「「「はい」」」」」

 オーガ達は、像を中心に何か獣を食べている。
 いずれ群れを増やして町を襲うのだから、可哀相だがここで奇襲させて貰う。
 俺が先頭で弓を撃った後にエリナとルミナが魔法を撃ち、オゥちゃんとボアズとユングが切り込む事になった。

「ユウリ、行きま~す」
 オーガに聞こえる様に言って、顔をこちらに向けさせた。
 俺はミスリルの長弓をオーガに向けて撃った。

 ビュンッ、ガッ。 ビュンッ、ガッ……。

 正確無比にオーガの眉間を打ち抜く。

 エリナとスクルドがシンクロしながら優雅に踊る。
「「プルルンプルルンプルリンパ、キラリンキラリンピカリンパ」」

 ピカッピカッ、バリバリバリッ、ドドドドドーーーンッ!

 サンダーストームがオーガ達を蹂躙する。

「さすがオーガだ! 生命力がオークより強い。ダメージを受けても生き残ってる」
 と、ユングが走り出して言った。

 生き残ったオーガに、オゥちゃんとボアズとユングが切り込む。
 俺は弓で援護射撃する。
 エリナとルミナは【火弾】を撃つ。

 5分程で、8匹のオーガは全滅した。
「ボアズさんもユングさんも、素晴らしい剣の腕をしてますね」
「はははっ、ありがとう。やっと腕を披露出来たよ。ユング、像を破壊して魔石を回収してくれ」
「はい」

 手分けしてドロップアイテムを拾った。

「ありがとう、これで依頼任務は完了だが、家に着くまでが冒険だからね」
「ボアズさん、小学校の遠足の先生みた~い」
「エリナ、それは俺達しか分からないよ」

 幌馬車まで【転移門】で移動して、ハーマルへ又【転移門】で移動した。

 ボアズが挨拶する。
「俺達は、これからハーマルの城に報告に行きますので、ここでパーティを解散とさせて下さい。皆さんは、泊まって行くなら昨日のホテルを手配しますけど」
「まだ昼前だけど、オゥちゃんどうしますか?」
「研修所に帰って、昼飯を食うだぁ」
「ルミちゃんとエリナもそれで良い?」
「「は~い」」

「それじゃあ、帰ります。お疲れ様でした」
「「「「「お疲れ様でした」」」」」

 俺達は領都の外に出て【転移門】で研修所に帰った。



 ハーマルの城の中で……、

 侍従長が領主のハーマル侯爵に、第3王子と騎士団長の帰還を耳打ちする。
 領主は、豪華なソファーにゆったりと腰を掛けてる貴人に顔を向けた。

「国王陛下、第3王子と騎士団長が帰って来ました」
「そうか、早いな。吉報であれば良いが」

 第3王子と騎士団長は、謁見の間ではなく応接室に案内されたので、怪訝な顔をした。
 侍従が豪華な扉を開ける。奥のソファーに、お忍びで訪れてる国王が座っていた。
「騎士団長ボアズ戻りました」
「ユング戻りました」
「ご苦労だった」
 次席のハーマル侯爵がねぎらった。

「国王陛下、こちらにお越しでしたか」
「うむ、座って寛いでくれ。疲れて居るだろう」
「有難う御座います」
「ユングも座れ」
「はっ、失礼します」

「『災厄の偶像』は見付かったのか?」
 ハーマル侯爵が聞く。
「はい、見付かりました。……偶像を壊し魔石を回収して、オークとオーガを討伐しました」
「何と! 全ての脅威は取り除かれたと言う事か?」
「はい。……中級魔族も捕まえました。偶像の魔石に、マナを補給していたのです」

「ほほ~う、中々やりおるのう」
 国王が感心した。
「例の若者の実力はどうだったのだ?」
「ユウリは弓を撃つと、魔物の眉間を百発百中でした。魔法は【転移門】【レーダーマップ】【探索】を使っていました。同行した若い女性2人は、【雷嵐】サンダーストームの魔法を使っていました」

「うーむっ、上級魔法を使ってるのか。……人族なのか?」
「ユウリと妹のエリナは人族だと言ってました」

「他の者は?」
「妖精族だと思います」

「幼い神獣の契約者はユウリなのか?」
「いいえ、ユウリの妹エリナの従魔だと言う事です」
「人族の若い女性が、神獣を従魔にしてると言うのか!」

「「……」」

「貴族籍を与えて、王族と結婚させるか? 兎に角、国に留め置かなければ……」

「父上、宜しいでしょうか?」
「何だ、ユング。申してみよ」

「ユウリと一緒にいる者達は、妖精族の女神と巨人だと思います」
「……神々はこの地を去ったと言われてるのだぞ」

「はい。……ですが、見覚えがあります。髪の色、髪型、化粧、服装は違いますが。ユウリの妻はブリュンヒルデ、エリナの友人はノルンのスクルドだと思います。そして男の顔はオログ=ハイそっくりです」
「でかいのか?」
「いいえ2メートルぐらいですが、変身してるのでしょう」
「……う~む。……もしそれが本当だとすれば、国軍並の戦力だと、言う事だ」

「父上、彼らは地位や領地を求めていません、冒険ゴッコを楽しんでるのです。それに妖精の森に住んでる彼らを臣下にすれば、妖精王フレイの怒りを買うかもしれません。友好関係を築き上げ、妖精族と不可侵条約を結んだ方が良いと思います」

「ノルン地方の空白地帯を無理に領地にしなくても良いと言う事か」
「はい」

「うーむっ」

「陛下、対外的には既に領地で有るかの様に思わせ、実状は友好を深め懐柔政策を採りましょう」
 ハーマル侯爵が進言した。
「ふむ、それがよかろう。ボアズ、ユング、聞いた通りじゃ頼むぞ!」
「「ははーっ」」

「父上、ユウリはフォレブ草原に冒険者の宿を立てました。魔物討伐の褒美として、初年度の税金の免除を与えては、如何しょう?」

「良いアイディアじゃ。しかし、それだけでは足りぬな」

「陛下、ユウリは目立ちたくない様なので、派手な事をしても喜ばないと思いますが」
 とボアズが言った。

「草原に宿を立てたのですから、家畜を褒美にしたら喜ぶのではないでしょうか?」
「ふむ、ユングよ、今日は冴えておるな!……ハーマル侯爵、早速手配してくれ」
「はっ、仰せの通りにいたします」

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