異世界生活研修所~ワルキューレ嫁と英雄譚~

まきノ助

31 オークの巣

 次の朝、幌馬車で南西に街道を進み、森に入る所で降りる。
「グラーニここで留守番しててね」
『分かりました。ご無事で帰りますように』

 六人は道の無い森の中を、マップを頼りに小1時間ほど進んで行く。
 暫くすると、

 パッリーーーンッ!

「あっ、結界があったけど、ユウリが壊しちゃった!」
 ルミナが俺をジトッと見つめた。

「マップを見ながら先頭を歩いてたから……、ショウガナイよね?」
「普通の人族は結界に惑わされて方向を変えてしまうのに、ユウリは壊して直進してしまうなんて、人として非常識です!」

「え~っと、良かったの、悪かったの?」
「良かったけど、自重しなさい!」
「……はい。……どうやって?」
「ぶつぶつ言わないっ!」
「……はい」

「あっ、マップに映ってる。……中級魔族が1匹、オークが16匹」
「……中級魔族がいるのか。偶像が有るか確認したいのだが……」
 ボアズが躊躇ためらってる。

「私が皆に【認識阻害】の魔法を掛けてあげるわ」
 ルミナが提案する。

 ポワワ~~~ン

「これで良いでしょ。危ない時は【転移】するのよ!」
「俺達は転移出来ないが……」
 ユングが呟いた。


「それじゃあ、列の順番を決めましょう。
 先頭が俺で、オゥちゃん、ルミちゃん、エリナ、ボアズさん、ユングさんで、どうですか?」

「「「「「わかりました」」」」」

「もしもの時は、俺とオゥちゃんで盾役をしましょう」
「んだなぁ」


 更に進んで行くと、谷合にオークの集落があった。

「広場の真ん中に『災厄の偶像』が置いて有る!」
 ユングが小声で言った。

 木々の間から見下ろしてると、魔族が片膝をつき、像に触っているのが見える。
「群れを大きくする為に、像の魔石に魔力を補給してるのだろう」
 ボアズの言葉に皆が目視で確認する。

「あっ、アレを見て!」
 ルミナが指を差す。

 白い子虎と白い子犬が、オークの間を抜けて魔族の背中に近づいた。

「まさか、ナオちゃんとユウナ?」
 俺は2人を【鑑定】する。
「間違いない。幌馬車に乗ってたのか? どうしよう!」


 ペシッ、ペシッ、

 ナオちゃんが魔族の腰の辺りに猫パンチを始める。

 ペシッ、ペシッ、

「なんだ?」

 ペシッ、ペシッ、

「あとにしろ」

 ペシッ、ペシッ、

「じゃまだ」

 ペシッ、ペシッ、

「……おかしいな……魔力の流れが……悪いのかな?」

 ペシッ、ペシッ、

「あっ、あれっ、……ガクッ」

 中級魔族がグッタリと倒れる。



「俺は【転移】で2人を回収します。皆は散開して援護して下さい。【転移】」

 シュイーーーンッ!

 俺は2人を抱きかかえて、すぐに戻る。
「【転移】」

 シュイーーーンッ!

 転移したにも関わらず、魔族とオーク達がこちらを見て睨みつける。
 ヘイトを集めてしまったのだ!

「迎撃しますっ!」
 ボアズが叫んだ。

 俺とオゥちゃんが盾役と成る為に前進する。オゥちゃんが更に一歩前に出る。
 俺はミスリルの短弓をオゥちゃんの斜め後から撃つ。
 ボアズ達が居るのでスキルを使わない。
 敵との距離が短いし、短弓のほうが素早く続けて撃てるのだ。

 ビュンッ、ガッ。 ビュンッ、ガッ。 ビュンッ、ガッ……。

 正確無比にオークの眉間を打ち抜く。

 エリナとスクルドが優雅に踊る。
「「プルルンプルルンプルリンパ、キラリンキラリンピカリンパ」」

 ピカッピカッ、バリバリバリッ、ドドドドドーーーンッ!

 サンダーストームがオークに降り注ぐ。アッと言う間に、16匹のオークは全滅した。


「オノレーッ! 魔族の恐ろしさを思い知るがよい!」
 魔族が闇魔法を詠唱する。
「エロイムエッサム、エロイムエッサム……、
 古より世界の頂点に君臨した竜種の王、地の底より蘇り、我が敵に立ち向かえ。いでよっドラゴンゾンビッ!」

 シーーーン

「しまった、魔力切れか?」
 魔族はマナポーションをガブ飲みする。

 俺達4人は「シラーッ」と、黙って様子を見てる。

「エロイムエッサム、エロイムエッサム……、
 古より世界の頂点に君臨した竜種の王、地の底より蘇り、我が敵に立ち向かえ。いでよっドラゴンゾンビッ! 彼奴等きやつらをブチッと踏み潰すのだ!」

 シーーーン

「何故だ! 魔力は満タンなのに?」
 魔族は首をかしげて混乱している。

 ナオちゃんが何か言い出した。
「エロエー、エロエー……、デーヨ、ドーーゾービッ!」
 地が揺れて黒い靄が一面に沸き上がる。地上20メートル程の空間に靄が凝縮していき、巨大な骨の竜が現われた。

 ドーーーンッ、グシャッ! ブチッ……。

 魔族は骨の竜に踏み潰された。……竜は霧の様に消えていった。

「「「「「「…………」」」」」」
「…………ちょっと可哀相だったね~」

「……オノレ……」

「ボアズさん、魔族がまだ生きてます!」
「魔族の体は強靭だからな」

 ボアズは魔族捕縛用のロープで中級魔族を縛る。銀の繊維を織り込んで、マナドレインが付与がされている。
 他の者達には、ドロップアイテムを回収して貰い、ユングは像を砕き魔石を取り外し、瘴気をさえぎる特別な袋に入れた。


「それじゃあ、帰りましょう」
 ボアズが皆に声を掛けた。

 俺は【転移門】を出す。
「グラーニと幌馬車の所へ、テレポゲート、オープン」

 ブーーーンッ!

 ゲートを潜り、全員幌馬車に乗車する。
 再び俺は【転移門】を出す。

「ハーマルへ、テレポゲート、オープン」

 ブーーーンッ!

「【転移門】を連続使用するなんて! ユウリさんは、どんだけ魔力量があるんだろー?」
 ユングが独り言を呟いた。
(あちゃ~、ヤラカシチャッタかな?)


 ハーマルから直接見えない所に転移して、幌馬車を走らせ領都に入った。

「お疲れ様でした。今日は美味しい物を沢山食べて一泊しましょう。高級ホテルを押さえてありますから。すべて依頼者が支払いますので、遠慮せず楽しんで下さい」

「「わ~い、ヤッタ~」」
 エリナとルミナが小躍りした。



 ナオちゃんは魔族から猫パンチで、マナとスキルを奪ってしまいました。
ナオちゃんの母は神獣で、父は虎人族です。ユウリ達もその事は知りません。

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