リトルシスターズ!

四宮カイト

第9話 「部屋の外が怖いか?」

 両親が事故で亡くなってから1年私は引きこもり続けた。
 当然そのことも悲しかったが引きこもった本当の理由は……。
 
 小鳥遊秋穂の朝は遅い。
 家族全員が学校に行ってから目を覚ます。
 彼女の兄、小鳥遊歩が朝、昼、晩の食事とおやつを用意してくれる。
 今日も兄が朝食を運んでくる。


 「秋穂、朝食を持ってきたぞ」


 私は引き出しを開けると、おかしのストックが切れてることに気づく。


 「……カントリーマーム……プリン……」


 家族とのドア越しの会話すら最近はまともにできなくなった。
 
 「わかった、補充しておく。だけどちゃんと昼飯は食べろよ」


 兄は不登校の私に対して怒るでもなく、呆れるでもなく、いつも優しく接してくれる。          


 「……うん」


 兄が登校してから私の一日が始まる。
 引きこもりはたいていネトゲをしているイメージがあるが私は違う。
 私はカバンから筆箱と教科書、ノートを取り出し勉強を始めた。


 兄や姉さんたちが学校で勉強してる間は自分も勉強する。
 私自身の事情で学校を休んでるのだからこのくらい当たり前。
 兄が小学校と話をつけてくれて、学期末と年度末に学校から渡されるテストである程度点数を採れれば進級を認めてくれた。
 家では兄が作ったプリントや買ってきてくれたドリルに取り組み、分からなければ兄に紙に書いて質問する。
 ここまで私に付き合ってくれるのだから私もそれに応えなければならない。
 だから今日も一日頑張る。


 夕方になって春菜姉さんが帰ってきた。
 鍵がないらしい。
 玄関から春菜姉さんが、開けて!、と騒いでいる。
 私は部屋を出ようとするがドアを開ける前に足が動かなくなった。


 (……ウソ……)


 物理的に動かなくなったわけではない。


 (……怖い……?)
 
 恐怖に似た感情が私の動きを止めた。
 前までは普通に部屋から出て玄関のドアを開けられたのに……。
 結局兄たちが帰ってくるまでドアを開けることができなかった。
 

 夜になって兄が夕食を届けてくれる。
 彼が去ったあと、ドアを恐る恐る開けてトレーを部屋に入れて気づいた。


 「……手紙?」
 

 私は渡された手紙に目を通すと驚きのあまりそれを落としそうになった。
 

 『部屋の外が怖いか?』という1文にさっきの恐怖が何なのかわかった。


 私は食べ終わった後、プレートに手紙を置いてドアの外に出した。
 そこには一言。

 『うん』、と。

 
 
 
 
 
 

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