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はうたゆしか

80 強くなりたい


「じゃあこの先にある国は平和な国なのか!」

昼下がり、一夜明かした場所から動かずに一行は休んでいた。

「そうです。“オルゴル王国”はお金持ちばかり暮らす国。だから、シキ王に膨大なお金を納め、自分らの国を買ってるんです」

リタはミヅキにそう教えた。

「なら、ゆっくり休めそうね」

「いいや、そうでもない」

ちょうど目を覚ましたアレンがサヤカに言った。

「国を買ってるだけで、シキに歯向かう軍事力はない。だから、国全体がシキの犬」

アレンのそれに、ミヅキがクエスチョンマークを浮かべる。

「あー簡単に言うとだな。シキにいい顔するために、反逆者を取り締まってシキに手渡してるってことだ」

「なにぃ?!じゃあめちゃくちゃ敵じゃん!!」

ミヅキが騒ぐ。

「そーいうこった。だから、目立つ行動はよせ。もう顔が割れてるだろうしな」

「あっ、アレン。これ」

ミヅキはアレンに磁力の石を渡す。

「俺ったらあんまし上手く使いこなせなかった…」

「……今回のことで思ったんだが」

ふと、アレンは磁力の石を見つめ言う。

「イェーガの力は測りきれない。俺やミヅキらだけじゃ、止められないことがこれからもでてくる」

「……」

「自分や仲間を守る力を身につけよう」

アレンはそう言いきった。

アレンは自分がこんなことを言うようになった事実に驚く。

失いたくない、かけがえのない仲間にだからこそ言った。

失われない、消えることないと信じてるから。

「私も…そう思ったわ」

サヤカが口を開く。

「いつまでも守られてばっかり。私も戦いたい」

サヤカの目はしっかりと意思を持っていた。

「ぼ、僕も。知識だけじゃなく、戦力としてもみんなの力になりたい」

シオンがいつもより大きい声で言う。

「私もです!強くなりたい、心も力も」

リタも同意だった。

「俺もだ、みんなを絶対守りきる力が欲しい!」

トエムが拳を握る。

「俺も、もっともっと強くなって…」

ミヅキはサヤカを見た。

「サヤカの父ちゃんから世界を奪って、サヤカの幸せを取り戻して」

視線をアレンに向ける。

「アレンをよくわかんねえ一族の血筋ってやつが気にならない世界にして」

「シオンの兄ちゃんをシオンのとこに戻して」

「リタとかトエムとか、世界中の人が笑って暮らせる世界を取り戻す」

ミヅキは柔らかに笑う。

「俺はそれができるくらい強くなりたい」

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