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55 犠牲ゼロ
「マサムっ!!」
「アレンか、なんで来た?」
マサムがあまりにものんきで驚く。
「撤退だ!みんな、今すぐ撤退するんだ!」
「どうしたアレン、船上で戦えとお前が命じたんだろう?応援がすぐそこまで来ていたからって」
「はあ?!誰だ、セイレンかそれをマサムに言ったのは!」
「…!お前の指示じゃなかったのか!」
「ああ!セイレンは7番隊ごと船を沈める気だ!時間短縮でいっきに敵を倒すために!」
10隻の船にちりじりに散った7番隊とキョウガの8番隊の半分を撤退させる。
「あのやろう、何している!!」
セイレンは怒った。
雲はもうできていたため、あとは雷を流し込むだけ。
「っち、もう雲ができてやがる…。マサム!全員撤退したら俺に合図を!」
マサムから合図がきてから、雷を流せばいい。
犠牲ゼロの戦いへ━━。
アレンは全員の撤退を見守ることなく、セイレンとキョウガのいる海岸から少し離れたところへ走った。
「どうやらヤツは隊を撤退させている」
「のようだな。キョウガ、お前の副隊員に雷を持つやつがいたな」
セイレンはキョウガを見る。
キョウガは静かに頷いた。
「あと30秒待つ。雷を放つ予定時刻だ」
セイレンはそう言いきった。
「マサムさん!あれ!!」
撤退する兵士を誘導していたマサムに、1人の兵士が言った。
その兵士が指さす船では大きい大砲が王宮の方角に向けられていた。
「…!でかい、あれなら王宮に届かなくても街が潰れる!!」
マサムはその船に向かって走る。
「俺1人でいい!お前たちは速やかに撤退しろ!!」
「マサムさんっ!!」
マサムが船に着いたのと同時。
アレンがセイレンの元にたどり着いたのと同時。
ピカッ………!!!
ドッシャーーーン!!!!
ピカッ……!!
ドッシャーーーン!!
雷の雨が数秒鳴り響いた。
「おい!なにしてる!!!!」
アレンがセイレンの胸ぐらを掴むと、キョウガがそれを止めた。
「よく見ろ、撤退してる!」
「全員かはわからない!兵士を犠牲にする意味なんてなかった!!」
アレンはそう言いつけ、再び船の方へ走った。
「おい、みんな無事か!」
「アレン隊長!はい、全員逃げたかと…!」
「よかった……!」
アレンが胸を撫で下ろす。
「アレン隊長!マサムさんが!!」
1人の兵士が、青い顔をして走ってきた。
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