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49 サヤカとトノメ
雪の壁が破壊され、壁ごと殴られたトノメが倒れていた。
サヤカは壁に刺さっていたままだった剣を抜き、トノメに突きつける。
「あなたに私は殺せない」
「…………」
「殺すのなら、さっき殺してたでしょ?」
サヤカが壁に剣を刺した時。
「そうね、私に人を殺める勇気はないわ」
サヤカはすっと剣をおろし、倒れるトノメの上に乗る。
「でもここで止まってる暇もない」
サヤカはトノメの首横をトン!と叩く。
トノメが気絶し、吹雪が止む。
「ごめん。トノメ」
 
サヤカは小さく呟いた。
                                  *
「サヤカ様ってば、いっつもサイキ様の話ばかり」
「えへへ。だぁーってさ、サイキお兄さまがさ」
その続きを言おうとしたサヤカをトノメが止める。
「いまは!私と遊ぶ時間っ」
「あははっそうだねっ。いこっトノメ!」
サヤカとトノメは4歳から5歳までの1年間だけを同じ王宮で過ごした。
サイキら兄がサヤカに構えない時、サヤカの遊び相手はトノメだった。
「絶対赤の方可愛いもん!」
「そんなことないわよサヤカ様!女の子はピンクだよ!!」
昔っから、ささいなことで言い合いもした。
1年だったけど、別れるのは寂しかった記憶がある。
                                 *
「先に進ませてもらうっ」
サヤカは気を失ったトノメにそう言った。
「サヤカ!!」
「!!」
そのサヤカの元へ、ミヅキらが到着した。
「雪女…さすがサヤ姉さん!!」
「別にボコボコに殴ったりなんてしてないわよっ」
「なんもいってねーって!さ、行こ!!」
ミヅキの口が、怪力だのゴリラだのオトコンナだの言いそうだったのを目で牽制しつつ、先を急ぐ。
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