作成中止

はうたゆしか

42 行くあて


「なあリタ。ブランシェットに帰るっつっても、お前行くあてあるのか?」

ミヅキは船上で釣りをしながら聞く。

「はい。父の側妻…私の母と、その召使いが数人。それと、王族が代わってもカタートニーについてきてくれた兵隊さんが」

兵隊、と聞いてアレンが少し反応する。

ルチャルド一族は“個人”ではなく、“王族”に仕える一族。

王族が代わると、ルチャルド一族の頭も代わる。

つまり、前王カタートニー一族に仕えていたのはアレンの祖父にあたる。

「ねえアレンさん、その兵隊って」

「ルチャルド一族の可能性はある」

サヤカにアレンが答える。

「お前が気にすることは無いよ。この右目のことも、ブランシェットで少しわかるかもしれない。そしたら話す」

「ううん、そういうつもりで言ったんじゃないの」

「なーシオン。“命”のナタストーンってなんなんだ?」

ミヅキの興味の対象は次から次へ代わる。

「僕にもあんまり…本来、存在しないと扱われてきたものだから」

シオンが続ける。

「考えられるとすれば、“生命をつくりだす”か“寿命を操る”このどちらかだ」

「そりゃあ絶対誰にも渡したくないよな…」

トエムが呟くと、リタが頷いた。

「ブランシェット王国は安全なのか?」

「いえ…。ブランシェットにはシキ軍の大きい基地があります。私たちは、隠れて住んでます」

「じゃあお前の母ちゃんたちも心配だな…」

ミヅキがなにも釣れないのか、釣りをやめる。

「はい…ひと月も音信不通になってしまった。私を探して目立つことをしてなければいいですが……」

船は最短距離でブランシェット王国を目指す。

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