作成中止
40 王女と前王女
「でたぁぁぁぁあ!」
「おかえり…」
洞窟を出ると、シオンが待っていた。
洞窟に再び電流が走る。
「アレン、大丈夫?」
「なんとかな…とりあえず、ナパ村まで歩こう」
ナパ村まで熱帯雨林を歩き進む。
「みなさん、ありがとうございました」
ナパにぽつんと1つだけあるトエムの家。
リタが頭を下げる。
「驚いた、カタートニーに生き残りがいたなんて」
アレンがリタに言う。
前王・カタートニー一族は30年前にシキが王となったとき、殺されたはずだった。
「私はたしかに前王の娘ですが、前王と側妻の間の子です。だから、生き延びれた」
「なんでイェーガに捕らわれてたんだ?」
「前王は、私の父はこの世に1つしかないとされる、“命”のナタストーンを持っていました」
「命!?それって、ただの都市伝説的なのじゃないの?」
サヤカが驚く。
「いいや…たしかに僕の兄もその石の存在を探っていた…存在しても、おかしくない」
「お前、持ってるのか??」
ミヅキがリタに聞くと、皆黙ってリタの答えを待つ。
「今どこにあるのか誰にもわからないんです。父は私が生まれる前に殺された…でも、命を落としてまで父が、カタートニーが守ったその石は誰にも渡したくない」
リタはそう言いきる。
「そうよ。私のクソ親父にそんな大切なもの渡す必要ない」
サヤカが呟く。
「親父?おいサヤカ、お前って一体」
トエムがサヤカの方を見る。
「リタもトムもこれを知ったら私に憎しみをぶつけるかもしれないけど」
サヤカはひと呼吸おく。
「シキは私の実の父」
「な……!」
サヤカのこのステータスが、どれだけ彼女を苦しませてきたか。
やっとできた仲間にも、裏切られ続けた。
でも、今は━━━。
「王女だぁ?!こんな品のねーやつがぁ?!」
「……悪かったわよ」
「んまっ、おめぇに王女は似合ってねーよサヤカ。俺はお前を王女として扱わないからなっ」
トエムがニカッと笑う。
「お前なあサヤカ。自分を王女だと思ってんのかよ〜。俺は1秒たりともお前を王女なんて思えなかったぞ」
「ミヅキ…」
サヤカは気にしていた、いつも。
世界から平和を奪い。
ミヅキやトエム、リタから両親を奪い。
シオンから兄を奪い。
ルチャルド一族を兵器として扱う。
たくさんの幸せを奪った父の娘であることを。
「ありがとう、みんな…」
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