作成中止
35 争いのない世界をつくる方法
するっ……。
アレンの右目を覆う布が落ちる。
磁石の力でくっついていた布だったため、両手を拘束されたら取れるようになっている。
アレンの右目が赤色にぼんやり光る。
キィィィィィィィィィン…………。
ハリが2本とも何かに当たって落ちる。
「…“結界”の力」
「ずいぶんナタストーンに詳しいなぁ」
「なぜお前の目にナタストーンが埋め込まれている。この技術はそこら辺のヤツは持っていない」
アレンはニヤッと笑いながら自分の体を結界で覆い、沼から這い上がる。
「ま、俺も“そこら辺のヤツ”とは違うんで?こうして生き延びてきたわけだ」
「お前は拘束する必要があるらしい」
男が右手を上から下へ手を動かすと、アレンへ向けて雷が落ちる。
バリバリバリバリっ…。
アレンは制御していた電流を使い、雷を自分の横に誘導した。
「結界とは珍しいナタストーンを持っている。しかも、目に。お前、何者だ」
アレンは男を結界で囲う。
「さあな…?ルチャルドの血でもひいてんじゃねぇか」
アレンは薄く笑う。
「ルチャルド……?あの傭兵一族のことか。俺らにとっては敵だ。ルチャルドの名は1番平和を遠ざける」
「それは俺も同意だ…。だがお前らイェーガもシキも、ナタストーンを1部の人間に集めるのは間違えている。お前らの目的はなんだ!」
「争いのない世界をつくる方法…簡単だ、こんな世界を無くせばいい」
男はニヤリと笑う。
「知ってるか?世界中すべてのナタストーンを集め凝縮すると、大爆発が起こる。この世は一瞬にして更地に変えられる」
「争いを無くすために?」
「ああ、そうだ!イェーガはそのために作られた!この世すべての悪が、憎しみが消え失せればいい!」
アレンは黙ってそれをきいている。
「今のこの世に価値のあるものなど、大切なものなど、ない」
「ああそうだな俺もそうだ」
大切なもの、失いたくないもの。
「でもな、大切なものってのは目に見えねぇんだ」
アレンが結界を強くする。
「失ってから気づく。そのありがたみに」
「……」
「俺はお前の言うこともわかる。だが、お前らイェーガを野放しにしていれば、俺はまた大切なものを失う」
結界に黒い文字が浮き上がる。
「ならばお前はどうする。イェーガもシキもお前のような反逆者も争い終わるのか」
「さあな、知ったこっちゃないね。俺はただ、戦うだけだ」
結界の“封印”の紋章ができあがる。
「あの人の答えを探して━━!」
カッ。
強い光の後、結界こど男は消えた。
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