作成中止

はうたゆしか

20 言えない過去


サヤカの2人の兄を殺し、シキ軍の隊長であるルチャルド・フウレンはアレンの父━。

「…お前らに会った頃はこのことを最後まで隠そうと思ってた」

アレンはそう呟く。

「なんせ、俺たちにとって俺の家族と親戚は“敵”になる」

サヤカは言葉がでない。

どれほどの苦しみか。

肉親が、血の繋がりのある者が敵なのは。

「でもお前が王族と知って隠していられなかった」

「アレンさん…アレンさんが背負うことじゃない。ごめんなさい…何も知らないのに、信頼できないなんて言っちゃって私」

「みんながみんな、ミヅキみたいなわけじゃない。信頼できなくて当然だよな」

アレンは軽く笑う。

アレンの過去はまだ深そうだった。

「ミヅキは、アレンさんのこと知らなくても真っ直ぐアレンさんを信用してた」

「あいつはそういうヤツだ」

サヤカはアレンの正体を少し知れ、満足そうだった。

「戻るぞ、明日も早い」

「はーい」

先をゆくアレンの背中を頼もしいと思った。

「あのルチャルド一族の跡取りさんだもんね、戦いに関してはエリート。シキを倒せるのはアレンさんかもねっ」

「そうでもないさ…それに、王を倒したがってるやつならあいつの方が」

2人の頭にはミヅキの姿が浮かんだだろう。

ミヅキにはまだ自分がルチャルド一族ということは言ってない。

サヤカにも、全てありのままの過去を話してはいない。

話したら、離れられてしまいそうだから。

2人に。

自分が今までやってきたことは━。

(仲間……ね)

歯がゆくも、アレンはミヅキとサヤカを信じることにした。

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