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17 願われた幸せ
「サヤカ、逃げろ!王宮から離れろ!」
泣き叫ぶサヤカに、サイキはそう叫ぶ。
「いや、お兄さまも一緒にっ」
「サヤカ…お前だけでも」
シキが小刀を振りかぶる。
サヤカの目から涙が落ちる。
そのぼやけた視界と火の向こう側。
サイキがいつもの笑顔をむけていた。
「幸せに生きてくれ」
ザシュッ…。
涙と炎でサイキが刺されたのは見えなかった。
見えなくてよかったのかもしれない。
「なにをしている、サヤカを捕らえろ!」
「……!!」
兵士がサヤカにむかって襲いかかってくる。
「お逃げください。サヤカ様」
そう言い、サヤカの前に立ちふさがったのはサヤカの召使いのオリマーだった。
「いや……っ」
「サイキ様の言葉を聞いておられたなら、お分かりでしょう?」
―お前だけでも 幸せに生きてくれ
「サイキ様の残された想いを踏みにじってはいけません。さあ!行け!」
「っ……!!」
サヤカはそれから1度も振り返らないで走った。
王宮を出ても止まらず、振り返らないで。
そして、やっと止まった時。
サヤカはひとりぼっちになっていた━。
                                  *
                                  *
                                  *
「この石は、兄たちの暗殺計画の前の日にサイキ兄さんが私にくれたネックレスに埋め込まれていたもの」
サヤカはネックレスを握る。
ひとりぼっちになったサヤカは盗んで命を繋ぎ、シキを恨み生きてきた。
「私にとっての幸せは、シキが消えないと訪れることはない」
「だから、シキ軍を潰して…」
「反逆者の組織にいたこともあった。でも、彼らもシキの力を前にして、命が惜しくなって、怖くなって、勇気がなくなってあきらめた」
サヤカはミヅキとアレンを見た。
「あんたを信じるって言ったけど、あんたに任して丸投げにしてなんかない」
サヤカの目には闘志が宿っていた。
「私もシキを王座から引き下ろすまで、絶対に諦めない」
ミヅキはうんうんと頷く。
「私がシキの実の娘と明かしたのはあんたらが初めてよ……」
サヤカはふふっと笑う。
「なんでかな、連れ去られたとき追いかけて来てくれたのは初めてだったから。嬉しかった」
今までも、反逆者の組織やチームにいてシキ軍に捕まったことはあった。
そのときの仲間は誰一人助けになんてこなかった。
「当たり前だ、仲間だろ!な、アレン!」
ミヅキはくったくない笑顔をサヤカにむけた。
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