作成中止
13 怖い檻
サヤカが5歳になったころ。
「こんなやり方じゃ、幸せな人なんて1人もいない」
夜、聞き慣れた兄たちの話し声で起きた。
「父のやり方は、おかしい。平和な世界は人を殺さず成し得るものだ」
「……サイキ兄さん。あなたが王座につくまで待ってられない。今すぐにでも父を止めるべきだ」
サヤカは幼いながら、英才教育を受けていたため、感じ取った。
兄たちは、よくないことを考えている。
それは、父が悪いことをしているせい。
「兵は、サイキ兄さんに協力してくれる。父のやり方に納得している者など、いないはずだ」
「すぐにとは言わない。でも、3年以内に」
まだ11だった長男サイキの決意。
その時の言葉は、サヤカには衝撃が大きかった覚えがある。
「父・シキを暗殺する」
サイキの口は、はっきりそう言った。
暗殺、なんて言われてもよくは分からない。
でも、それがいいことではないのは知っている。
そのよくないことを兄たちがやろうしとしているのは、よい世界を作るため。
父が作っている世界は幸せなどない世界だったと、知った。
それでも、父は父━。
わずか5歳で、暗殺のことをきいたサヤカは決行することになる2年先まで心がずっと騒いでいた。
兄たちの暗殺計画が、父側につく者にバレたら命はない。
大好きだった王宮も、サヤカにとってはただの怖い檻の中と変わった。
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