讐志~SHUSHI~

黎旗 藤志郎(くろはた とうしろう)

第三章 告白

「クソ...クソがぁ早めに起きとけば...。」
紀陸は寝坊して学校が始まりそうな時間に
家を出ていた。何にも当たれないストレスに
苛立ちを感じ、ただ走っていた。
通学カバンを片手に己の出せる力の全てを 
出すように走っていた。
「はぁ...はぁ...。学校ってこんなに 
 遠かったっけ?」
そんな原始的な疑問を持っているとどこから
か聞きなれた学生靴の足音が聞こえた。
タッタッタッタッ
「お!紀陸!お前も遅れたのか!」
声の主は康介だった。
康介と同じようになんだお前もかと
康介に言い返した。
「やっぱり週明けは遅れるもんだよなぁ。」
康介は走るのをやめて紀陸の側まで
駆け寄った。
「んーまぁな!ってゆーかお前1回も
遅刻したことないのに珍しいな!」
「あぁ?そーだっけ?1回はしたことある
気がするけど?」
「いや!ねぇよ!お前は!」
「あれー?そーだっけな?」
遅刻常連の紀陸には康介のとぼけが嫌味にしか聞こえていなかった。
「ま!とりあえず急ごうぜ!」
バックを肩にかけ直して走ろうとした。
「いや!まて!もー既に遅れてるし
急ぐ必要はないんじゃないか?体力の
無駄だろ?」
「いや...まぁそーだけど1分でも早く
学校に着いた方がいいだろ。」
「変わんないぜ?1分変わろうが変わらまいが怒られるのは確定だぜ?」
康介の目は自信たっぷりで紀陸を見下げていた。
「うーん...まぁいいか...歩くか。」
「そうこなくっちゃ!」
康介は得意げに紀陸に向かって指を鳴らした。紀陸はうるさいと思いつつさっきまでの
走っていた荒くなった呼吸を直した。
そして康介は急に「ってゆーかさ」と新たな
話題をふりだした。
「ってゆーかさ。急で悪いんだけど
俺の恋バナに乗ってくんない?」
「急すぎるわ!まぁ...いいけど。俺で良ければ」
「言いどころか助かる!ありがと!」
「んで?」
言おうとしているのは分かるが自分から話題をふったというのもあってかなり恥ずかしがっているといのが紀陸にはわかった。
「ま、まぁ無理していわなくても」
「好きな人...いるんだ。」
「誰?」
「それは置いといて話を進めたい。」
「おー、わかった。じゃあそうする。」
いつもトントン拍子で会話をする康介は
今回の言いたくても言えないことに苛立ちを
感じ始めていた。
「そいつと...仲が良くてさ...。」
「おう。それで?」
「フラれたらその...よくある今後の関係が
怪しくなってくる...じゃん?」
「まぁ...そうだなぁ。」
「だよなぁ...だからどうしようか迷ってて。」
「言いたいことは分かる。」
「どうすればいいんだろなぁ。」
苦悶の表情を浮かべた康介は頭を抱えて
空を仰いだ。
「でもなぁ。」
そんな康介に紀陸は割って入った。
「ん?」
「でもな!フラれたとしてそこで気まずくなるか、ならないかはお前次第だ。
ましてやそこで気まずくならないんだったらまだチャンスはあるんじゃねーの?」
「ははっ。なんだそれ励ましには聞こえねーよ。」
「そうか?結構励ましたつもりだったけど。」
紀陸の励ましに康介は笑い紀陸は手で頭を
わしゃわしゃとかいた。
「んでさ!好きな人誰なの?」
紀陸は少し笑いながら聞いた。
「この際もう言うか。」
「おう。誰なの誰なの?」
食い入るように聞いた紀陸は体を康介に寄せた。
「あー。美佳。美佳だよ。」
「え?おーまじか。」
「やっぱいけねーか?」
「行けると思う。まぁわからんけど。」
「そうか」
康介の好きな人が美佳だということを聞いた
紀陸は右にいる康介には見えない左手で
太ももの制服をぐしゃっと握った。
そして、いままで、感じたことの無い
苛立ちに紀陸は襲われた。


(これが...嫉妬ってゆーだよな。)

コメント

  • 湊

    好きな人が同じ。これって辛いんですよね!私もありました!

    1
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