讐志~SHUSHI~

橘 木幡(たちばなの こはた)

第2話 放課後と帰り道

放課後。
「きーりーくー」
真っ先に紀陸の失態を見破った美佳は真っ先に紀陸を呼んだ。
「ん?帰りの話なら覚えてるよ。」
朝の分紀陸は美佳に反撃するように言った。
「えー?てっきり忘れてるのかと。」
また、紀陸が忘れてるそれをいじろうと
思っていた、美佳の計画は失敗し少し
残念そうに言った。

キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン

誰もが聞きなれたチャイムが5人の心を動かす。やはり朝の話の通り5人は帰りのことで頭がいっぱいであった。
「よっしゃ!帰るぞ!!」
彩香と慎也は息を揃えて言う。この2人は
勉強と言うより運動系の人間で同じタイプの2人はよくセリフが被ることがある。
そして、校門を出て少し広めの歩道を5人
横1列になって歩いた。
「ほんと。この5人で帰るのは久しぶりだな。楽しみで仕方なかったわ!」
そういうと康介はバックを肩にかけマフラーに深々と顔を入れる。
「そうだな!俺は康介とは長いけどみんな
とこんなに仲良くなれるとは思ってなかったなぁ。」
そう、紀陸が言った通り康介と紀陸は家が近いことから幼なじみとして一緒に暮らしてきたようなものだった。
しかし、他の3人とはこの高校で知り合い
仲良くなったのである。
「俺もそう思っててさ。康介みたいな完璧なタイプは正直無理だと思ってたけど今では大親友だしな!」
そう言った慎也は話題に載せた康介の肩を組んだ。
「私も康介みたいなタイプはちょっと無理だったかな。」
彩香も慎也に便乗する。
「ちょ!ちょっと待って!え?最初どんだけ俺は嫌われてたわけ?」
康介は2人からの以外な告白に驚いていた。
「みんなから嫌われてるんじゃない?」
美佳はそれを言った途端康介から離れだした。
「おまっ!」
逃げ出したのが正解だったのか康介は美佳を
追っかけ回した。しかし、美佳は紀陸を盾にし捕まることを防いだ
「ったく!俺の前で争いごとをするな!」 
「紀陸だってみんなに嫌われてっから!」
康介美佳への反撃かと思えば矛先はまさかの
紀陸であった。
「おまえーー。」
紀陸は康介を追いかける。
そうして5人は他愛ない会話をしながら帰る。
そしてそれは5人にとってとても大切な時間である。


少し時間は進み美佳はほかの4人に問いかけた。
「もう少しでキリクの誕生日じゃない?
今度お祝いがてらどっか行こうよ!」
美佳は4人に目を輝かせて言った。まるで
自分の誕生日を祝って欲しい人のように
「えー。嬉しいけどさ。さすがに誕生日もうすぐだしみんな集まれないでしょ。
気持ちだけで嬉しいよ。」
「そんなこと言って。本当は祝って欲しいくせに素直じゃないなぁ。」
彩香は何かを察したのか自慢げに腕を組みながら言った。
「いや...まぁそりゃ...祝って欲しいけどさ」
紀陸の声はだんだんと小さくなっていった 。
「お!照れてんじゃん!」
慎也は顔を赤く染めた紀陸を除きながら言った。
「うるせーぞー英語の単語テスト 赤点だったくせに。」
紀陸も負けじと言い返した。相変わらず彩香と慎也のコンビである。
2人はいつも揃って誰かをいじる性格からして標的は完全に紀陸をロックオンしていた。
「でも。ありがと。覚えててくれて嬉しいよ。」
紀陸はまた顔を赤くする。
「照れるなら言うな。」
そして、そんな楽しい時間も始まりがあれば終わりがあるように終わりは近づく。
直線の道を歩いた先には突き当たりがあり、
その突き当たりは右と左への道がある。
いつも5人はそこで3人と2人に別れる。
 
右の道は康介、彩香、慎也

左の道は美佳、紀陸

となっている。
5人は挨拶を交わしお互いに背を向け歩き出した。
右の道を歩く3人はとても楽しそうであった。
「つかさ、この5人大学でバラバラになってもみんなで帰ってきて遊ぼうぜ!」
慎也は彩香と康介の前に出て言った。
「確かにね。私もこんな仲のいい友達もできない気がするし。」
「委員長は?」
慎也は康介を委員長と呼ぶ。
「そうだなぁ。俺も彩香と同じでできない気がする。こんな仲のいい友達は。」
康介は少し言葉に力が入った言い方であった。
「康介もみんなのこと思ってるだ。意外。」
彩香は少し驚いていた。
「え?なんで意外なの?」
「だって!いつもクラスの中心だし、
ぶっちゃけ5人はどうでもいいのかなって
思ってるのかと思ってて。」
「そんな風に思ってんのか。みんな俺に
対してのイメージはなんなんだろうな。
ははっ。」
康介は最後に苦笑いするしかなかった。
「いや。私の勝手なイメージだからごめん。」
「いいよ。俺はこの5人がだいすきだから。」
屈託のない笑顔を彩香に向けて言った。
「大好き...か...。」
笑顔を向けられた彩香は誰にも聞こえない声で呟いていた。
「だって。紀陸はこの5人の中ではリーダーって感じでまとめてるし、美佳は5人の中の誰かが辛いことあったら真っ先に駆け寄ってくれるから頼りになる。
それに慎也は単純でバカで面白いけど、
しっかりみんなのことを考えてる思いやりがあるしな。彩香はスポーツ万能で頭の中も筋肉って感じ。だけど。」
康介は途中で止まった。
「き!筋肉ではありませんー!それで?
だけど何?」
「ごめんごめん。だけど、暗いムード
を変えてくれる俺のいやみんなの支えだよ。」
彩香は康介の「俺の」という言葉に反応してしまい一瞬胸が高鳴った。そして、何も
意識せずこんなことが言える天然は怖いと思った。
「そ、そうなんだ。」
彩香は言葉をつまらせマフラーで顔を隠した。今の状況ばかりは紀陸に照れていると
馬鹿にしたことを謝りたいと本気で思っていた。
「嬉しいわぁ。ありがとな委員長!」
康介に褒められ上機嫌になった慎也は
パンパンと康介の肩を叩いた。
「いてぇよ。」


一方左の道は3人がいなくなり少し寂しそうな帰り道だった。
「急なんだけどさ。紀陸って好きな人とかいたりする...?」
「急だな。」
美佳は言った言葉に責任をあまり持たない
タイプだったがこの時ばかりは自分が何を言っているのか上々把握していた。
「へ...変なこと聞いてるのは分かってるんだけど。ほら、あれだよ。親友の好(よしみ)
ってやつ?」
「なんだよ!それ!あはは」
紀陸は美佳に向かって笑った。
「いいじゃん。別に。」
紀陸にからかわれた美佳は少しムスッとしていた。
「まぁ。」
「うん。」
「いないよ。」
「え?いないの?」
「うん。いないよ。ま、いたとしても美佳には教えないかな。」
「何それ!ひど!腹立つ!」
「はは。ごめん。じゃこれあげるから許してくれ。」
紀陸は学校の自動販売機で買ったコーラを
美佳に手渡した。
「あり...がと。」

美佳はキャップを開け一気に飲んだ。
さっきまでの羞恥心を洗い流すかのように。
しかし、それを見ている紀陸はニヤニヤしていた。
「え?何?なんでニヤニヤしてるの?」
「別に?」
「え?もしかしてこのコーラに何か入ってるの?」
「入ってないけど?」
しかし、まだ紀陸はニヤニヤしていた。
「飲んだな。」
「え?何?怖い怖い!」
「それを飲んだってことは美佳は俺の好きな人しれないってことだぞ。」
「あ!あーーー!」
「わはは。だから許してくれって言ったじゃん!」
紀陸は得意げな顔をしていた。
「騙したな!馬鹿!馬鹿!馬鹿!
べ...別にコーラなんかで許さないし!」
「それじゃ!コーラ返してよ!」
紀陸は美佳に手を伸ばした。
「やだー!これはこれで受け取るもん!」
「えー!返してくんないと!あ!もしかして今お金ない?」
「うっ...。」
美佳は少しぎくっとした。
「図星じゃん!わかりやすすぎでしょ!」
「う...うるさい。人をいじめて何が楽しいの?」
「別に楽しくはないけど。」
「このドS!!」
「え?ひど!せっかくコーラあげたのに。」
美佳は頬を膨らませながら言った。そして
飲み干したコーラのペットボトルを紀陸に
無理やり渡した。
「え?口付けてもいいの?」
「いいけど。何も無いよ?」
「ゴミ渡してどうすんだよ。」
紀陸は渡されたペットボトルをちょうどあったゴミ箱に捨てた。
「お返しだよ。」
「ごめんって。」
さっきまでの立場はいつの間にか逆転していた。2人の楽しい時間はいつまでも続くように感じた。そんな時間を壊すかのように
美佳の家が見えだした。
紀陸は少し寂しそうな表情をしていた。
「どしたの?紀陸。」
「何も。」
「嫌なことあった?」
お前の家の近さだよ!!と思ったがそんな
ことは言えるはずもなく沈黙を続けていた。
「いや!気にしなくてもいいよ!」
「あ!」
美佳は家の門の前で止まった。
「急に何思い出したの?忘れ物?」
「違う、違う。」
美佳は肩にかけているバックを掛け直して言った。
「誕生日。」
「が何?」
1単語しか言わない美佳に紀陸は何を溜めているのか分からなかったが次の言葉次の言葉で紀陸の何かが動く。
「誕生日。楽しみにしててね!」
最後に美佳は紀陸に純粋で何も汚れのない
笑顔を向けた。紀陸には眩しすぎた。
その光は美佳の笑顔なのか、はたまた美佳の
家の光なのか何かが揺れ動いた紀陸は完全に思考停止していたため答えは出なかった。
ましてや、辺りは夜で暗くなっているのに
美佳のその可愛らしい笑顔だけは視力の悪い紀陸には見えた。
「ま...まぁ無理して祝わなくていいから。」
「ふふっ照れ屋さんだな。」
紀陸はまともに美佳の目を見ることが出来なかった。
「あ!今日はもう帰るわ!じゃあな。」
紀陸颯爽と美佳に背を向け歩いた。
「あ!そっか!長話ごめんね!気をつけてね。じゃあね紀陸!」
美佳は身長は小さいながらも精一杯手を伸ばしながら紀陸に手を振った。
それを少し見た紀陸はその行動とは反対に
右手を軽く上げて
「おう。」
といっただけだった。そして、美佳が玄関に入っていく音が聞こえてあげた右手をそのまま頭に持ってきてかきながらボヤいた。



「なんだよ...調子狂うなぁ...。」

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コメント

  • RIA

    ミカちゃん可愛いですね!羨ましい仲間たち。でも悲しい展開が…続き楽しみにしています!

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