讐志~SHUSHI~

橘 木幡(たちばなの こはた)

第1話 いつもの5人

そんな悲劇的な出来事から月日は9月から8か月前の1月にまで戻ることになる。
「おはよう。」
美佳の元気な声が紀陸を驚かせた。
「お、おはようー。今日も元気だなぁ。」
「当たり前じゃん。今日はイツメンの5人
 で帰れる日じゃん。」
「あれ?そーだっけ?忘れてた。」
「え?忘れてたの紀陸。ねぇ彩香ぁ!」
美佳は田崎 彩香(たざき あやか)に泣きつくように言った。
彩香はイツメンの5人のうちの1人で陸上部に所属する、いわゆる体育会系女子という
やつである。
「LINEのグループでいい出したのは紀陸
 じゃん!」
美佳と同じように彩香も少し不満そうに怒っていた。
「分かった。分かった。ごめん。本当は
 覚えてたよ!」
「うそだー。」
彩香と美佳は二人で顔を見合わせて紀陸に
言った。
「おー!3人で何してんのー?」
野球部の朝練が終わったばかりの
村上 慎也(むらかみ しんや)が3人の元へ寄る
「紀陸がさ...。」
と彩香が言いかけたところ紀陸は都合が悪く
なるのを恐れて無理やり声量とタイミングで
押し切った。
「実はさこの2人が寄ってたかって俺をいじめるんだよ。」
「お二人さん!このダメな紀陸くんは
 何をやらかしたの??」 
慎也は、はなから紀陸の話など信じていなかった。
「あのね。」
紀陸の問題行動の経緯を2人は慎也に話した。
「紀陸くん。」
慎也は急に改まって座っている紀陸の後ろへ回った。
「な、なんだよ。急に改まって怖いぞ。」
「誘った側が忘れるな!!」
「やめてくれぇ。」
慎也は紀陸の首を絞め片方の手で脇腹をくすぐっていた。
「ハァハァ。ギブ。」
「もちろんドタキャンなんてしないよね。」
美佳は不満そうに頬を膨らませながら
紀陸に聞いた。
そんな可愛い威圧に負けた紀陸はすぐに
答える。
「しない。しない。」
信じてもらえないだろうから2度も言う紀陸に美佳は「ほんとー?」と言わんばかりの表情であった。
「おはよう。みんな俺抜きで話すとか何?
 悪口??」
この声の主は勉強では常に学年で5番以内
スポーツ万能、クラスの中心人物である
学級委員長の木原 康介(きはら こうすけ)で
あった。
「悪口に決まってんじゃん。委員長の 
モテ具合にひがんでんだよ。」
慎也は冗談混じりに康介に言った。
慎也の言うように康介はクラスの女子には
留まらず他学年ましてや他校からも絶大な
人気を誇っていたのである。
それを野球部のおかげで坊主になる運命だった慎也が康介をひがむのは仕方ないことだった。
「えー。まじか。それは辛いよ。」
康介は少し肩を落とした。
「ねぇ。聞いてよ。」
彩香は紀陸の失態を康介にも話した。
「そうかぁ。ははっ」
「なんで笑うだけ?お咎めなし??」
彩香は手を両手に広げ「理解できない」
というポーズをとっていた。
「いつもの紀陸だな」と思い少し溜息をつきながら紀陸を見ていた。
この5人はつかず離れずの関係で周りの人間関係に悩む人なら見ると憧れでしかないような存在だった。

今日もそんな5人の楽しい学校生活が始まる。



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