初級技能者の執行者~クラスメイトの皆はチート職業だが、俺は初期スキルのみで世界を救う!~

出無川 でむこ

第39.5話 私は勇者になってしまったようです・・・(中中中中)の話

私は王国に帰ってきてから、三週間が経った。
そう、黒杉くんがいなくなってから一週間が経ったのだ。
王国に帰ってくる前は前向きになるが、王国に帰ってきたという安心感を感じると黒杉くんがいなくなったことの精神的なダメージが襲い掛かる。
訓練をしようにもうまくいかなかった。
なので私はしばらく休暇を貰うことにした。


「はぁ・・・、黒杉くん・・・」


思い出すたびに、涙が止まらなくて仕方なかった。
悲しみはどこにもぶつける事は出来なかった。
ただ枕に涙を濡らす日々が続いたのだった。


早く立ち直らなきゃいけないのが分かっているのに。
それを拒絶するように、頭から彼が谷底に落ちていく姿がフラッシュバックする。
あの時はあぁすれば良かった、谷底に落ちる前にもっと早く手を伸ばしていれば。
そのループが抜け出せなかったのだ。


(気分転換に町に出ようかな・・・)


ずっと部屋に引きこもると皆に心配させてしまうから、私はパジャマから普段着に着替えることにした。
窓のカーテンを開けると日差しが当たる。


(眩しいなぁ・・・)


久しぶりに日に当たったせいなのか外がとても眩しかった。
少しだけだが、重い気持ちが軽くなった。
人間は日に当たらないと鬱になりやすいって言うけど、まさにそんな感じだった。
私は普段着に着替えて、金貨を持って廊下から出た。


廊下を出れば、真下に訓練所が見えた。
そこには訓練している、山崎くんと晴渡さん見えた。


(すごいなぁ、もう立ち直っているかな?)


二人の姿を見て、尊敬をした。
何故なら、私には出来なかったことをしているんだから。
私は何故か悪いことをしている気分になってきた為、その場から逃げ出すように商店街に向った。


――――フィルネル王国・街道


訓練所の張りつめた空気と違って、町の方はとても賑やかだった。
元気に走る子供や値切りするお客さん、静かな所なんてなかった。


(もうちょっと、静かな所に行きたいなー・・・)


私は門の近くに行くまで行くと、怪しい雰囲気の酒場があった。


「うわー、これは露骨に怪しいなぁ・・・」


黒い外装の建物、それだけでも怪しいのに、看板には「怪しくない酒場」って書いてあった。
怪しい・・・怪しすぎる・・・。
そう考えると、そのお店から凄くいい匂いがした。


(この匂いは・・・何処かで・・・)


私は匂いにつられて、お店に入ってしまった。


「いらっしゃいませ・・・おや?」


「あ、どうも」


そこにいたのは、黒髪でオールバックの・・・ミハエルさんがいた。


「あ、ミハエルさん、こんにちは」


「お久しぶりですね、ミツルギの"お嬢様"」


私は目を見開いて驚いた、何故なら初めて自分の性別をあてられたのだから。
いや、偶然だろう。


「な、何故私がお嬢だと?」


「・・・?何を言ってるかわかりませんが私には普通の女性にしか見えませんよ?」


えぇー・・・、そんなこと言われたのは初めてなんだが、嬉しいけどなんだか複雑な気持ちだった。


「ミツルギさんが男性の方でしたら、申し訳ございません」


「い、いえ、合ってます!なので大丈夫です!」


ミハエルさんはお辞儀をした、私はカウンター前に座る


「こちらが本日のランチメニューでございます。」


私はミハエルさんにメニュー表を渡された。
タイトルを見た感じ、どれも普通だった。


「じゃあ、オムライスセットでお願いします」


「かしこまりました。」


そう言って、ミハエルはキッチンで料理を始める。
後ろから見ても手際よく、無駄のない洗練された動きでオムライスを作っていた。
この人は何から何まで全部優雅だった、オムライス作っているだけなのにその動きに見惚れてたのだった。
しばらくすると、オムライスとスープ、唐揚げのセットが私の前に出されてた。
私はオムライスを食べた。


「やっぱり、ミハエルさんの料理は絶品ですね」


これは本心だ、ここまで美味しいの食べたのは初めてだった。


「ありがとうございます、そう言っていただけると嬉しいですね」


ミハエルは微笑むようにお礼を言う。
うん、イケメンだなぁ


「所で、ミツルギさんは何か悩みでもあるのでしょうか?」


いきなり急所を突いてくるなぁ、この人は・・・。
私はポーカーフェイスは得意方なんだけど、この人の前では無意味なんじゃないかなって思い始めた。


「そう、見えますかね?」


「はい、それはとても重症な」


こりゃあ、参ったなぁ。
私はミハエルさんに嘘つけないと思い、今まで起きたことを話した。
洞窟で大切なクラスメイトが谷に落ちた事あること話す。


「ふむ・・・成る程」


「はい、それからは私は毎日、あの日の事を後悔しているのです。
あの時、手を伸ばしてれば良かった。無理にでも連れて帰ればよかったと、頭の中でずっと再生されるように続いているのです。」


ミハエルさんはしばらくコップ拭きながら、目を瞑って話はじめる。


「私の言葉でどうにかなるとは思いませんが、後悔は誰もがする行為だと思います。
戦場で友人の悲鳴、周りの同期は血に染まって死にゆく姿、この世界では当たり前のことなのです。」


ミハエルさんは遠い昔を見るように、何処か懐かしむように話す。


「ですが、こうして生きているのは友人のおかげでもありますし、今は亡き仲間達の意思はこうして町の平和を保ってくれました。
人は死にます、しかし本当の死はその人の意思を引き継がれなかった時ではないでしょうか?」


私はミハエルさんの言葉を聞いて、あぁこの人もきっと同じことを経験したんだと思った。
その証拠に私はミハエルさんの言葉に揺さぶられているのがわかる。


仲間の意思、たしかにそうかもしれない、人は忘れられた時に本当に死ぬって何処かで聞いた事ある。
なら私はここで"野垂れ死んでる"場合ではなかった。


私は心の底から熱い何かが燃え上がった。


(私は何処かで諦めてたかもしれない)


あの日を二人がお互いに笑いあっている姿、彼が落ちていく姿が脳裏に思い浮かぶ
だけど私は手で引き裂くようにそれをかき消した。


その心の中の燃えカスが再び灯へ、灯から炎へと尽きない炎へ変わっていく。
こうして生きているのは黒杉くんのおかげだ、まだ私は死んでいない、彼にもう一度会う為に・・・!


心の闘志が更に燃え盛る、死んだ目はやがて再び鼓動が動き出すかのように。


仮に生きていたとしていてもどうする?


(そんなの喜ぶしかないじゃないか)


叶わない恋だとしても?辛い現実が待っているのでは?


(彼が幸せならそれでいいんだ、私はそれを応援する。)


そうだ、叶わなくたって、"追い続ける"事はできるんだ。
私はもう、後悔をしたくない、したくないんだ!!!
例え仮に死んでいるとしても、彼の亡骸は家族の元へ届けなければならない。
なら私がする事は変わりない、もう一度あの場所へ行き、まず彼の安否を確かめる事だ。


そんな私を姿を見たのか、ミハエルさんは微笑んだ。


「何か掴めたそうですね」


「はい、おかげさまで」


そういや、この人ってこの国で最強の騎士なんだっけか?
なら、私は・・・。


「あの、ミハエルさんに頼みたいことがあるんです」


「はい、私ができる事なら」


「私をあなたの元で修業させてくれませんか!!!私は二度と後悔しない為に、そして彼の意思を無駄にしたくないんです」


ミハエルさんは顎に手を当てて、考え込む。
私はその姿を見つめる事しかできなかった、それに観念したのか彼は言う。


「しょうがないですね、分かりました、ですがかなり厳しい修業になりますけどよろしいでしょうか?」


「大丈夫です、私はどんな試練でも耐えて見せます」


「二言はありませんね?」


そういって、ミハエルさんとの修業が始まったのだった。
アルバートさんにはミハエルさんが連絡してくれるそうだ。



――――――3ヶ月後


私はミハエルさんとの厳しい修業を終えたのだった。


(きつかった・・・一日一回100kmの走り込みや、100kgの重りをつけながらの登山を登ったり、色々大変だった・・)


私は何度死にかけたことか・・・、火山から突き落とされたり、薄着で猛吹雪を中をさまよったりして色々大変だった・・・
というか、私良く生きてたな!?
だが、ミハエルさんの修業のおかげで私のステータスは飛躍的に上昇してたのだった。


【御剣 正義】
職業 大勇者
LV124
HP250000
MP200000
SP200000


攻撃 160000
防御 150000
魔力 150000
精神 130000
素早さ 150000
器用さ 100000
運  50


スキル
・光剣『レイアード』
・天命剣『リミテッド・ソード』
・スラッシュ・オーバ
・限界突破『オーバー・リミテッド・クロック』
・ブレイジング・ミリオンズダンス
・剛力
・鉄壁
・クロス・ジャッジメント
・グランドクロス
・百閃漣真


黒桜花流・剣技『黒朧』
黒桜花流・秘儀『闇桜』
黒桜花流・奥義『涅花』
黒桜花流・秘奥義『白桜鬼』
パッシブ
・大勇者の加護
・精霊の加護
・聖剣の加護


私は自分のステータスを見る。
まさか、こんな短期間でここまで強くなるとは、自分でも若干引き気味である。
それでもまだ、ミハエルさんには勝てない、あの人の実力が計り知れなかった。
すると、ミハエルさんは近づいて言ってくる。


「お疲れ様です、私が教えられるの事はもうありません、ここまで良くついてきてくれました、もしも良かったら私のお古ですけど使ってください。」


そこには所々に傷がある黒い鎧が飾れていた、しかしこの鎧はただの鎧じゃないことが分かる。


「これは・・・、いいんですか?結構大切に保管されてたみたいなんですけど・・・」


「いいんです、私はもう使うことはないので」


そう言って、少し儚げな表情で言った。
私はミハエルさんの意思を継ぐように鎧を着た、
鎧はそこまでゴツくはなく、動きやすかった。意外と男性でも女性でも良いデザインに作られていて、"中途半端"な私には似合っていた。


「ありがとうございます、大切にしますね」


「えぇ、これにて・・・」


その瞬間、外から爆発音が聞こえた、爆発の位置的にこの近くの用だ。
すると、外から慌てた様子で店に入ってきた。
アルバートだ。


「大変だ・・・!魔物がものすごい数で攻めてきてるぞ!!!」


「ミハエルさん・・・!」


ミハエルさんは頷いた


「さぁ、ミツルギさん、もう後悔はしたくないんでしょ?行ってきてください。」


私はその言葉聞いて、私は走り出した。
もう二度と後悔はしたくない、大切な物を守る為に門の方へ向かった。

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