コンビニが異店しました!~いらっしゃいませ!こちら世界樹中央店でございます!~

出無川 でむこ

第10話 闇魔法はメラミンスポンジで浄化できます。

どうも飯河です。


あれから5日は経ちましたが・・・




お客様は一人も来ません




やはり、場所が悪いのでしょうか?


いや、そもそも異世界にコンビニある時点で間違えなような気がしてきました。


これは店長としては、悩ましい所です。




「今日も暇ですねー」




一ノ瀬は口をアヒルの用に尖らせながら、カウンター内の机に寄りかかっていた。


この状態は、お客様にも見えてしまうので注意するべきでしょう




「一ノ瀬さん、暇なのはわかっていますが、寄りかかっては駄目ですよ」




「す、すみません・・・」




注意すると、素直に聞く一ノ瀬。


と言っても、本当に暇なのは変わりなかった。


その証拠に普段の作業では手に届かない棚の掃除や店舗の事務室の書類の整理整頓など殆ど終わってしまった。


おかげで店舗がオープンしたての頃を思い出す。




床に限っては、最初の頃よりもピカピカになり過ぎて自分の顔が写っていた。


勿論、磨いたのは飯河だ。




良く言われませんでしたか?


物を使ったら、新品の頃よりも綺麗にする気持ちでやれと


私はそう習いました。


ですが、皆さんにこの事を話しましたら。




「アハハ、店長は凝り性だねぇ」


「ウッス」


「やり過ぎなのでは?」


「やり過ぎ」


「いや店長!?新品よりも綺麗にする気持ちどころか、改装してパワーアップしてるんですが!?」




皆さんに総ツッコミされました・・・。


何故なんでしょうか?


私は気持ちが大事なことを伝えようとしてただけなんですけど・・・


これには、私でもいじけちゃいますよ。




そう思いながら、店長は人が来ないと分かっていたので、フライヤーの周りの油汚れの清掃をしていた。


やはり、オープン当初からお世話になっているので、周りの油は頑固だった。


しかし、飯河店長はこんな事もあろうかとある"兵器"を取り出したのだ。


店長はその兵器を手に持った・・・。


その兵器の正体は・・・・!






「やはり、こういう時は"激ピカくん"が一番ですね」




そう!飯河店長が頑固な油汚れを落とす時に愛用している"兵器"!


その名は《激ピカくん》だ!




説明しよう!


いわゆる、メラミンスポンジという物だ


これはスポンジの表面を削りながら汚れをかきだしてくれる代物だ!




使い方は簡単です


水に付けて、そのまま消しゴムのように擦るだけ




ゴシッ、ゴシッ、ゴシッ




擦った、部分を拭けば・・・、ほらこの通り!!


自分の顔が写って美しく綺麗に見えます!!


良いですねぇー、やはり掃除はこういうところが楽しいです。


因みに、鏡やお風呂、ステンレス製には使っちゃ駄目ですよ!


鏡は曇り止めが剥がれたり、ステレンスだと傷ついてしまうので返って、カビが繫殖してしまうので注意ですよ!




「おや?」




拭いた部分を見てみると、鏡みたいに綺麗になっているおかげで、後ろに誰かいる事に気づいた。


振り向けば、そこには目を輝かせていた、勇者のファレスがいた。


ファレスはカウンターのレジ前の所で覗くように頭を出していた。


気になったので声を掛けてみましょう




「ファレスさん、そんな所で何をしているのですか?」




ファレスはッハと我に返る。


すると、ファレスは興味深々に私が持っている物を指を差して言う。




「そ、それは何ですか!"闇魔法"みたいな汚染された物体があっという間に浄化されたじゃないですか!」




そう言って、再び目を光らせる。


私はッフッフッフと笑って、"激ピカくん"の魅力を伝えた。


すると、ファレスは「お~!」と歓声を上げて拍手をした。




それを遠くを見た、魔王のミディアと杏と一ノ瀬はというと




「あれは何ですか?」


「さ、さぁ?」


「何時もの事だよー、気にしなくていーよ」




そう言って、熱く語る飯河店長とそれをヒーローショーを純粋な目で見て聞いてるファレスの姿を、のんきに遠くで3人は見ていた。




因みに瀬川君は夜勤明けで寝ています。


私でも良かったのですが・・・、店長は寝てくださいと必死に頼まれましたのでお先に失礼して寝まして今に至ります。


おかしいなぁ・・・まだ二日寝てないだけなのに何故なんでしょうか?




ファレスに魅力を伝え終わると手を上げて言う。




「て、店長!私もやりたいです!」




「あぁ!良いでしょう!ファレスさん一緒にやりましょう!」




「は、はい!」




ファレスはしっかりとカウンターに入るドアを潜って、カウンター内に入り、激ピカくんを店長から授かった。


それを喜ぶようにぴょんぴょんと跳ね飛ぶファレス。


そのまま、店長と並ぶように一緒にフライヤーの周りを磨いていた。


流石、勇者だけであって熱心的な一面があり感心です。




店内はゴシッゴシッと音が響き渡っていた。


それほど店の中は暇なのだ。




て~れれ~てて~てれって~♪




入店音が聞こえた。


職業病の飯河店長は思わず、いつも通りに無意識に挨拶をしてしまう。




「いらっしゃいませ~」




店長の挨拶に釣られて、言いなれていない感がある挨拶をファレスがたどたどしく言う。




「い、いらっしゃいませぇ~!」




挨拶が終わった後に気づいた、ここの世界での初めてのお客様だと


掃除は一旦中断して、すぐさまにカウンターに立ち、身だしなみを確認をして


自動ドアの方をカウンターから覗くように見た。




初めてのお客様が傷だらけのガタイの良いおじさんだった。


そして、顔面蒼白しながら言う。




「た、助けてくれ・・・・!」




その言葉を聞いた、ファレスはコンビニの制服を着たままで、手のひらか光の玉が浮かび上がり、玉は剣の形になりそのまま構えた。


遠くに見ていた、3人はすぐさまに男に駆け寄る。




杏は手慣れたように、一ノ瀬とミディアに指示をする。




「一ノ瀬さんは事務所にあるビニールシートを持ってきて!、ミディアさんは私と一緒に怪我人の相手を!」




「わかったわ」


「わ、わかりました!」




3人は直ぐに行動に移した。


こういう時の杏さんは本当に頼もしい




「イイカワ店長!ちょっと外の様子を見てきます!」




「はい、お願いします」




ファレスはその場から一瞬でいなくなった。


私はミディアさんと杏さんに運び込まれた、ガタイの良い男に話を聞くことにした。


落ち着いて話を聞く為に水を持っていく。




私はペットボトルのキャップを外して、飲みやすいように渡す。




「大丈夫ですか?取り合えず、水を飲んで落ち着いてから話してください」




「あぁ、あんちゃん悪いね・・・」




そう言って、男は水を受け取りゆっくりと飲む。


少し落ち着いたのか、体の震えが少し止まり、ゆっくり口を開いて話す。




「すまねぇ、俺はガンジンだ」




「ガンジンさんですね、一体何が起きたのですが?」




「ま、"魔人"に襲われたんだ・・・!」




ミディアは魔人という言葉に反応する。


ガンジンは思い出すと再び震え始めるがそのまま話はじめた。




「俺は仕事の頼みで森を歩いていたら、そこで数体の魔人が俺達を襲ってきたんだ!


だけど、仲間たちは俺を逃がす為によぉ・・・!ぐううぅ・・・!」




男は大粒の涙を流した。


そこからの話は予想は付いていた、きっとガンジンと言う男を守るために逃したのだろう。


必死になって、逃げた先がここに行きついたのだと。




すると、ミディアさんは男に話しかけた。




「ねぇ、その魔人はどんな姿していたの?」




「ひ、ひぃ!!魔人!?」




男は頭を上げると、角が生えた少女がいたのだ。


そう男がビビるのも無理もない、ミディアも魔人の"王"なのだから。


幸いにも、まだ魔王とは名乗ってはいない。


ここで悪化してしまうといけないと思い私が間に入って話すことにした。




「ガンジンさん、この方は私達の味方ですので、安心してください。」




「だ、だけどよぉ・・・」




警戒するのも無理もない、さっきまで魔人に追われていて、仲間は生きてるどうかをも分からない状態。


そんな精神的に不安定な状態で、追加で魔人が現れました!となれば怖がるに決まっていた。




だけど、ミディアさんは今はここのコンビニの従業員(仲間)です。


ここはミディアさんを怖い人じゃないという事を説明する事にしましょう。




「大丈夫です、それにここまで運んでくれたのはこの方なのですよ?」




男はミディアの方をゆっくり振り向き、互いに見つめあった。


少し経って、ガンジンは深呼吸をして、落ち着きを取り戻す。




「すまねぇ、取り乱した」




「いいえ、誰しも一度はある事です、気にしないでください」




「あんちゃん、ありがとよ」




男は再び、ミディアさんの方を向いて話す


先ほどの恐怖の顔ではなく、優しい顔をしていた。




「さっきは看病してくれて、ありがとな・・・お嬢ちゃん」




「い、いえ」




感謝されることは慣れていないのか、ミディアの頬は少し赤くなる


隣にいた、杏はミディアの頭を撫でて「良かったね」と呟いた。




そんな姿を見ていると、例え2000年生きていても、少女には変わりないと思えてきました。


すると、ミディアは先ほどの質問を掘り返すようにもう一度聞こうとした。




「ガンジンさん、さっきの質問なんだけれど・・・」




ガンジンはミディアの質問に答えて、その魔物の見た目の事を話す。




「あぁ、そうだったな!


たしか、少し肥満体型なやつと、となりに小さいヒョロイ奴がいたな、兄弟だとかアニキだとそう言うこと言ってたな」




「・・・!!」




どうやら、ミディアさんの顔を見ると心当たりがあるようだ。




「あいつら・・・、ここまで・・!」




ミディアさんの顔の徐々に怒りの形相になっていくのが分かる。


その二人に何やら恨みがあるかのようだった。


杏さんはミディアさんを落ち着かせるために、なだめるように頭を撫でる。




「どうしたの、ミディアちゃん?」




「・・・・、そいつらは私を狙っているかもしれない」




ミディアさんがそう言ったのだ。


ミディアさんが言うには自分の魔力を辿って此処にまで来ているかもしれないとの事


今は弱体化しているから、表に出ればすぐに捕まると


魔人達は弱っているミディアからこそ、捕まえるのが今がチャンスだと思っているらしい。




「ガンジンさん、ごめんなさい・・・私のせいで巻き込んでしまったわ・・・」




「良いってことよ、嬢ちゃんは悪くねぇ、悪いのは弱い者いじめをするやつさ」




ガンジンはニカッと笑う。


立ち直りが早くて助かりますね・・・。




すると、杏さんがファレスが帰ってくるのが遅いのか、気になり始める。




「そういや、ファレスちゃん遅いね?」




「ファレス?ってあの勇者のファレスかい?」




「ガンジンさん知っているのか?」




「あぁ!知っているともあの子には世話になったからな!」




ガンジンさんは昔、自分たちの町が魔物に襲撃された時に、ファレスとその仲間達が町の危機を救ってくれたそうだ。


やはり、ファレスは良い子だ、良い子過ぎて気の毒だった。




「しかし、何故、ファレスの嬢ちゃんはここにいるんだ?」




「実はですね・・・」




私はファレスがここにいる理由を話す。


ガンジンさんは最初は黙って聞いていた。


すると、徐々に穏やかそうな顔が眉間にしわを寄せて、そして怒鳴るように声を出し、拳を握りしめて壁をドンッと叩く。




「なんだぁ、そりゃぁ!?そんなの聞いていないぞ!?


いくらなんでも、ファレスの嬢ちゃんが可哀そう過ぎるだろう!?


今までの救ってきたというのに、仇で返すのか!?」




ごもっともな意見だった、自分よりも強い勇者が現れると、国はお払い箱のように見捨てて、村は勇者じゃないと非難し追い出す、仲間は価値がないと決めつけ離れていく。


そんな、身勝手な世界と世間に怒るのも無理もなかった。


その証拠に宿敵である、ミディアは顔は無表情ではあるが"手"を震えるように握りしめていた。


それは怒りの表れだろう。




そう互いに最強であったと同時に、皮肉にも同時に奈落の底に落ちて行った者同士。


信じていた者には捨てられ、裏切られた者同士


だから通じ合うものがあった。


だからミディアは"我が宿敵仲間"として怒りを感じている


身勝手な人間の行動に怒りを感じていたのだ。




そう腐っても、お互いに"宿敵"なのだからだ。




それはさておき、流石に遅いと心配になってきました。


これは店長として見過ごせない状況になってきました。




「私はちょっと見てきますね」




「ててて、店長!?何を言っているんですか!?今、外には魔物がいるんですよ!?」




「いや、従業員が戻ってこないのは心配するのは普通ではないですか?それに勤務中ですし・・・」




「え!?そっちですか!?」




一ノ瀬さんは相変わらずのツッコミだった。


いや、心配するのは店長として当たり前じゃないですか・・・、それに店の中に誰もいないのも防犯上良くないので・・・




「では、行ってきますね」




「て、店長~・・・!」




一ノ瀬は情けない声を出すが、飯河店長は気にせず、店の外に出た。

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