初級技能者の執行者~クラスメイトの皆はチート職業だが、俺は初期スキルのみで世界を救う!~

出無川 でむこ

第2話 夜の話と訓練の話

国王に村人という職業がどういうものか説明された後、気づけば夜になっていた。

僕達は個々の部屋に案内されたのであった。

流石、国王の城もあってすごく立派、この立派過ぎるのもあの国王の強さ権力をあらわしているかもしれないな。

僕は幸いにも一樹と一緒の部屋になって、ホッとした。

ここで板野だったら、きっとベランダから飛び降りてでも出て行くと思う、うん。

俺の表情を見て察したのか、一樹は話しかける。



「楊一、さっきの話をまだ気にしているのか?」



「あ、う、うーん...」



気にしていないと言えば嘘となる。

まさか、ライトノベルにも出てくる、異世界生活が実現するとは思わなかったし、憧れてはいた、正直自分に異能者の力が!?ってのもあった。

その矢先に自分が選ばれた職業が最弱の村人だった、そんなの落ち込むしかないじゃない!

村人ってなんだよ!思い出すと悲しくなってきた、この件はもう気にしないでおこう。

それに村人でもきっと強くなれる方法あると思うし!うん、あるよね?お願いだから希望を持たせて。

僕は不安になりながらも、何とか希望を保とうした。



この後、軌光石の使い方教えてもらった。

・まず通信機能がついている事、現代で言えば電話みたいなものである

・次に覚える技が分かる事、次のLVで○○が覚えますという形で表示されていた。

・自分のステータスがわかる事、これは基本情報だね。

・この国での証明書の代わりになる事



他にも機能がついているらしいが、それは今度教えてくれるらしい。

改めて、機能を分かった上で使ってみることにした。

まず、電話だ。



「たしか、石を握ってと...」



僕は石を握って一樹に向って念じた。

すると、頭の中で何かがうごめく感じがして変な感じがした。



「(一樹、聞こえるかい?)」



「うお!?本当にできるのか!すげぇな!」



どうやら、うまくいったようだ。

この後、一樹も僕に向って話すのだが、脳に直接語られている感じがして、ちょっと気持ち悪かった、これに慣れるのはしばらく掛かりそうだ。

僕は職業的に戦えないから戦いを指示できたらいいなと思う。



次に、覚える技だこれも同じように念じると同じようにステータスの用に表示されるのであった。

しかし、僕は見るまで気づかなかった。

次に覚えられる技がないということが。



「な、んだと...」



少なくとも村人でも技は覚えられるらしい、それでも全部最弱技らしいけどな!!

それすら覚えられないなんて...あまりにも理不尽すぎないか?

絶望するのであった。

くそう!くそう!!希望を保とうしてたのに!!落す所まで落としやがったな!!!

僕は泣きそうになる。



一方、一樹は普通に技を覚えられそうだ。

うらやましい奴め!祝ってやる!!ちょっと嫉妬するけど!!

一樹は僕に察して肩に手をおいて慰めた。



「なんつーか、そのどんまいだ」



「うん...」



やめろ!その励ましのパターンは逆に傷つくわ!

というか、余計に傷口を抉らないくれ頼む・・・!

僕は再び、絶望のループを抜け出せずにいたのだった。



「だ、大丈夫だ!俺が守ってやるからさ!ほ、ほら、楊一って指示がうまいから戦闘になった時に俺の指揮を頼むよ!」



一樹なりの精いっぱいの励ましなんだだろう。

まぁ、そうだな戦闘ができない分やることは他にできることはあるはずだ。

あるよね?うん、これは意地でもあると思ったほうがいいな、うん、平常心平常心。



そうしていると、ドアがノックされる。僕は「どうぞー」って言って、入ってくる。

出てきたは美空とその友達だ。



「楊一お邪魔するわよ」



「やっほー!楊一くん!」



元気な挨拶してくる彼女の名前は佐野さの 七海ななみ

いつも明るくクラスのムードメーカーである

容姿は美人というより可愛い方だと思う

長い髪の毛は綺麗に整えられて、前髪はヘアピンで止めていた、体は華奢である。

密かに、ファンクラブがあるとかないとか...

というか、俺の学校ファンクラブ多くない?

美空と御剣と良い顔の良い人が多い・・・。

それで本人には認知されてないからなぁ、ある意味バレないってのもプロの集団じゃないのか?

ちなみに佐野の職業は神官らしい。



「どうしたんだ?こんな時間に」



「いや、普通に遊びに来ただけよ」



どうやら、部屋に行ってもする事がないから、此処へ来たらしい。

暇してたんだなぁ、確かに日本と比べるとやる事はない、本来なら僕はこの時間帯はゲームをしてたからね。

すると、佐野はベットに転がって俺に話しかける。



「だね!私も久しぶりに楊一くんとお話ししたくてきちゃった!」



確かに、新しい学年になってから佐野と絡むことは少なくなった。

その為か足をバタバタさせて、少し嬉しそうにしてた。

なんだかんだ、中学校からの付き合いもあるし、仲は良かったんだが、高校に入ってからは人気になってしまって話す機会はあまりなかった。

だって、話しかけると周りの目が怖いもん!!



「そういや、佐野と話するのも久しぶりだな」



「ぶー!楊一くん!佐野じゃなくて七海って言ってよ!」



彼女はほっぺを膨らませた、ちょっとかわいい

ほっぺを膨らませた佐野にそれをつつく美空

うん、綺麗な華は絵になるってのはこういうことだなって思う



「あ、うんごめん、七海さん」



「うー、呼び捨てでいいのにぃー」



あざとさを感じるが気にしないでおこう。

これ以上はいけないような気がする、何故か殺気を感じるからな!

なんでだろうな!!何か窓をふと見たけどなんか目が紅く光ってるの見えたけど、気のせいだよな!ハハハハハ!

取り合えず、カーテンを閉めよう、そうしよう。

俺は立ち上がって、勢いよくカーテンを閉めた、3人はどうしたんだって顔をしてるが察してくれしか思うしかできなかった。



「あー、うん!慣れてないからごめんね!」



「ぶー!」



ぶー、じゃありません!あざとくてもダメなものはダメです!!

下手に呼び捨てなんてしたら、クラスメイトに集中放火されに決まってる!

佐野はあれでもアイドル並みに人気がある方だ!

そんな中で急に「七海」なんて呼び捨てなんてしてみろ!俺の命が危ういわ!!

って心の中で思いながら苦笑いをする。



「そういや、国王様言ってたね、明日から訓練だって」



「そうだなぁ、俺はのんびりしてぇんだけどなぁ!」



そういや、そんなこと言ってたな、来て早々訓練かと思う

まぁ、一樹は脳筋だがあまり戦いとか好まないもんな

これもスポーツマンシップみたいなものあるだからだろう。



「私達は元の世界に戻れるかしら...」



「美空ちゃん!大丈夫だよ!きっと戻れるよ!」



美空は不安げになるが、佐野は変わらず明るいままである。

こういう時の佐野は頼りになる、心が弱った状態じゃいつか押しつぶされるかもしれないからな。

それと美空の気持ちはわかる、確実に戻れるかと言われれば確信はなかったのだ。



「まぁ、国王様が言ってんだ、無事解決したら元の世界に戻すって、本当に戻せるかはわからんけどな!」



「気楽だなぁ」



そして、いつの間に楽しい時間は過ぎていったのだ。

時間を見れば23時まわっていたのだ。

それに気づいた美空は部屋に戻ろうとした。



「さて、私たちは部屋に戻るわ」



「一樹くん!楊一くん!まったねー!」



美空はお辞儀をして、佐野の手を振って別れた。

二人は自分の部屋に戻った。



「相変わらず、騒がしい奴らだったな」



「そうだね、でもこういう時だからこそかもしれないね」



国王にいきなり召喚されて、世界を救ってくれ頼むと言われて、ハイそうですか、んじゃ救ってきますわ!とはいかない。

実際召喚されると、怖いに決まっている。

ましては、僕たちは高校2年生だ、成人もしてもいないしまだ成長の途中で、普通に考えたら、家に帰りたいに決まってる。

だけど、それでも僕たちは帰るために戦う選択しかなかったのだ。



「さて、寝ようかな、一樹おやすみ」



「おう!おやすみよ!」



今日一日は色々あって体よりも精神的に疲れがたまっていた。

僕達はその今の精神的な疲れを癒す為に眠りにつくことにした。

そうして、僕たちは眠りにつくのであった



―――――夢を見た



まただ、またこの夢だ

少女の出てくる夢だ

少女の容姿は、髪は銀髪

眼の瞳は紅く引き込まれるようだった

そして、肌は白く透き通っており

触れれば崩れそうだった。



彼女は言う



―――――――「待ってる」





またか、君は一体誰なんだ。

何の為に、僕の前に現れるんだ。

君は何がしたいんだ。



僕は自分の胸を押さえ、叫びたくても

声も出せなかった。



ちょっと苦しい、なぜなんだろう。



――――私は―――――



そういうと少女は光か暗闇かわからない所に静かに消えていくのであった。



待って!君は―――――



僕は走り続けた、姿も既に消えてしまったのに影を追い続けた。



僕はここで目覚めた

勢いよく、起き上がる

窓を見れば、朝になっていたのだ

僕はおでこに触れる。



汗だ、冷や汗だ。

僕は自分のシャツで汗を拭った

止まらない冷や汗を拭い続ける



あれは何かの予兆であろうか?



しばらくして、隣で見ていた一樹に気づいた。

彼は少し心配した顔で見ていた。



「おはよう、一樹」



「あ、あぁ、おはよう、楊一すごい冷や汗だけど、何か悪い夢でも見ていたのか?」



「悪い夢...ではなかった気がする」



どちらかというと、寂しい感じがした。

でもなぜ寂しく感じたのかはわからなかった。



「そっか!んじゃ言いたかったらいつでも言ってくれ!」



一樹に気を使わせてしまったようだ、なんだか申し訳ない。



「楊一!早く着替えて飯に食いに行くぞ!」



「う、うん!」



僕たちは着替えて、食堂に向った。

すると、何処からか声が聞こえた、声の方向を見ると。



「おーい!こっちこっち!」



佐野が手を振っていた、僕達は直ぐに食事を受け取り。

僕は佐野達の所に向う。



「おはよう、楊一、一樹」



「いつきくん!よーいちくんおはよー!」



「うん、おはよう、七海さん」



「おうよ」



俺達は互いに挨拶をして、席に座る。

一樹はまだ眠そうに、顔を擦る。

すると、佐野が話しかける。



「昨日は良く寝れたー?」



「うーん・・・」



正直、夢のせいでちゃんと寝れたかどうか分からなかった。

気持ち的には半々ぐらいだった。

それに察したのか美空は俺を見て言う。



「何かあったの?」



「あぁ、実は・・・」



夢は良く覚えていないが、













食事のあとはいよいよ、訓練の時間だ。



生徒達は朝食が終わった後、訓練所に向かう

訓練所には武器が置いてある用だ。

そして、一人の兵士が大きな声で話す!



「よく来てくれた!勇者達!今日からお主らの教官となる!アルバード=クイッカーだ!この国の兵士長をしている!」



アルバードという名乗った男は、ちょっと小太りで大きな斧を持っていた。

所々に鎧に傷があり、歴戦の戦士らしさを感じさせた。



「なんだ、この小さいおっさんは!と思っただろう!まぁ、私はドワーフだからな!ッハッハッハ!」



そう言って、豪快に笑った。

おぉ、やっぱりドワーフとかいるのか!夢が広がるなぁ!

ドワーフといえば、鍛冶とかしてるイメージはあるけど

ここでは戦士とかもやってるんだと思った。

見た目は想像通りだけども。



「さて、私が来た以上は!ビシバシと行くからな!皆の衆よろしく頼みますぞ!ワッハッハ!」



周りの、皆はちょっと引き気味、良いひとそうだ。

僕はこういう豪快に笑う人は嫌いではない、



「さて!確かこの中に勇者がいると聞いたが!誰が勇者なんだ?」



「はい!僕です!」



「ふむ?ほぉ?」



そう言って御剣は前に出た。

アルバートは何か感心するかのように頷いた。



「僕は御剣 正義といいます!本日はご指導の方よろしくお願いします!」



「ふむ、中々いい面構えだ!顔もいいだけにな!ハッハッハ!」



そう言って、アルバートは剣を投げて渡す

投げた剣は回転して地面に突き刺さる。



「よし!まず勇者殿に相手してもらおうか!」



その瞬間、アルバートの目つきが変わり殺気が皆に伝わる

背筋が凍った、先ほどの人物とは別人ではないかと思うぐらいに

激しい殺気を放つ。



「っく...」



御剣は地面に刺さった剣を拾う

そして、構えた。

あの構えは剣道だろうな、

だが、剣道は戦闘用の構えはないと聞いたことはある。



「ほぉ、珍しい構えをしてるじゃないか

そうだな、ハンデとして俺は剣で戦ってやろうじゃないか」



そう言って、剣を取り出し構える

御剣は緊張する、若干手が震えていた

それもそうだ、戦うなんて初めてなんだこれは日本にいた頃の殺傷を好まない試合ではない

相手は殺気を放って今でも殺し行きそうな感じなんだ

怖くないはずがない。



「ふぅ...ふぅー!!、ハァア!!」



御剣は地面を蹴って走り出す、早い!

ステータスの効果もあるのか、さらにスピードが上がるのであった

そして、御剣は剣を振る

しかし、アルバードは剣を片手で赤子を相手するように受け止めた

そこから打ち合いが始まる、だがアルバートは涼しい顔をして、受け流した。



「なるほどなぁ、たしかにステータス通り強い、しかし、戦いはまだまだ素人同然だな」



アルバードは剣を受けたまま、そのまま御剣の腹に向って蹴りを加えた。

御剣はそのまま5m程吹き飛ばされた。

クラスの女子達は叫ぶ



「御剣くーん!!」

「みっちゃーん!」

「きゃー!御剣君ー!!」



御剣は、腹を押さえたまま、立ち上がった

アルバートは手で止めるように合図をする。



「っぐ...」



「やめとけ、やめとけ!今回は試しだ!勇者の坊ちゃんありがとな!」



その力の差は歴然だった。

アルバートは語った



「勇者のぼっちゃん、お前はもっと強くなれる、すぐにわしを抜かせるだろうから頑張れ!」

「っぐ...ありがとうございました」



御剣は女子ズに連れていかれて、そのまま退散したのだった

アルバートは言った



「さて、これから訓練を始める!まず基礎体力だな!」



そう言って走り込みを始めるのであった。

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