初級技能者の執行者~クラスメイトの皆はチート職業だが、俺は初期スキルのみで世界を救う!~

出無川 でむこ

第1話 チュートリアル


「ようこそ!勇者殿!貴方達を待っていた!」



力強い声が聞こえた方向を見てみる。

そこには大体50代ぐらいであろうか?

白髪交じりの威厳のある男性が王座らしきから立ち上がって僕達を見下ろしていた。



生徒達はなんだなんだと思い、生徒全員は男の方を一斉に見る。

勇者?何の事だ?どういう事だ?そんな不安そうな声が聞こえる。

そりゃ、そうだ俺も不安で仕方ない。



「いったい、どういう事なんだ・・・勇者ってどういうことなんだ」



「私も分からない、ただ分かるのはここは学校ではないっていうことだけ」



一樹と美空は不安そうだが冷静そうに言う。

すると男は一歩前に出て話し始めた。



「勇者殿、突然のことで申し訳ない。

単刀直入言う、この世界を救っていただけないであろうか?」



男性は髭を触りながら言ってくるのであった。

その突然の一言で更に騒めき出した。

世界を救ってほしいと、僕達はただの一般人で能力なんて何も持っていないのにだ。

痺れを切らしたのか、板野が男に噛みつくように話す



「なんだぁ!?いきなり呼んでおいて!世界を救ってくれなど、勇者とか!どういうことか説明しやがれ!」



そう言って板野が今でも飛び込もうしようとしてた。

しかし、周りの騎士達っぽい達が剣を抜き、威嚇してくる。

ここで板野が飛び込めば剣で串刺しになるだろう。



「うぐぐ・・・・!」



それに恐れたのか板野はためらって一歩下がる。

騎士の一人が板野に向って怒鳴る。



「無礼者!!国王様に歯向かうつもりかっ!」



「良いのだ、剣を収めよ」



その国王らしき者が、右手を上げ剣を収めるように合図と同時に、騎士達は不満げだが剣を収めるのであった。



「そうだな、名も言わないで失礼した、私の名はヨハン=ザムジード、ここはフィルネル王国だ、そして私はこの国の王をしてる者だ。」



見た目は黒い軍服にマントを羽織っていた、国王っていうよりも帝王って感じだよなぁって思った。

国王は立ち上がり、僕たちに近づき少しずつ近づいて頭を下げてくる。

周りの騎士たちは困惑した。

一人の騎士が言う。



「こ、国王様!?貴方様のような方が簡単に頭を下げては、、、、」



騎士が言っていることは、間違ってはいないと思う、この国の国王なら尚更である。

なんせ僕達はただの一般人なのだから。

しかし、国王は・・・。



「黙れい!お主らが剣を向ける方が悪いだろう!ましては勇者殿向かって!お主らの方が無礼者だ!!」



国王は騎士達に凄まじい気迫を放ち、その声は城に響いた。

国王を名乗るほどもあって、凄まじい迫力だった。

そして、国王は再び口を開く



「私の騎士たちが申し訳ないことをした。

しかし、勇者殿・・・話だけでも聞いていただけないであろうか?」



国王は再び、頭を下げるのであった。

ここまで頭下げるという事は余程の事がこの世界に起きているのだろうか?

いったい、何が起きてるというのだ?

すると、一人の生徒が前に出て言う。



「頭を上げてください。どんな状況か教えていただけないでしょうか?」



その優しそうな瞳で国王に話し掛けたのが、クラスの委員長だった。



彼は御剣みつるぎ 正義まさよし

見た目は金髪で蒼い目、整えられた中性的な顔でいわゆる、イケメンっていう奴だ

クラスでもカースト上位に君臨し、性格も見た目も成績も良いとリアルチートだ。

もちろん、予想通りにモテモテであって毎日告白されるぐらいだ。

噂では日本とロシアのハーフだとか、、、



「おぉ、、、ありがとうございます勇者殿!

この世界で今、何が起こっているのかを語ろうとしよう。」



国王は王座に座って、この世界での現状を話した。

今、世界では魔王が君臨して4体の魔獣を放っているそうだ。

魔王の名は「アーク」絶大な力を持ち4体の魔獣を使役をしている

魔獣は各方角に

東に青龍王

西に白虎王

南に鳳凰王

北に玄武王と分かれており

魔獣から放つ魔素で魔物が狂暴化し被害が出てるそうだ。

そこで伝承に従い、魔王と魔獣に対抗する為に勇者を召喚する事だった。



「いきなりの事で、困惑するがお願いできないであろうか?」



「しかし、僕達はただの一般人であって能力を何もないですよ?」



御剣の言うとおりだ、周りも生徒達も頷いた。

その状態で何をしろというのだ・・・。



「そこは大丈夫だ」



国王は手を叩き、何処からともなく側近らしき人が箱を持って現れた。

日本で言えば忍者みたいな感じだろうか?

国王は再び口を動かし言った。



「召喚された者は必ず、能力を持つことになっている。

それを確認する為に、こちらで用意した軌光石を使うが良い」



側近は生徒に一人ずつ軌光石を渡した。

使い方は手に頭に「ステータス」と念じる事で見れるらしい。

楊一は渡された石を念じた



(ステータス...)



【黒杉 陽一】

職業 村人

LV1

攻撃 10

防御 10

魔力 10

精神 10

素早さ 20

器用さ 10

運  15



スキル

・石投げ

パッシブ

・成長・Ⅰ

・■■の加護



(何だこれ?)

楊一は表示されないスキルがあり少し困惑している。

皆も同じかなと思っていると、御剣の方で少し騒めいている





「な、なんとこれは!?」



国王は驚いている。

御剣の方で何か起こっているようだ。

楊一は気になったので、御剣の方に行くと御剣のステータスが見えた。

表示されたステータスを見ると。



【御剣 正義】

職業 勇者

LV1

攻撃 1200

防御 900

魔力 1500

精神 1010

素早さ 600

器用さ 700

運  50



スキル

・天命剣「リミテッド・ソード」

・スラッシュ

・限突「オーバー・クロック」

・ブレイジング・ダンス



パッシブ

・勇者の加護

・精霊の加護

・剣の加護



陽一は驚いた、あまりにも自分との差がおかしいと。

御剣の周りはすごい盛り上がっていた。

主に女子生徒に囲まれてだけど。



(は?なんだこれ!?俺のステータスと100倍違うんだけど!?)



自分のステータスは何度も見返してみるが・・・、何度見ても同じだった。

僕のステータスが極端に低い現実を突きつけられる。

しかも、村人ってなんだよ!?普通、剣士とか魔法使いとかあるだろ!?



(いや、僕以外にも仲間がいるはずだ!)



そう思ってると、一樹と美空が近づいて言ってくる。



「御剣の奴、やべぇな!勇者だってよ!」



「そうね、でも見た目もそれっぽいし適役じゃないかしら?」



確かに勇者っぽい見た目してるけど、まさか本当に勇者になるとは・・・

そういや、美空と一樹はどうなったのだろうか?

僕は気になって聞くことにした。



「そういや、二人とも職業はどうだった?」



「うん?俺たちか?」



そう言って、二人はステータスを見せてくれた。



【山崎 一樹】

職業 武術家

LV1

攻撃 500

防御 600

魔力 450

精神 800

素早さ 300

器用さ 300

運  30



スキル

・カウンター

・連打撃

・閃光脚

・獅子連打

パッシブ

・武術使い



【晴渡 美空】

職業 魔術騎士

LV1

攻撃 350

防御 700

魔力 500

精神 600

素早さ 250

器用さ 350

運  30



スキル

・ヒール

・ファイア

・アクア

・スラシュ

・シールダー

パッシブ

・剣使い

・魔術使い

・盾使い



改めて現実を突きつけられた気分だ・・・、一樹は武道家、美空は魔術騎士か・・・。

自分のステータスは比較すればあまりにも低すぎると、他のクラスメイトのステータスを見ても職業みても段違いだった。

忍者、剣士、侍など皆は戦える職業だった。

なぜ自分だけ...正直羨ましいと思う。

そう思っていると美空は声を掛ける。



「どうしたの?具合悪いの?」



美空は顔を覗き込んだ。

思わずの事でドキッっとしてしまったが、僕は一歩身を引いて言う。



「い、いや、そうではないんだけど...」



「じゃあ、はっきり言いなさいよ」



美空にそう言われ、しぶしぶ現状を伝える事にした。

二人は真剣に聞いてくれた。一切馬鹿にはしなかった。

良い友達を持ったと改めて実感する。

しかし、それは一時の事だった。

板野がやってきたのだ。



「おやぁ?楊一くんのステータスは低すぎはありませんか?」



板野はわざと大声で言うように話す

くそぅ!やっぱ性格が悪いなコイツ!!俺は平穏に過ごしたいのに!

毎回の如く、僕の安全地域に土足に入ってくる!



それを聞いた国王はステータスと職業を見に来る

顔が近いとやっぱり迫力があった。

改め、この国王の顔を怖いな...

国王は渋そうな顔で僕の顔を見て話す。



「ふむ、君の名前はなんと言う?」



「は、はい!僕は黒杉 陽一って言います!」



緊張して、変な声が出てしまった。

後ろから、板野がケラケラ笑いなが馬鹿にしてくるのが聞こえているが気にしないでおいた。

というか、無視してないと平常心が保てない。



「ふむ...」



国王はしばらくして考え込んだ後に再び口を開いて話す。



「ヨウイチ殿、落ち着いて聞いてくれ」



「な、なんでしょうか?」



落ち着いて聞いてくれってどういう事なんだ・・・

変に緊張するせいなのか冷や汗を掻く。



「村人はもっとも多くて最弱職業でなんだ」



「・・・」



僕はダンマリした。

知ってたよ!畜生!村人と石投げのスキルの時点で察してたよ!!

僕はやっぱりかと思い、何かの間違いで隠し職業になってくれないだろうか。

こう不謹慎だと思うが、異世界に来たからには少しは期待はしてたんだよ?勇者までにはならないけど、こう剣士とかね?

僕はため息をしてしまった。



続けて国王は話す



「村人は生まれながらつく職業だが、自然にある時の境に職業が決まっていくんだが・・・、この世界では君はぐらいになると職業は確定していくんだがな」



国王は何か言いづらそう話す。



「村人は上位になる職業がないんじゃ」



「上位になる職業?」



いわゆる、ネットゲームで言えば二次転職だろうか?

それに村人には上位になる職業はないとは・・・。

取り合えず嫌な予感してきた。



「そうだ、例えば剣士なら上位剣士になったり。武術家だと気功武術、拳士などになれるんだが」



「つまり村人にはないと...」



「うむ、このよくある職業で未だに見つかっていないのだ」



うん、分かってた、分かってたよ畜生!

せめて、村長とかあると思ってたけどないのか・・・。

この世界はどうやら僕を嫌っているようだな!

僕はただただ落胆するのであった。



国王の話を聞いて、無力な存在だと改めて認識されたのであった。

そして、僕の後ろで板野が笑う声が今でも聞こえるのだった。


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