異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第35節 友情

レイナの言葉が脳裏に残っており、先に寝ると言ったレイナを見送り、桐生は同じ様に外で空を見上げていた。
『・・・』
どれ程の時間が経ったのだろう。突如、桐生の横を強い風が吹き抜けた。砂埃が舞うので目を閉じた桐生だったが、風が止んだ事を感じ目を開けるとそこには何も無い白い空間にポツンと桐生だけが居た。
『・・・は?』
いきなりの展開に思考が着いてこず、素っ頓狂な声が出た桐生だったがそこはこの世界に呼ばれた際に体験した光景と一致している事に気付いた桐生は冷静さを取り戻していた。
『・・・で?今度は何の用だ?』
『やれやれ・・・随分な挨拶だな・・・』
声は聞こえるが姿を見る事は出来ず桐生は独り言を呟くように話を続けた。
『随分なのはこの世界だろ・・・ったく、次から次へと・・・』
『それは悪い事をしたな。・・・だが救えない命も確かにあるが救えた命もある事を自覚しているようだな・・・』
『・・・そりゃあな・・・』
『ふふふ・・・やはりお前を選んで間違いではなかったようだ・・・』
『で、今度はなんだよ?』
『・・・お前に謝らなければならない事があってな・・・』
『・・・雪菜の事か?』
『うむ・・・お前の仲間が召喚したが敵方に召喚された事だ・・・あれは・・・』
『何となく分かってたさ。・・・お前でも干渉出来ない存在から力が加わったんだろ?』
『・・・うむ。その通りだ』
『で、その力ってのは恐らく話からするとこの世界を作った神・・・が介入してきたんじゃないかって予想だが?』
『そこまで分かっていたとは・・・』
『俺の世界のゲームじゃよくある事さ。とはいえ、自分がそれを体験するとは思ってもいなかったけどな』
『・・・』
声の主は長い沈黙をしていたが決意をしたのかポツポツと話し始めた。
『私の正体だが・・・遥か昔、今の様な戦いがあった際に召喚された者の一人だ・・・。戦いは熾烈を極め、最後は相打ちという結果になったのだったが・・・。今の世界を見た通り何も変わらなかった・・・』
『・・・』
『私はどうしてもこの世界を救いたかった・・・この美しい世界を・・・』
『で、タイミングを合わせて俺も呼んだって事か』
『うむ・・・』
『なるほど。よーやっと辻褄があった』
『怒らぬのか?』
『なんでだ?てかもし俺が呼ばれなかったら雪菜は一人っきりだったろ?そうなった方が逆にキレるわwww』
『・・・』
『・・・それに、あんたが言うようにこの世界を救ってやりたいって気持ちは少なからず俺にもあるしな。・・・知り合いも増えちまったし』
『好意も持たれた事だしなwww』
『いや、それフラグでしょあんたwww』
二人はそう言い合いながら笑い合った。すると桐生の瞼が重くなってきたのを感じて来た。
『ふむ、そろそろ時間の様だ・・・。あまり干渉出来ないが有意義な時間だったぞ・・・感謝する・・・』
『俺も、あんたと話せて良かったよ。・・・また話せるか?』
『・・・難しいだろう・・・だが常に私がそばに居るのは間違いない・・・』
『んじゃま、上手くいくように祈っててくれやwwwこっちは何とかしてみるからよ』
『あぁ・・・頼んだぞ、勇人』
『おう。んじゃまたな』
『あぁ、さらばだ』
別れの挨拶をすると桐生の瞼は抵抗する暇もなく閉じていった。そして、目を開くと朝の日差しが注ぎ始め、小鳥達が朝の訪れを知らせていた。
『・・・寝てたのか?にしても随分と頭はスッキリしてんな』
桐生はその場に立ち上がると大きく背伸びをして身体を動かした。その顔には昨日までの後悔が嘘のように消え、力強い眼差しが戻っていた。
『うっし、とりあえず飯でも作って元気だしてくか!』
一人、気合いを入れ家に戻る時にふと振り返りながらボソッっと独り言を呟いた。
『助けれる命は助ける。俺はその為にここに来たんだからな。・・・やれるだけやってみるから見守っててくれや、ご先祖さんよ』
そう言うと踵を返し、家に向かった。その背中には決意と覚悟を決めた雄々しい姿が写っていた。
ー。
ーー。
ーーー。
『おら、てめーらっ!!飯だ飯だっ!!起きろwww!!』
家に入るなり朝食を作り、準備が整った段階で桐生は盛大な雄叫びを上げて全員を起こした。説明するまでもなくその場でアタフタとする者しかいなかったのは当然の結果だった。
『な、なに?!』
『なんなのよ・・・朝からうるっさいわね・・・』
『うー、眠いよぉ・・・』
『・・・(スヤスヤ)』
口々に不満を漏らしながらレイナ達は起きて来たがミントは安らかに眠っていた。
『女子は顔洗って髪とかしてこいwwwレオン!起きたならいっちょ俺と模擬戦やるぞwww』
レイナ達は渋々だがミントを起こして全員で表の水桶ろわまでノロノロと歩いていった。レオンはいきなり模擬戦と言われキョトンとしていたが桐生がはやし立てたお陰か準備を整えて外に向かった。
『・・・なぁ、勇人?』
『ん?』
『ナンデオレダケシゴカレルノデスカ?』
『なんで?・・・ノリwww?』
『いじめだっ!妹さんっ!あなたのお兄さんがいじめますよ!?』
『つべこべ言うならお前の朝飯はナシだ』
『いじめに合わせて横暴な発言っ!?』
『ほら、やるぞ?こねーならこっちから仕掛けるぞ?』
『わ、わ、待てよ?!まだ構えていな・・・』
『モンスター相手に構える暇なんかあるかよつ!』
そう言って桐生はいきなりレオンの懐に潜り込んだ。
『はやっ!?くっ!!』
初撃を剣の柄で受け飛ばされながらも体制を整えて着地したレオンはジリッっと構えた。
『やっと構えたか』
『嫌でも構えるわっ!・・・ったくなんなんだよ』
『・・・いつまでも引きずってたらあれだから憂さ晴らしに付き合ってやるって言ってんだよw』
『・・・っ!?・・・勇人・・・』
『ほら、来いよ?全力で来なきゃ怪我するぞ?』
『あぁ、もうっ!本気で行くから怪我しても知らねーぞっ!』
二人は朝から全開で模擬戦を行った。支度が済んだ女子達が来る頃にはレオンは身体全部を使って必死に酸素を入れようと呼吸していた。
『ぜーっ、ぜーっ、お、お前・・・遠慮しろよ・・・』
『遠慮なんかするかバカwww・・・どうだ?少しは気が楽になったか?』
『・・・クソ、なったって正直に言えば悔しいけどなw』
『はっwwwそれでいいさwwwうし、じゃあ準備も終わったみたいだし飯にするか♪』
『腹減っちまったよwww』
『レオン負けたからおかずは減らすからなwww』
『いい加減にして下さいませんかっ?!』
二人は笑いながら貶しあって家に入っていった。
家に入ると雪菜が中心となって朝食の準備が終わっていた。ベティもよく食べてよく寝たお陰か昨日までの不安な顔はしておらずミントとどっちがおかずが多いか張り合っていた。
『ほらほら、飯のお代わりはあるんだから喧嘩するなwww・・・じゃぁ全員揃ったな?いただきます♪』
桐生の掛け声に合わせて全員が一斉に答えると食事が始まった。メニューは簡単な物でパンと昨日の残りのシチュー、家の裏にある畑から取れた野菜や果物などが並べられていた。
『で、だ』
桐生は食事を取りながら全員に伝わるように話しかけた。
『これからの事なんだが・・・まず雪菜。お前を俺らのSクラスに編入出来る様に学園長に掛け合ってみようと思う』
桐生の発言が突拍子もない事なのか全員のスプーンが止まった。ミントは黙々と食べていたが。
『マジ?』
『可能でしょうか・・・』
『ど、どうだろう・・・』
『勇人、そりゃまた・・・思い切ったな?』
口々にメンバーは答えるが桐生は答えを変更するつもりはないのか続けて雪菜に向き合って話を続けた。
『雪菜はどうしたい?・・・ってか一人で暮らすにも限界があると思うし、学園の生徒になっちまえば俺も安心なんだが?』
雪菜は少し考えていたが桐生の答えに頷いた。
『うん、もし可能なら兄さんの近くに居たいかな・・・私もそれなりに戦う力があるなら皆の為に使いたい・・・』
雪菜が答えると周りも『確かにな・・・』といった感じで頷いていた。
『それとベティの事だが・・・レオン?もしいいなら街で暮らさせてやれないかも相談しようと考えていたんだがどう思う?』
話を振られたレオンは迷って居たがベティがレオンの袖を握って話し始めた。
『私も・・・そうしたいです・・・この村も大事だけど・・・レオくんの近くに居たい・・・』
ベティの言葉にレオンは優しく頭を撫でながら桐生に答えた。
『そうだな・・・。俺もこの村にベティ一人残すのは心配しかないし・・・可能な限り近くに置いておきたいな』
レオンが答えると桐生は大きく頷き、朝食の残りを一気にかきこんだ。
『うっし、ならまずは学園に皆で戻るか!後は学園長が良いようにしてくれんだろwww』
なんの根拠もない自信だったが何故か桐生が言う事に説得力を感じたメンバーは頷いて同意した。そのあとはベティにどんな所だなど街の情報を教えて盛り上がっていた。
『勇人・・・ありがとな・・・』
レオンはボソッっと桐生の隣で感謝を伝えた。
『まぁ・・・ここで助けれた命だからな。大事にしなきゃバチが当たるさ』
『・・・だな。しかし・・・』
レオンはそう続けようとしながら雪菜を見た。
『なんかしたか?』
『・・・俺はそのうちお前を義兄さんと呼ばなければならないのか・・・』
その発言に桐生は稀に見るキョトン顔をした。
『イミフwww』
『義兄さん・・・』
『いや、やめろしwww』
『なぁ・・・元の世界に雪菜ちゃん・・・彼氏いたのかな・・・』
『知らねーし、やる気もないわwww』
『何故っ?!』
『聞くか普通www?』
『是非とも聞きたいなwww』
『それはな・・・』
『・・・』
『お前が変態だからだwww!』
その発言と同時に桐生はボディーブローをレオンに放った。
『おまっ!?・・・朝飯出そう・・・』
二人はじゃれ合いながらも笑い合いながら楽しい時間を過ごした。
『さぁさぁ!片付けたら出発だ!巫山戯てる奴から置いてくぞwww』
桐生の掛け声に全員が各々出発の準備を始めた。

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