異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第34節 爪痕と過去

村の住人を埋葬すると辺りはもう暗くなり帰路につくのは危険と全員の意見が一致した為、その夜はレオンの故郷で唯一壊れていなかった家を借りて休むことになった。
『ここは・・・』
レオンはその家を見上げながら記憶を掘り返していた。
『誰か知ってる人の家だろうけど・・・借りてもいいか?』
『知ってるも何も・・・俺の家だ』
レオンは答えながら扉の取手を握り開け放った。中からは昼の暑さが残っていたのかムワッとした空気が流れてきたがそれ以外には何も感じなかった。・・・桐生以外は。
『待て、何かいる』
その言葉に全員が入るのを躊躇い武器を構えた。桐生が先頭になり家に入ると音はしなかった。だが、桐生には感じているのだろう辺りを見回しながら家を歩くとある一点で足を止めた。
『・・・ここか』
桐生が見ていた先は本棚だった。どうやらそこから何かの気配を感じていたらしく、振り返りながらレオンに詳細を訪ねた。
『レオン、この家に住んでて特殊な構造がある事は知っていたのか?』
『い、いや?俺がいた時は何も無かったはずだけど・・・』
『そうか・・・ちょっとコイツ、退けるぞ?』
桐生は了承を得る前に本棚を横にずらす様力を込めた。すると本棚はズズズっと動きその背後からは地下へ続く階段が現れた。
『こ、こんな物があったなんて・・・』
レオンは驚きを隠せないのかその場で記憶を探っていた。
『気配はこの下だな。・・・レオン、ベル、二人は俺の後に。残りはここで襲撃がある際の防御役で残っててくれ』
全員が桐生の指示に頷くと階段を降り始めた。
下へ続く階段は長くはなく、非常食などを貯蔵する倉庫の様なものだった。
『・・・そこにいるのは分かってる。大人しく出てこい』
桐生は冷たく言い放つと殺気を込めて構えた。すると奥の方から『ひっ!』と小さな悲鳴が響き、恐る恐るその姿を見せてきた。
『・・・女の子?』
『の、ようね』
『ベティ!?』
レオンだけは誰かすぐ分かったのか桐生を押し退けてベティと呼ぶ女の子に近寄った。
『知り合いか?』
『あ、あぁ。村の子供だ。俺がこの村を去ってから時間が経ったから成長してるけど間違いなくベティだ』
ベティと呼ばれた女の子はいきなり近寄ったレオンに怯えながらも声に聞き覚えがあったのかそろそろと顔を見た。
『・・・レオくん・・・?』
『そうだぞ!ベティで間違いないよな?!』
『・・・ぅ、うわぁぁぁぁぁあ!!』
レオンと分かると今までどれだけ我慢していたのか溢れんばかりの涙を零しながらレオンに抱きついてきた。
『怖かった・・・怖かったよぉ!!』
『あぁ、もう大丈夫だ!安心しろ!』
レオンも自分の村で生存者が居ると思っていなかったのかベティの事を強く抱き締めながら涙を流した。
『・・・良かったな、レオン』
『・・・あぁ、本当に・・・良かった・・・』
『・・・でもなんでこの子だけ・・・?』
『ベティ?お前一人か?他にも助かった人達は居なかったのか?』
レオンが今も泣きじゃくるベティに問いかけたが、まだ落ち着いていないのかワンワンと泣いていた。
『・・・とりあえず落ち着くまでここに居ても仕方ないから一旦上にあがろう』
『そうね、そうしましょ』
『だな。ベティ?他にも仲間が居るから上に行っても大丈夫だからここを出よう?』
ベティはその答えに返事は出来なかったが、頭を縦に振って答えた。
『その子は?』
『村の子供でベティと言うらしい。レオンとも知り合いのようだ』
『じゃあ、この村で唯一・・・?』
『あぁ。生き残りだ』
『兄さん、これ・・・』
雪菜はどこからか持ってきたのか毛布を渡してきた。
『さんきゅ。ほら、レオン?その子に使ってやれ』
『ありがとよ、勇人。・・・妹さんもありがとな』
レオンは軽く答えると毛布をベティに優しく巻いてあげた。
『さって・・・、落ち着くまでこの子はレオンに任して・・・飯だな。腹減っちまった』
『そういえば何も食べてなかったね』
『兄さん、手伝うよ』
『んじゃ俺らで飯作っとくから皆は休んでてくれ』
そう言うと桐生と雪菜は食材を漁り、何を作るか相談し始めた。ベルは近くの壁に寄りかかりながら座り、ミントとレイナ、リィムはレオンの隣に座るベティに優しく声をかけた。
ー。
ーー。
ーーー。
『さぁ出来たぞ♪』
『お代わりありますから遠慮なく食べてくださいね』
勇人と雪菜が料理を作り終わり全員の真ん中ぐらいに大鍋を置きながら声をかけた。
『この匂い・・・前に勇人が作ってくれたシチューってやつじゃない♪♪?』
『お?匂いで分かるとはwwwレイナ、ハマったなwww?』
その言葉にレイナは顔を赤くしながらも否定はしなかった。
『この白いスープみたいなのが・・・?』
ベルはその色に嫌悪感を出していた。
『なにか・・・ドロドロとしていますね・・・』
リィムはスープとは言えないドロっとした物に大丈夫かと心配になっていた。
『・・・』
ミントは気にしていないのかそそくさと皿を持ち出して取り分けようとしていた。
『ほら、レオン。ベティちゃんも』
だいぶ落ち着いたベティを見て桐生はシチューをレオンに二人分取り分け、差し出した。
『ベティ?食べれるか?』
レオンは心配になりながらベティを見たが返事の代わりに腹の虫がキューっと可愛く鳴った。
『暖かいうちに食べた方が美味しいよ♪大丈夫、私も前に食べたけどすっごく美味しかったんだから♪』
皿を受け取ることに戸惑っていたベティの横からレイナが勧めたおかげか、皿を受け取り自分の膝の上に置いた。
『よし、行き渡ったな?じゃあ・・・いただきます♪』
レオンは合掌し、早速口に放り込んだ。濃厚な牛乳とチーズの香りを楽しみながら味わっていると周りからは驚愕の声が響いた。
『え!?何これ!?』
『美味しい・・・♪』
『・・・(モクモク)』
『う~ん♪やっぱり美味しい♪』
『ベティ?美味いぞ♪食べな??』
まだ口を付けていないベティに対し、レオンは目の前で食べてみせ、美味しいぞ?とアピールをした。
・・・パク。
ベティが恐る恐る口に運び口に入れた途端、ベティの顔はみるみる明るくなり、皿にあったシチューは瞬く間に無くなってしまった。
『ふふふ・・・♪美味しかったんだね♪じゃあ・・・おかわり、いる??』
レイナが聞くと申し訳なさそうにベティは皿をそっとレイナに渡した。
『うん♪いっぱい食べて元気になってね♪』
『・・・』
『ん?どうしたの勇人?』
『いや・・・』
『うん・・・?』
桐生はその時、心で幼女を慈しみ愛でる心境に居たのを誰も気付いてはいなかった。
ー。
ーー。
ーーー。
食事が終わり、後片付けが済んだ頃桐生はすっかり落ち着いたベティに質問を投げかけた。
『なぁベティ?君はなんであそこに居たんだ?』
その質問が来るのを分かっていたのかベティは佇まいを直して桐生に答えた。
『・・・おばさんとおじさんが助けてくれた』
『おばさんとおじさん?』
『うん。レオくんのおじさんとおばさん』
その返事にレオンは『やっぱりか』と頷いていた。
『あの時・・・モンスターがこの村にやって来て村の皆は逃げたり戦ったりしてたんだけど・・・強くてもうダメだって皆が騒ぎ出して・・・山に逃げたりしたんだけど私、逃げ遅れちゃって・・・』
『・・・』
『その時におじさんが私をこの家に引っ張りこんであの地下の道に無理やり入れたの・・・『絶対誰かが助けに来るはずだから声を出さないで静かに待っているだよ?』って・・・おばさんは泣きながらレオくんがここにいなくて良かったって言いながら・・・後はごめんなさい・・・怖くて地下に逃げ込んでたから詳しく分かんない・・・』
『・・・ベティのご両親は?』
『・・・モンスターに殺されたの見ちゃった・・・だからもう居ない・・・』
『・・・すまん』
桐生が謝罪するとベティは小さく涙を流しながらも懸命に笑おうとしながら話を続けた。
『でも・・・でもね?レオくんが来てくれたから良かった・・・お兄ちゃん達が外のモンスターを倒してくれたんだよね?ありがと・・・』
そこまで話すとレオンが肩を抱えてあやす様に頭を撫でてあげた。そこで話はお開きとなり、全員が就寝した。
『・・・はぁ』
桐生は一人、家を抜け出しため息を吐いた。寝れない訳では無いが今回の件でまた救えなかった人がいた事に後悔をしていたのだ。
『・・・上手くいかねーな・・・。これじゃまた次の被害者が出ちまう・・・』
頭をガシガシとしながら桐生はどうすべきだったのか思案していると背後から気配を感じ振り返った。
『わっ?!ビックリしたぁ・・・』
『なんだ、レイナか。寝れないのか?』
『うぅん。そうじゃないけど勇人が家を出て帰ってこないからどうしたのかなぁって・・・』
そう話しながらレイナは桐生の隣に腰掛けた。
『・・・静かだね』
『・・・あぁ。こんなのどかな村がこんな事になるなんてな・・・』
『うん・・・。・・・後悔してる?』
『まぁ、そりゃぁな・・・。何が出来たかは分かんねーけど、もっといい方法があったんじゃねーかってな・・・』
『・・・だね。・・・ベティちゃん、無理してた』
『あんな小さい子がな・・・ホント、嫌な世界だぜ』
『私も・・・両親、居ないんだ・・・』
唐突な言葉に桐生は何も返せなかった。
『まだ私が学園に入る前にね・・・殺されたの・・・』
『・・・犯人は分かってるのか?』
『・・・うん。でも逃げちゃってまだ捕まってないんだって・・・』
『・・・そうか。何か分かりやすい特徴とかないのか?街に出た時とか似てるだけでも見つけたら教えてやれるぞ?』
『大丈夫・・・。よく知ってる人だから・・・』
『どうゆう事だ?』
『・・・私の・・・兄なの・・・』
レイナの言葉が重くのしかかる中桐生は空を見上げまた一つ、ため息を吐くのだった。
『・・・ホント、この世界では事件が起こりすぎるな・・・』

「異世界呼ばれたから世界でも救ってみた」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く