異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第33節 宣戦布告

雪菜が正気(?)に戻りクラス全員が揃うと先程家に飛ばしたエヴィーに注意を払った。
『レオン、手応えは?』
『勇人の話通りならまだ生きてるはずだな。・・・全力で入れたけど』
『・・・だな。俺も危険な雰囲気がビンビン伝わってやがる』
二人が前衛に立ち警戒をしていると突如家の瓦礫が動き始めた。
『・・・っ!?皆、気をつけろっ!!』
桐生の号令に全員が各々の武器を構え、警戒レベルを上げた。すると家の瓦礫がフワリと浮かび上がり始めた。
『こりゃあ・・・』
『あぁ・・・随分とご立腹のようだな・・・』
桐生とレオンは構えながらその様子を伺っていた。
『・・・よくもやってくれましたわね・・・』
瓦礫の中に現れたエヴィーは誰が見ても分かるほど怒気に満ちていた。
『しかも私のマスターまで誑かして・・・』
『誑かしてたのはお前だろ、エヴィー』
『・・・』
桐生は答えながら片手で雪菜を庇う様な体勢を取った。
『人の家族に手ぇ出しやがって・・・ミントには悪いが少々きつーいお仕置きが必要みたいだな』
と、同時に魔力を解放した。桐生の魔力に当てられたのか瓦礫はボロボロと地面に落下していき辺りには静寂が戻った。
『・・・ですが、まだ私のマスターを解放するには足りないと思いますよ?・・・マスター?何故そちらに居るのです?戻ってきてくださいな♪』
エヴィーが手を差し伸べたが雪菜は『?』とした顔をしていた。
『・・・っ!マスター!戻りなさい!貴女は私と共にあるのですよ?!』
苛立ちから強い口調になったエヴィーだったが雪菜は一向に動く気配がなかった。
『・・・なぜ・・・?はっ?!』
エヴィーは何かに気付いたのか胸元を確認した。そこには砕け散った石の様な物があった。
『あれは・・・!』
『ミント?なんか知ってるのか?』
『うん・・・あれは召喚したマスターを強制的に支配下に置くことの出来る魔法石・・・ソレを使ったっていうの!?エヴィー!』
ミントが珍しく声を荒らげてエヴィーに問うとさも当然の様にエヴィーは答えた。
『あぁ♪姉さんは捨てましたわね?・・・捨てたものだから私が拾っておきましたわ♪』
その言葉にミントは愕然とした。その魔法石は過去にミントが地底深くに捨てたとの事だ。自分の都合で召喚者を意のままに操る事をよく思っていなかったミントの決断だったのだが・・・。
『そんなものまで持ってきて・・・マスターの精神が壊れてしまうかもしれないのよ?!』
『それが?私にとってはどうでもいい事ですわ。勝てばいいのですから。・・・壊されてしまいましたけど・・・』
そう言うとギロっとレオンを睨みつけた。その殺意に当てられたのかレオンは一歩後ずさりをした。
『そりゃ・・・好都合だな。結果、お前は自分のマスターを手放すことになったんだからな』
桐生の言葉にエヴィーはチッっと舌打ちをした。
『・・・確かに今マスターが抜けるのはかなり痛いですわね。・・・でも私、その程度の浅はかな考えでいませんことよ?』
エヴィーは不敵に笑いながらそう告げた。
『一つ、ヒントを差し上げましょう♪この魔法石、姉さんは捨てましたけど・・・私の分はまだありますのよ♪♪さぁて♪どんな出会いを差し上げましょうか♪』
と悪魔とも取れる笑顔で桐生達を脅した。
『・・・どんな奴でも良いけどな?最後はどうなるか覚えておけよ?』
『・・・もう貴女は妹として遠慮はしない。こんな事をするなら私は全力で敵に回る』
桐生とミントの言葉が重なり、全員も個々に頷きながら武器を構えた。
『やっと本気になってくれましたわね♪いいですわ♪これで本気になれますし♪』
『・・・』
『ですが今日はこれぐらいにしときますわ。流石に分が悪いので帰らせていただきます♪』
『・・・それで帰すと思うか』
レオンはエヴィーににじり寄った。その表情からは故郷を潰された復讐を果たそうとする決意が読み取れた。
『・・・雑魚が図に乗りすぎですわ。・・・エアスラッシュ』
と、魔法を発動した直後、レオンは見えない風の刃に全身を切られた。
『ぐぁぁぁぁぁ!?』
『レオンっ!?』
『い、今回復をっ!』
ベルとリィムが割って入り、桐生が魔法を発動しようとするとエヴィーの周りが光り始めた。転移魔法てあろう事はすぐに理解出来た。
『その程度の実力で私に歯向かうなんてアホですわね♪』
そう軽口を叩くと片手をヒラヒラとさせて別れの挨拶をしてきた。
『では姉さん?また今度遊びましょう♪周りの方々ももう少し強くなってもらわないとつまらないので頑張ってくださいね♪』
と、光が眩くなる中姿が見えなくなりながらエヴィーは挑発しながらその姿を消して行った。
『・・・ふぅ』
桐生が一つため息を吐くと振り返りながらレオンの容態を確認した。
『大丈夫か?』
『・・・あぁ。・・・すまねぇ』
『まぁ・・・気にすんなって言っても難しいだろうけど、こっちは大丈夫だ』
桐生はそう答えると今度は雪菜に向かいあい、話しかけた。
『で、雪菜?』
『うん・・・。なんか色々迷惑かけちゃったみたいだね・・・。皆さん、本当にすいませんでした』
雪菜が深々と頭を下げるとおもむろに近寄る者が居た。
『・・・ちょっとごめん』
ミントはそうつぶやくと雪菜に対して何かの魔法を発動したのだった。
『これは?』
『あの子が洗脳していた痕跡を見てる・・・本当に呪縛が解けたのか、解けているならあの子が居る潜伏先の情報でも探れたら・・・って』
二人は静かに魔法の流れに身を任せていた。その光景を見ていた他の面々は桐生を中心に集まり、話し合いをし始めた。
『何とかなったわね・・・』
『・・・ですが、被害も少なくありません・・・』
『あのエヴィーっての・・・強いのか?』
『つえーな。本気になってもいないのに、あの強さだ。本気になればどうなる事やら』
『勝つ方法はあるのでしょうか・・・』
『やってみなきゃわかんないわよ』
『・・・まぁでももう一人のマスターも確保出来たし、幼馴染も報われる事が出来たから完全な負けじゃないから良かったって思ってる・・・』
『だな。これからの戦闘であいつも入るならもっと楽に戦えそうだ』
そう締めるとちょうど魔法をかけ終わったのかミントと雪菜が近寄ってきた。
『どうだった?』
『・・・大丈夫。支配されていない。場所は特定できなかったけど・・・』
『そか、まぁそれはいいや。そのうち来るだろうからな』
雪菜はおどおどしながら桐生達を見回した。
『あ、あの・・・』
『大丈夫だ、雪菜。お前が俺の妹でアイツらのマスターになってしまって操られてたって所までは理解してるから』
『兄さん・・・なんでこの世界に・・・?』
『そいつは・・・わからんwww』
『え?!』
『いやぁ、仕事終わって帰ろうとした時になんかこの世界にふらっと呼ばれたんだよなwww』
『そんな偶然・・・』
『でも俺がここに居るのが現実だ。・・・元はお前を呼ぶ物だったらしいけどな?』
そう言うとチラッとミントを見た。
『・・・話すのは初めてではないけど・・・呼ぶ時に話したのは私・・・ミント・・・』
『あ、あの時の声の人?・・・うん、覚えてるよ。ようやく会えたね?』
『ごめんなさい・・・。私も召喚した時にまさか妹に連れられてくとは思っていなくて・・・』
『え?!いいよいいよ!?異世界の事なんか全然分かんないから気にしてないし!』
『でも、貴女は精神を操られていた・・・』
『それももう終わった事なら気にしないよ♪こうしてお話出来るようになったんだし♪』
そう言うと小さくミントはコクっと頷いた。その顔からは安堵の表情が読み取れた。
『さって、帰って学園長に報告だな。・・・でもその前に』
桐生が促すようにレオンに手を差し伸べた。
『この村の人・・・このままじゃ浮かばれねぇ。せめて埋葬してやろうぜ?俺達の手でさ?』
『・・・すまん。ありがとう』
レオンは答えながら桐生の手を取った。
『なら私達は供える花を摘んできましょう』
『賛成ね。・・・せめてもの気持ちぐらいやらないと浮かばれないわ・・・』
『わ、私も行く!』
『雪菜さんとミントちゃんも行きましょう?』
『・・・(コク)』
『は、はい!』
全員が各々村の人々の為にと動き始めた頃には辺りは夕暮れになりかけていたがそこを気にする者は誰もいなかった。

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く