異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第32節 再会③

桐生とミントがそれぞれ構え、レイナ達は距離を離す中、エヴィーは大きく欠伸をしながらその光景を眺めていた。
『遅いですわねぇ・・・。そんな動きじゃこれから先、死ぬだけですわよ?』
そう言いながらも攻撃してこないエヴィーに不信感を抱いたのか桐生が問いかけた。
『何しにきやがった!』
『何しに・・・?楽しそうだから見ていただけですわよ?それと実験の結果を見に♪』
『実験だと・・・?』
『えぇ♪私の魔力とマスターの力を元に生み出したモンスターがどれほど使えるか、のですわ♪』
その言葉に桐生は握っていた拳の爪が食い込むのが分かるぐらいに強く握った。
『てめぇ・・・。そんなくだらないことの為にこの村の奴らはレオンの幼馴染まで・・・!!』
エヴィーはキョトンとした顔をした後、今度はケラケラと笑い始めた。
『くだらないから面白いのでしょうwww?・・・やはりあなたは我がマスターとは違う考えをお持ちですのね・・・あぁつまらない。こんなやつサッサと殺せば良いのに・・・』
頭に来たのか桐生はライトニングの魔法を放った。だが、魔法はエヴィーの前にある結界に防がれ音だけが響くだけだった。
『危ないですわねぇ。ほんとに野蛮な方。・・・せっかくマスターと遠路遥々来ましたのに』
と、話しながら服や髪型をチェックしていた。
『マスター・・・?!雪菜も居るのか!?』
桐生はその単語に食い付いた。話している間に桐生の周りにはSクラスのメンバーが集まってきた。
『あれが・・・ミントさんの妹・・・?』
『確かにそっくり・・・』
『・・・気をつけろよ。俺も前にギリで勝ったがあの時より真面目そうだ。・・・多分ガチだろうよ』
桐生達から聞いた話では覚えていたが実際に目の前に現れると動揺を隠せなかった。
『・・・しかも相手のマスター・・・勇人の妹さんも居るって今・・・?』
『・・・あぁ。らしいな・・・』
『ちょ、ちょっと大丈夫なの?!それ?!』
『説得して聞きゃいいが・・・』
『難しいんですか?』
『・・・まぁ、なんつーか・・・奇跡でも起きてくれねーかなって感じだ』
その言葉に一同は更に緊張感を高めた。
『・・・では皆さん準備が出来ました様ですので、お呼び致しますわ♪マスター♪待望のお兄様とその仲間達ですわよ♪』
エヴィーの呼ぶ声にフワリと人影が浮かび上がり隣に静かに舞い降りた。髪は黒髪ロング、目元はキリッとしており、容姿に関しては女性でもため息が出てしまう程の美女がそこには立っていた。
『・・・兄さん』
『・・・雪菜』
二人は向かい合うと懐かしむ様な顔をしていたがその雰囲気は敵意を剥き出しにし、今にも戦闘が始まる様だった。
『・・・ホントに兄さんなんですね』
『・・・お前もホントに雪菜だったんだな』
『・・・ふふ』
『・・・』
『ふふふ・・・アハハ・・・アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!兄さん!兄さん!兄さん!私の!兄さん!こんな所で!まさか!兄さんが居るなんて!!あぁ・・・夢ではないのよね・・・エヴィー?』
『えぇ♪夢ではないですよ、マスター♪』
『あぁ・・・///こんなにも会いたいと思っていた方が居るだけで・・・もう・・・蕩けてしまいそうです・・・』
桐生を含む全員が雪菜の発言に背中をゾワリとした。
『・・・な、なに・・・この人・・・』
『は、勇人・・・』
『勇人さん・・・』
『・・・』
全員が底知れぬ恐怖に呑まれ桐生の背後に回った。
『・・・』
その光景に雪菜は表情を歪め、一人一人を舐め回すように見て回った。
『・・・兄さん。そのブス共は、なんです?』
『・・・そんな事言う様な奴じゃないと思ったんだが?この世界に来て少し・・・、いや?かなり変わったな?雪菜?』
『・・・』
桐生の咎める発言に無言で答える中小声でミントが背後から話しかけてきた。
『・・・(多分、洗脳されてるかも・・・)』
『・・・(なんだって!?)』
『・・・(私と話した時はこんな事言う様な人ではなかった・・・)』
『・・・(じゃあ・・・)』
『・・・コクン』
『アイツが原因か・・・』
桐生はその話でエヴィーを睨みつけた。
『あらあら?随分と怖い顔をしますわね?わたくし、泣いてしまいます♪』
エヴィーはわざとらしくオヨヨと泣き崩れるポーズを取った。
『てめぇ・・・自分のマスターには何もしないんじゃなかったのかよ』
『なにもしてませんわ♪ただ、彼女の奥底にある本能を解放してあげただけですわよ♪』
『それが原因か・・・おい、雪菜!惑わされてねーで正気になれ!』
桐生が話しかけると雪菜は電気が走った様にビクッと身体を震わせエヴィーに抱きついた。
『どうしましたマスター♪?』
『今、今、兄さんが私を呼んでくれたの♪』
『それはそれは♪良かったですわねぇ♪』
『うんっ♪・・・でも、その後ろにいる奴らが目障りなの・・・』
『そうですわねぇ・・・せっかくの兄妹の再会なのに邪魔してくるなんて酷い方々ですわねぇ♪』
エヴィーはニヤリとしながらレイナ達を見た。
『消していいのかな?』
『えぇ♪マスターの思う通りにして頂いてよろしいんですわよ♪』
『じゃあ消そうっと♪・・・そこの奴ら。兄さんに近付かないで。・・・あぁ、消されるからもう無理ですね?さよなら』
別れを告げる言葉を話すとまるでこの世の終わりではないかと錯覚してしまう程の魔力の奔流を全員が感じた。
『・・・!?ヤべぇ!!』
桐生は咄嗟に全員の前に立ち塞がり、結界を張った。それも今までとは比べ物にならない程の多重結界だった。・・・2枚、4枚、10枚。20枚まで重ねた所で雪菜の魔法が発動した。
『消えて!!無限の闇よ、彼方から万物を消しさる力を今ここに!メテオレイン!!』
発動と同時に闇が覆うように現れ、空を暗くした。と、次の瞬間。闇の中から大小様々な隕石が桐生達の頭上に向け降り注いできた。
『くっ!』
桐生は結界を張るが何枚も破られた。その都度更に結界を張る事で全員のダメージを無くす様に専念していた。
『は、勇人!』
『あんたっ・・・!』
『私も手伝います!・・・バリアーっ!!』
その魔法はいつまで続くのかと誰しもが疑問に思うほど長い時間だったのだろう。正確に測るとものの数秒だったのだが。魔法が止むと辺りには砂埃が舞い上がり、雪菜達は桐生達を視認出来なくなっていた。
『どうしよう・・・兄さんまで死んじゃったかな・・・』
『大丈夫ですわ♪魔力を感じます・・・。ほら、見えてきましたわ♪』
と、指を向ける先に現れたのは仲間を庇いながら結界を張り続け疲労した桐生が居た。
『はぁ・・・はぁ・・・』
余程の攻撃だったのかその疲労しきった桐生を全員は初めて見た。
『勇人っ!?大丈夫っ!?』
『まずいわね・・・魔力が底を尽きかけてるっぽいわ』
『今、回復をしますっ!』
『・・・エヴィー』
今度はレイナ達が桐生の回復を優先し始めた。
『はぁ・・・はぁ・・・さんきゅ・・・』
桐生は息もするのがやっとなのかその場に膝を着いた。
『そんなに頑張らなくてもいいじゃないですか♪兄さん?どうせ私たちには関係ない人でしょ?』
雪菜は呆れながら桐生に話しかけた。
『死んだって私たちが苦しむ訳でもないですし、・・・それとももしかしてお好きな方でもその中に居ると言うんですか・・・?』
と、話す雪菜はまさに魔王の如く負のオーラを出した。
『・・・はぁ・・・はぁ・・・。んな事雪菜には関係ないし、俺にとっちゃコイツらは大事な仲間で、クラスメイトだ。見殺しになんか出来るか。俺を助けてくれて仲間にしてくれた奴らを守るのは当然だろうが・・・。お前だってそう思ってるはずじゃないのか・・・?お前はもっと優しい人間だったはずだ。なのになんでそんな平気な顔をして人を殺そうとする・・・』
桐生が話しかけながらチラッと雪菜の後ろを見た事をレイナは気付いた。
『・・・(あれ、あそこ・・・誰かいる・・・?)』
桐生と雪菜の話が続いている中あまり見ないように注意しながら雪菜達の背後を気にしていたレイナだったが、その『誰か』が分かると驚愕した。
『・・・(レオン君っ!?な、なんで?!いつの間に?!)』
レイナがそう思っていると桐生がチラッとレイナを見た。その際に片目をウィンクした事でレイナはこのピンチを切り抜ける為に桐生が取った作戦だと気付いた。
『でも次は流石に兄さんでも防げませんよね♪そんなに疲れてるなら隅っこに行ってください♪私、兄さんを殺したいわけじゃないので見逃してあげますよ♪♪』
雪菜はそう言うとまた魔力を集め始めた。その光景を見ていた桐生だっだが、その場に踏み止まり結界を張り直した。
『まだ抗うんですの?マスターも言いましたけど、そろそろ諦めた方が懸命です事よ?』
雪菜の代わりにエヴィーがそう話していると桐生はニヤリと笑いながらエヴィーを見た。
『・・・俺がなにもしないでただ守るだけだと思ってたのか?・・・全く、相変わらずてめぇは人の事を舐め腐ってやがるな』
桐生が発した言葉にエヴィーはその笑顔を止めた。桐生が何かを企んでいる事を察したエヴィーはまず雪菜を見た。
『ん?どうしたのエヴィー?』
『い、いえ・・・なんでもないですわ、マスター』
雪菜に関しては特に何もなかった。
『・・・(じゃあなんですの・・・?あの勝算がある様な態度・・・魔法発動時にトラップでも?いえ、違いますわね・・・だったら・・・)』
エヴィーが思案し初めた直後、背後に敵意を感じた為振り返るとそこには間近まで詰め寄るレオンの姿があった。
『お前が・・・お前が・・・クリスを・・・村の皆を・・・』
念仏のように繰り返しながらレオンは大剣を音がする程握り締めた。
『・・・っ!?このっ・・・!!』
エヴィーは咄嗟に魔法を発動しようとしたがそこは近接戦闘に長けた剣士クラス。発動前にレオンの一撃はエヴィーに渾身の一撃を叩き込んだ。
『がっ!?』
エヴィーは軽々と飛ばされ隣の家に直撃した。家はガラガラと音を立て崩れ姿が見えなくなった。
『ナイスだ、レオン』
『・・・』
『・・・殺したいのは分かるが、そいつはミントの妹だ。お前も幼馴染を殺されたなら同じ事はしない方がいい。そいつらと同類になっちまうし、もう後戻り出来なくなっちまう』
『・・・分かってる・・・』
レオンは自分を落ち着かせるように深い溜息を吐いた。隣では魔法を詠唱しようとしたが途中で止めてただ棒立ちの雪菜がいた。
『・・・?あれ?なんで私ここに・・・?』
雪菜はキョトンとした顔でキョロキョロと辺りを見回していた。
『雪菜っ!』
桐生がここがチャンスと踏んでか雪菜に分かる様に声をかけた。
『・・・?!に、兄さんっ?!どうして兄さんがここに居るのっ!?え?!え?!どうゆう状況っ!?』
エヴィーの洗脳が解けたのか雪菜は人間らしさでテンパっていた。
『・・・とりあえず降りてこいw』
桐生が努めて優しく声を掛けると雪菜は大人しく屋根から降りてきた。
『・・・久しぶりだなw』
『う、うん。兄さんも・・・元気そう・・・?だね』
『身体、なんともないか?』
『うん。でもなんか記憶があやふやで・・・』
雪菜は今までを思い出そうと頭を抱えていたが光明は見えないのか『ヴー・・・』と頭を押さえていた。
『ま、後でおいおい説明してやるよ』
桐生はそう区切ると雪菜の頭を撫でてやった。
『う、うん・・・///』
雪菜は照れくさいのか頬を染めながら頭を撫でられていた。
『・・・』
『・・・嫉妬www?』
無言で桐生達を見るレイナにベルは茶化す様に声をかけた。
『ち、違うもんっ!』
『・・・ふーんwww』
二人はじゃれ合いながらキャイキャイと騒いでいた。

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