異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第30節 再会①

村は静かだった。いや、静かすぎた。桐生達が到着するとまず最初に村人の安否を確かめようと決めていたので家という家を歩いたが人一人として居なかった。
『おかしい・・・。学園長の話だと無事だって話だったよな・・・』
三軒目の家を訪問して留守だった事に桐生はそうぼやいた。
『こっちもいないわね』
『こっちも居なかったよ』
『どこに行ったのでしょう・・・』
『誰もいない』
全員が戻ってきたが答えは一緒だった。
『大して大きい村じゃないからそうそう離れた場所には居ないと思うけどな・・・』
桐生が周りを見ているとクイッと袖を引っ張られた。見るとミントが桐生の袖口を引っ張っていた。
『どうした?』
『モンスターの気配・・・』
その言葉は小さかったが全員が構えるには十分な声量だった。一気に緊迫した雰囲気が流れ全員で背中を預けながら周囲を警戒し始めた。
『数は?』
『わかんないけど・・・居る』
『強さって分かる?』
『・・・(フルフル)』
武器を構え、警戒していると家の影から動く物が現れた。
『誰だっ!』
瞬時に反応した桐生が声をかけると『ひっ!?』っと小さな悲鳴をあげて初老の男が目の前に現れた。
『人間・・・?』
『あんた、誰だ?』
『わ、私はこの村で村長をしているものです・・・。あ、あなたがたは・・・?』
その言葉にリィムが一歩進み、名乗り出た。
『私達は学園都市レミニセンスより派遣されたSクラスの者です。学園長とお話された村長さんで間違いないですか?』
『そ、そうです!助けに来て頂いたのですか!?』
その返事に全員が構えを解き村長の近くに寄って行った。
『えぇ。大変でしたね?もう大丈夫ですよ?』
リィムが努めて笑顔で答えると村長は安堵から長いため息を吐いた。
『お待ちしておりました・・・。詳しい話は聞いていましたか・・・?』
『未知のモンスターが出てきて、冒険者の人達が殺られたって事ね?聞いてるわ』
ベルが答えながらモンスターを探していた。
『は、はい。辛うじて逃げてきた冒険者の方から聞いた情報です・・・』
『その冒険者は?』
『傷が深く・・・つい夜明け前に・・・』
『・・・』
唯一の情報源が消えた事に不安を覚えたがレイナがこの村について聞き出した。
『あの、村の人達は居ないのですか?』
『・・・今朝方、モンスターの群れのボスがこの村に現れたので全員を私の家の地下に逃げ込ませました・・・。それでも何人かは殺られてしまいましたが・・・』
レイナがその答えに間に合わなかった事を悔いていた。
『で、ですがまだ生きている者もいます!お助けください!』
『任しとけ、すぐにそのモンスターとやらを討伐して安心して暮らせる様にしてやるよ』
桐生が答えると村長は頭を何度も下げた。
『・・・モンスターはどこ』
ミントが先程の気配をまだ警戒していたのか強い口調で村長に問いただした。
『あそこの家の中です・・・ですが・・・』
村長が含みを持つ発言をして全員を見回した。
『なんかあるの?』
『その・・・モンスターが入室する際の条件を出したのです・・・』
『条件?』
『はい・・・。食料を持ち込む事、持ち込む際には一人だけ・・・、でないと人質を殺すと・・・』
その言葉に全員が苦い顔をした。
『一人ずつ・・・』
『人質・・・』
『はい・・・後は武装を解いて来ないと殺すとも言っていました・・・』
それが如何に簡単なことでは無い事か理解するに時間は要らなかった。
『随分と用心深いんだな・・・』
『間違いなく裏に居るわね・・・』
桐生とベルが作戦をどうするか検討しているとリィムが唐突に提案してきた。
『私が乗り込みます。皆さんはその間に・・・』
と、言いかけた所で桐生がその続きを遮った。
『まて、学級長。なんか怪しい・・・。その役目、俺が引き受ける』
桐生がリィムの発言を遮り、名乗り出た。全員がその提案に驚いていたが、ベルだけは感づいたのだろう。小声で聞いてきた。
『・・・罠?』
『おそらく。・・・下手したらあの村長すらも怪しい』
『どうゆう事ですか?』
『・・・詳しく話してて疑われてもあれだ。ベル、念話は使えるか?』
『あまり距離が離れていなければね』
『それでいい。詳しくは念話で伝える。リィムはその家の周りに結界の準備、ベルは念話と魔法の発動の為に魔力を溜めててくれ。レイナとミントは村長の家の地下って奴を調べてくれ。・・・当たってなきゃいいが・・・多分、村人は居ないだろう』
迅速に各々の行動を指示すると半信半疑だが全員が了承した。
『あの・・・助けてもらえないのですか・・・?』
村長が不安げに桐生達を伺ってきた。
『いや、行く。俺がそのモンスターのボスに会いに行こう。武装は解除って話だったな?俺は魔法使いだからこの杖だけ置いていけばいいな?』
そう答えると後ろ手に回して空間魔法から取り出した1本の杖をその場に置いた。
『大丈夫だと思います・・・。では皆さんはここでお待ち下さい・・・』
そう言うと村長が目的の家に歩き出した。その後ろをついて行く形で桐生が歩き始めるとそこから念話を始めた。
『・・・(なんで罠か疑ったかだけど、誰かひとり忘れていないか?)』
『・・・(レオンね。私も疑問に思ったわ。だって・・・)』
『・・・(あぁ、アイツが来ていない扱いにしていた。あの状況と態度で来ない理由が無いからな)』
『・・・(でも、どうする気?仮にレオンが生きててもあんたまで捕まったらなんも出来ないわよ?)』
『・・・(とりあえずレオンを助ける。レイナとミントの確認が終われば合図を出すから学級長は全力でこの家を結界で封鎖する。その中でベルが全力全開の魔法をぶっぱなせ)』
『・・・(あんた達諸共になるじゃない!?・・・あ、そっか。)』
『・・・(そう。俺にも加護の魔法はある。レオンと一緒に加護の中に居るから気にせず思いっきりやれ)』
『・・・なるほど』
ベルがやっと口を開くと全員がどういう事か聞いてきた。
『勇人、なんだって?!』
『これは罠を使ってモンスターを討伐するあいつの作戦よ。レオンも救いながらね』
『レオン君もあの家に居るのですか?!』
『多分。私と勇人の勘だと居るはず。捕まってるってのがセオリーね』
『でもなんも言ってなかった・・・あ?!』
『さすがに気付くわね?そう。あの村長、なんも言わなかったのよ。レオンが来たともね。だからアイツは助けに行きながら私達に託したのよ』
『・・・レイナ。行こ』
そこまで話すとミントは村長の家に行くように促した。
『うん、多分私達の確認が合図になるって流れっぽいしね!』
『上出来。リィムはあの家を全力で結界張って?その中で私が思いっきり魔法をぶちかますわ』
『分かりました。・・・流石ですね・・・。そこまであの短時間で作戦を練るなんて・・・』
『ま、頼りになるわよね』
『ふふふ・・・。これで喧嘩はしなくなりますね♪』
『それとこれは別よっ!・・・全く、茶化してないで取り掛かるわよ!』
四人は作戦を理解したのか一斉に動き始めた。
ー。
ーー。
ーーー。
桐生が家に入るとそこは異臭が篭っていた。生臭く、腐った様な臭いだった。
『ひでえ匂いだな。なんだこれ?』
『モンスターの糞や食料の食い残しでしょう・・・。それにしても・・・良かったのですか?』
『ん?何がだ?』
『貴方は・・・恐らくあの中で一番強い方とお見受けしましたが・・・』
『あぁ、強いな。でもあいつらも中々にやるからな。外からモンスターが来てもどうにかなるだろう』
『でしたら良かったのですが・・・』
『で、この下か?』
桐生は家の片隅にある地下へと続く階段を指差しながら村長に聞いた。
『はい。その下に居ます・・・。では・・・』
と、村長が先に階段を降り始めた。
『おい、良いのか?入るのは一人なんだろ?』
『私はモンスターのボスから案内役を言われておりまして・・・』
『なる。それなら行くか』
二人は軋む階段を降りながら地下へ向かった。降りた先は洞窟のような空洞になっており、大きい箱などもすんなり置ける程の広さがあった。
『この先にいらっしゃいます・・・』
『あいよ』
更に奥へ向かうと何かのうめき声の様な物が聞こえ始めた。
『・・・』
『・・・どうされましたか?』
『確認だけど、俺ら以外にこの村に助けに来なかったのか?』
『はい・・・学園長様にお話した後来て頂いたのはあなた方だけでございます・・・。』
『・・・そうか』
桐生はその答えに確証を得た。すると念話の声が入り桐生は意識をそちらに向けた。
『・・・(勇人?聞こえる?レイナとミントが確認したわ。・・・全員殺されていたわ)』
『・・・(だ、ろうな。こっちもレオンが来ていないって話を聞けた。準備は出来てるか?)』
『・・・(えぇ。いつでも行けるわ)』
『・・・(了解だ。まだレオンを助けていないからまだ待機だ)』
『・・・(分かったわ。合図はよろしく)』
そこまで話していると最奥まで着いたのか壁が広がっていた。何も無いように見えたがよく目を凝らすと誰かが居るのを確認できた。頭髪は金色、短めに切り軽鎧を装備していた。腕は拘束され宙から吊るされていた。先程のうめき声は恐らくこの・・・捕まっているレオンが発していたのだろう。
『よう』
『・・・は、勇人』
『なんだよ、一人で突っ走るからもう終わってるもんだと思ってたのにwww』
『・・・すまん、捕まっちまった』
『・・・見りゃ分かる。後で罰則が待ってるから必ず助けてやる』
『嬉しくない発言だけど・・・ありがてぇw』
二人は軽口を叩き合っていると背後から声が聞こえた。
『おやおや・・・あまり驚かれないのですね・・・?』
『あぁ、バレバレだったからな』
答えながら振り向くと村長がそこに立っていた。その背後に黒いオーラを放ちながら。
『ほう?』
『お前、演技下手だなw大根役者も笑っちまうぐらい下手くそだったわwww』
『・・・何故、と聞いても?』
『だって、レオンが来てるのは間違いないのにお前なんも言わなかったじゃねーか』
『・・・ここに来ない可能性は考えなかったのですか?』
『こいつが?自分の故郷の一大事なのに?・・・あぁ、そんなことも知らないで嘘ついてんだから見破られて当然かwww』
『・・・だとしてもモウオソイ・・・。貴様はもう何も出来ナイ・・・。ここで村ノヤツラト同ジヨウニコロシテヤル・・・』
途中からだが村長の言葉は聞き取りづらい音を出し始めた。と、同時に村長の身体はみるみる溶けていきその痕跡から異形なモンスターが現れた。
『・・・へぇ。コイツは確かに見た事ねーな』
桐生がそう言いながらスキルを発動してモンスターのステータスを見るとそこには『????』と表記なっていた。
『ワタシハ御方ニヨリウミダサレタ者ダ!そこらにいるヤツトオナジアツカイハコマルナ!!』
もはやしっかりと聞き取る事すら難しくなった言葉を吐くと魔法を発動した。爆発の魔法、フレアだ。
『おっと?』
桐生はヒラリと躱しながら距離を取った。
『へぇ、魔法まで使えるのか。ならそれなりに強いのかもなw』
余裕な態度が気に食わなかったのかモンスターは再度魔法を発動しようとした。
『は、勇人っ!?』
『慌てんなw今助けてやるよ』
魔法が発動する刹那、桐生は加護の魔法でレオンごと結界を張った。
『(今だ!思いっきりやれ!)』
桐生の念話で合図を出すと突如地下まで届く程の業火が発生した。
『ガ、ガァァァァァ?!ナンダコノ炎ハ?!』
モンスターは突如発生した炎に驚愕し、防御も間に合わずその身を焼かれていた。
『逃げるぞ!』
桐生は吊されたレオンのロープを切り、抱き抱えると逆召喚で地上まで跳んだ。
『大丈夫っ!?』
地上ではリィムが結界を張り、その中でベルの全開の火炎魔法、地獄の業火(ヘルファイア)が家ごと燃やしていた。
『大丈夫です!結界の外には出していません!』
『勇人は?!』
と、桐生を心配するレイナの後ろから逆召喚で跳んだ桐生が現れた。
『よ♪上手くいったな♪』
答えながらレオンを下ろすと拘束されているロープを解き、回復魔法をかけ始めた。
『勇人!レオン君!良かった・・・』
『おー、無事だぞ♪・・・ってめっちゃ燃えてるwww』
回復しながら家を見るとそこには跡形もなく燃えるであろう熱量を含んだ炎が舞い上がっていた。
『あんた、なんともないの?』
『発動と同時に逃げたからなwwwしっかし上手くいったなwww』
答えると同時に回復が済んだのかその場にスクっと立ち上がると全員がレオンの周りに集まってきた。
『・・・言うことはありませんか?』
リィムは笑顔だった。笑顔過ぎる程の笑顔だった。それが察した全員がビクッと顔を引き攣らせ一歩下がってしまった。
『・・・す、すみませんでした・・・』
レオンはその笑顔の前に素直になるしかなかった。
『全く・・・後でちゃんと償って貰いますからね?』
リィムはそう答えるとクルっと回り、いまだに燃えている家を見ていた。
『ま、今回はあんたが悪いわね。覚悟しときなさい』
ベルも同じ様にリィムが向かった先を見やった。
『・・・めっ』
ミントは幼い子供を叱るように言うとペちっと頭を叩いた。
『・・・でも無事で良かったよ。もうこんな事したらダメだよ?』
レイナは諭すように話した。
『・・・村人達は・・・』
『・・・確認した。全員間に合わなかった・・・。すまねぇ』
『・・・いや。多分そうなんだろうなって思ってた・・・。俺・・・さ。なんもない村が嫌で学園に入ったんだ・・・。幸い狩りとかしてたから適性があってSクラスまで行けたんだけど・・・。ちゃんと元気だって言ってやれなかったんだ・・・』
『・・・』
桐生は話し始めたレオンを見ながら黙っていた。
『幼馴染も居たんだ・・・。すっげー明るくってさ?いっつも俺と言い合って居たんだけど・・・。俺がこの村を出る時に言いそびれた事も言えなくなっちまった・・・』
『・・・そうか』
『・・・助けてやれなくてゴメンな・・・。皆・・・本当にゴメン・・・』
レオンはその場で声にならない嗚咽を吐きながら涙を流した。周りはそんなレオンの声を聞いていたのかただ、静かにその場を過ごしていた。

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