異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第28節 出動

例の如く学園長室に呼ばれたSクラスの面々は学園長が現れるのを待っていた。部屋を漂う緊張感は図書館での事件と同じ様だった。
『今度はなんだ?・・・ウチのクラスは皆居るよな?』
そう聞きながら周囲を確認する桐生だったが、今回は誰かが欠けていることは無かった。
『・・・ごめんなさい』
キョロキョロと周りを見ていると横からミントが小さく謝罪してきた。
『ミントは悪くないよ?!・・・もぅ、勇人?いじめないで!』
レイナが桐生に迫りながら怒り始めると流石に申し訳ないのか桐生も謝った。
『す、すまん!別に嫌味とかじゃなくてだな!?』
慌ててフォローする桐生だったが既にミントは気にしていないのか展示品の皿を眺めていた。
『全く・・・。女心が分かってないな勇人はwwwそんなんじゃ、モテないぞwww?』
と、横から投槍を投げてきたレオンはニヤニヤしながら桐生を見てきた。
『・・・ほぅ。流石女心が分かるレオンはスゲーなwww・・・それなのによくもまぁ女の子には振られるけど、なんでなんだwww?』
『・・・ぐっ。痛いとこついてきやがって・・・。』
二人が睨み合っていると背後からベルとリィムのため息が聞こえてきた。
『ホンットに・・・』
『バカですね・・・』
二人が白い目で桐生達を見ていると部屋の奥の扉が開き、学園長が現れた。
『皆さん、またもやお呼びだてして申し訳ありません』
会うなりいきなり謝罪をするあたり学園長はSクラスに頼っている様子が目に見えて理解出来た。恐らく、Sクラス案件になってしまったのだろう。全員はそう理解すると佇まいを直した。
『・・・では、早速話をしましょう・・・。ミカ?』
『はい、学園長』
ミカは呼ばれると大きな白い紙を持ちながら現れ、中央にあるテーブルにその紙を広げた。全員が見るとそこには恐らく、この世界の地図であろう物が広がっていた。
『我が学園はここです。ここから南東に向かうと小さな村があるのですが・・・』
そこまで話すとレオンがピクっと反応を示した。
『・・・えぇ。レオンさんの故郷です。実を言うと今回の依頼はこの村の村長からの依頼でした。・・・レオンさん。貴方には少々辛い話になりますが大丈夫ですか?』
学園長はレオンに対してどうするか聞いていたが、レオンも内容が気になるのだろう。頷いて話を進めるように答えた。
『・・・では。今回のこの村なのですが先日、冒険者の方々が依頼を受けて近くの森に討伐に行った際・・・未知のモンスターと思わしき存在と遭遇。戦闘になりましたが一人を除いて全滅したとの事です・・・。ちなみに冒険者のクラスはプラチナクラス。我が学園で言うとAクラス程度の実力者です。本来ならダイヤモンドクラス以上の冒険者を送れば良いのですが、現在他国への遠征に行っているため不在でした。なので依頼が学園のSクラスへ回ってきた、という成り行きになります。』
そこまで話すとベルが挙手をして質問をした。
『おかあ・・・学園長。そのモンスターですが一体だったのですか?』
『えぇ、一体の報告を受けています。ですが・・・』
『連携でも取ってきたのか?』
『桐生さんの言う通りです・・・。モンスター達は連携を取り攻撃してきたので冒険者達は対応する前にやられてしまったのです・・・。』
その言葉に桐生以外のメンバーは驚愕した。
『・・・?連携取るのがそんなに珍しいのか?』
『・・・個体差にもよりますけど、基本的にモンスターは連携を取る習性はない、となっています。私も初めて聞きました・・・。』
答えたリィムはありえないと言わんばかりの表情を取っていた。
『そう。リィムさんの言う通り、モンスターは連携を取る事はありませんでした。ですが今回の件では連携を取っている・・・。つまり・・・』
『図書館で戦ったアイツが絡んでる可能性があるって事か』
その言葉にミントが今度は反応を示した。
『えぇ。ですので今回の任務は未知のモンスターの討伐、並びにその調査になります』
そこまで話すとレイナが今度は質問を出した。
『あの・・・その近くの村の人達は大丈夫なんでしょうか・・・』
『恐らく・・・としか言えません。村長からは水晶を使った連絡を受けた際には無事だと聞いていますが・・・』
部屋には緊迫した雰囲気が漂った。その空気を破ったのはレオンだった。
『こうしちゃいられねぇ。早速行くぞ。はえぇとこ行かねーと・・・』
いつもの余裕のある表情は抜け、どこか危ない雰囲気を匂わせながら立ち上がった。
『お待ちなさい。急くのは分かりますがまだ準備が出来ていません。ここから村までの距離を知らない訳では無いですよね?・・・焦ってもいい結果は出ませんよ。少し落ち着いてください』
学園長が宥めるとレオンは渋々元の位置に座った。
『ですが悠長に構える時間もありません。・・・皆さんは遠征になりますのでその準備に取り掛かってください。私の方で馬車などの手配をしておきます。出立は恐らく夜になるでしょうから準備が終わり次第休息を取っておいてくださいね?何か質問はありますか?』
その言葉に一同は沈黙の了解で答えた。
『では、皆さん準備をよろしくお願いしますね』
そう言うと話は終わったのか学園長は部屋から退出して行った。恐らく馬車の準備などを指示しに行ったのだろう。
『・・・とりあえず準備をしましょう。食料なども恐らく学園長が準備して下さると思いますので、装備など整えて夜まで待機しましょう』
学級長であるリィムが仕切ると全員がコクンと頷いた。・・・レオンは神妙な顔付きで窓から空を見ていた。
『・・・レオン、行くぞ』
『・・・あぁ』
桐生は去り際にレオンを促して退出した。その姿が虚ろに見えたが自分の故郷を案じていると考え、深く考えていなかった。

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