異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第26節 衝突と和解

『だぁから!調子に乗ってないし、お前の事を下に見てないっての!』
『嘘ね!あんたはそー言いながら私の事を蔑んでいる!だったらなんで手加減したの?!』
昼食を食べ始めるクラスの中の一角でそんな罵声が響いていた。中心に居るのは桐生とベル。話の要点だけ纏めると模擬戦(魔法)の授業で2人はペアになり魔法を競うはずだったが桐生が手を抜いていた疑惑があり、言い合いになってしまった様だ。
『手加減してねーわ!・・・本気でやったら俺らの力じゃ周りまで巻き込んじまうっての分かんねーのかよ?!』
『それは巻き込まれた奴が悪いでしょ?!そもそもSクラスと合同なら多少距離を置くのが普通でしょ?!』
『だからって遠慮なしにバカバカ魔法ぶっぱなしやがって!結界貼る身にもなれよ!』
『いいじゃない!誰も怪我してないんだから!』
『そーゆー問題じゃねぇよ!・・・ったく、この自己中は!』
『なによ?そもそもあんたが最初から手を抜かなきゃ良かっただけの話でしょ!?なんで私が悪いみたいな言い方するのよ!』
両者共に引かぬ言い合いに周りの魔法クラスの人達はその場から離れようと立ち上がりかけた。
『大丈夫ですよ。もう終わらせますから』
そう言いながら桐生達の一角に向かう一人の女子生徒。魔法クラスの面々はその生徒を見た瞬間、表情は安堵した。
『だいたい・・・』
『そもそも・・・』
2人が丁度言い合いが被ったその時クラスに響き渡る音が炸裂した。
ゴンっ!!!ゴンっ!!!
『なっ?!』
『あたっ!?』
2人は同時に頭を抑え、その場にうずくまった。痛みが和らいできたのか上を見上げるとそこには見るからにご立腹なリィムが立っていた。
『ベルさん?桐生さん?今は昼休みの時間ですよ?皆さんの迷惑になりますので喧嘩なら後でしてください?』
そう言うリィムは笑って言っているが笑顔の裏に阿修羅が見えた桐生は冷静になる様努めた。
『・・・ふんっ、もういいわ。あんたはいつか泣かせてやる』
『男の泣き顔なんか見たいのか?悪趣味だなwww』
売り言葉に買い言葉だったがリィムの睨みでその場は落ち着いた。ベルは居づらくなったのかその場から去っていった。
『・・・ふぅ。全く・・・。桐生さん?喧嘩はダメですよ?』
『したくてしたわけじゃねーんだが・・・』
『それでも!あんな風に相手を挑発する様な言動は控えて下さい?』
『分かったよ。気を付ける。』
そこで自体は収束したのか穏やかな昼食の時間が訪れた。
『それにしても・・・ベルさん、どうしたんでしょう・・・。前はあんなに怒る方では無かったんですけど・・・』
『え?マヂ?』
『えぇ・・・。確かにスタンドプレーは目立つ方でしたけどあそこまで食い掛かって来る様な方では無いと認識してましたよ?』
その言葉に桐生は理由を探ろうとしたが、1秒とかからず思考を止めた。
『(やっぱ俺のチートが原因だよなぁ・・・)』
そう。自分でも理解出来ていたからだ。ベルはかなりの努力家である。時間があれば己の魔法を練磨し、知識を広め、新たな魔法まで覚えようと勉学に励んでいるのだ。そこに昨日の図書館での任務である。自分がどれだけやれるか試すチャンスだったのだが、桐生がチートである為努力を踏み躙られたと思ってしまい、気が立っているのだ。
『(やっぱ謝るかぁ?でも謝ってもなんかキレそうだし・・・あぁ~めんどくせぇ。よく世間の奴らはこんな面倒臭い事考えれるな)』
そう思案していると昼休みが終わる鐘がなり、桐生は昼食を食べていない事に気付いたがもはや手遅れの為、渋々自分の席に戻るのだった。・・・ベルは午後の授業には参加しなかった。
ー。
ーー。
ーーー。
一日の授業が終わり各々が帰路へ向かう中、桐生は今日の出来事について考えていた。
『なんも答えが出てこねー・・・』
独り言の様にボヤきながら机に突っ伏していると、騒がしく教室の扉が開く音がした。
『こ、ここにいたんだね桐生君!』
そいつは魔法クラスの奴だろう。息を切らしながらも桐生を見つけ、慌ただしく近寄ってきた。
『お、おう?なんかあったか?』
『なんかあったか?じゃないよ!!今校庭でベルさんと魔法クラスの先輩達が喧嘩しそうなんだよ!!止めてあげてよ!』
その意味を理解するのに間が空いたが、理解するとガタッと立ち上がり校庭を見やった。そこには遠くからでも見える程分かりやすい赤髪のマントを羽織った最近イラつき気味のベルが見えた。正面には5人程の群れが見えた。
『あれ?』
桐生は指差しながらクラスメイトに話し掛けた。
『う、うん!助けないの?』
『んー・・・。』
桐生は悩むと判断材料としてスキルを発動した。
『(ベルはレベル45・・・相手は・・・おぉ、50、52、49、55、53か。分が悪いけど魔力自体はベルが強いな・・・えー、めんどくせぇwww)』
桐生は頭をポリポリと掻きながら考えたが、同じSクラスが集団でボコられるなどやはり気持ち的に嫌だったのか窓から飛び降りて校庭に向かった。
『ちょ、ちょ!?ここ3階だよ?!』
クラスメイトは飛び出した桐生が心配で窓枠まで走り寄ったが桐生は風船が地面に落ちるようにゆっくりとしたスピードで降りていった。
『ひ、飛行魔法・・・?!そんな・・・先生達しかできないと思ってた・・・』
地面に着地すると桐生は校庭に向かい歩き出した。焦らず、たまたま鉢合わせたかの様に見せる為である。
『・・・なんですか?私、忙しいんですけど。』
『そんな釣れない事言うなよベルちゃん?ちょーっと俺らと遊ぼうぜって言ってるだけなのに♪』
『そうそう♪いっつも勉強頑張ってるベルちゃんにご褒美ってね♪』
ゲラゲラと笑いながら話しかける男達はそんなつもりは一切ない様子だった。
『・・・はぁ。あの、私そんな暇ないんで。遊びたいなら他に行ってください』
『俺らわぁ、ベルちゃんと遊びたいの♪♪』
『興味ありませんし、馴れ馴れしく呼ばないでくれませんか?名前も知らない先輩方』
『あ、自己紹介がまだだったね♪ごめんごめん♪俺は・・・』
『興味ありませんって言葉理解できませんか?知りたくもないし、必要ないって意味です。』
『・・・』
『用は済みましたね?では』
そう会話を終わらせ、振り返って帰ろうとした時、一人の男が声を荒らげた。
『おい、待てよ』
『なんです?』
振り返ろうとした瞬間、ベルはその右手を捕まれ強引に引き寄せられた。と、同時に左手を抑えられ身動きが出来ない状態になってしまった。
『・・・離してくれませんか?先生を呼びますよ?』
『そんなの関係ねぇな。ここまでコケにされて黙って帰るほど俺らも暇じゃないんだよ』
『・・・』
『いいから付いて来いよ。・・・抵抗すんなら容赦はしねーぞ?』
『私がSクラスの人間だと知っててもそういうんですか?』
『んなもん知ってるに決まってんだろ?でもこの状況はどうだ?なんか出来るか?しかも5人も相手に?』
ベルは小さく舌打ちをした。確かにこの状況は不味い。頼みの魔法も手を封じられて使えない。レベルも相手が上なのだろう。振りほどこうにも抗えなかった。その様子が面白かったのか男達はゲラゲラと下卑た笑い方をしてベルを見ていた。
『・・・(確かにヤバいわね。かと言って助けを呼ぼうにも誰も見て見ぬふりしてるし・・・。最悪ね・・・)』
諦めたくはない。だが、なにも解決策が思い付かずベルは悩んでいた。すると、自分の背後から誰かが歩いてくる気配を感じた。
『(誰か助けに来てくれた?でもこの状況じゃあ・・・)』
そう考えていると、男達も気付いたのだろう。その気配を感じ振り向くとあからさまに不味いと取れる表情をした。
『おい、あいつってよ・・・?』
『やべぇな・・・』
と、口々に危険を察知した言葉を発していた。ベルもその姿を確認したいが、男達の身体で見えなかった。だが、声で誰が来たかはすぐに理解出来た。・・・今、助けてくれる人間の中で一番嫌な相手だったのだ。
『おいおい、デートの誘いにしちゃ随分と無理矢理だな?そんなんじゃ楽しむ事も出来ねーだろ?』
桐生はあからさまに面倒くさそうに話しかけてきた。
『お前には関係ないだろ・・・失せろ』
『確かに関係はないな。別にベルが誰かと遊ぶのは否定しないし興味もない。・・・けどな』
『あ?』
『俺のクラスメイトを困らせる様な奴をそのまま放っておくなんて事はしたくねーんだな、これが』
『・・・いい気になるなよ?たかが召喚されたからって調子に乗るな。てめぇとは実戦の経験がちげーんだよ。さっさと消えろ、雑魚が』
『おうおう、随分と吠えるワンコだことwww・・・なぁベル?困ってねーか?』
桐生が男達をサラッと無視してベルに話し掛けた。ベルはその質問に声を出さずに敵意だけ向けてきた。
『俺は敵じゃねーわwwwまぁその目線でなんて言いたいかは分かったけどよw・・・『戯言はいいからさっさと助けろこのバカ』って所かwww?』
その答えに満足したのかベルは目を閉じて後を託した。
『つーことだ。先輩さん方。・・・覚悟は出来てんだろうな?』
桐生はそう言いながら男達に向け殺意を放ちながら構えた。リーダー格の男は一瞬たじろいだが踏みとどまり、怒声で他の男達に命令を出した。
『てめぇら!この調子こいたクソガキをやっちまえ!死ななきゃなにしてもいいからよ!』
その声と同時に魔法の詠唱に入る男達だったが、一番桐生に近い男は声と同時にその場に崩れ落ちた。見るとその真横には桐生が立っており、一撃で気絶させたのだった。
『なんだ?合図がなきゃやったらダメだったかwww?悠長に待ってるから始まってると思ったぞwww』
と、笑いながら桐生は新たに構え始めた。いきなり一人が倒れた事により周囲は動揺が隠せず詠唱も止まってしまった。
『おいおい・・・経験積んだ先輩じゃなかったのかよ?まるでドシロートじゃねぇかwww』
そうボヤいた桐生の攻撃により残りの男達は一瞬でその場に倒れた。殴られ、蹴られ、投げ飛ばされ、何も出来ずにベルを抑えつけている男だけが残ってしまった。
『て、てめぇ卑怯だぞ?!普段は手を抜いてんのか?!』
『あぁ、抜いてるぞ?モンスターでもないし、俺に敵意を向ける奴でもないのに本気になれってのか?お前は小虫を殺すのに全力を出すほど臆病者なのか?・・・さて、どうする?』
男はギリギリと歯を噛み、どうするか考えていた。と、ふと名案が思い付きニヤリと笑みを零した。
『なぁ?今回は俺が悪かったが、ここいらで仲間にならないか?頭はお前でいい。なに、悪い事をしようって話じゃない。どうだ?一緒に楽しくやろーぜ?』
そう言って桐生の目の前にベルを突き出した。ベルはこの男が何を言っているのか理解出来ずただ流れに身を任せていた。
『仲間?』
『そうさ!あんなすぐにやられる奴らなんか元々期待なんかしてなかったさwww俺はまぁ頭脳担当って事でいいからよ?』
そう言いながら桐生に歩み寄りながら話を進めた。
『確かに、楽しくやるって意味じゃ悪い気はしないな』
桐生も男に歩み寄りながら友好的な態度を示した。
『ちょ、ちょっと!あんた?!』
ベルにとっては最悪の結果が待っていた。このクズと桐生が手を組んだらこれからどうなるか予想すらしたくない結果にしかならない事は明白だったからだ。
『だろ?じゃあこれからの話もあるからどっかで話そーぜ♪・・・がっ!?』
男がベルを盾に近寄った瞬間、激痛が走った。見るとベルを抑えている手首を桐生が握りしめていたのだ。
『・・・そんな話に乗るわけねーだろ?俺のダチを盾に話して、自分の仲間を信頼してねーよーな奴になんで従わなきゃなんねーんだよ?・・・男も誘うのも下手くそだな、お前』
ギリギリと桐生は握った手首に力を込めた。
『いっ!?痛い痛い痛い痛い!!?』
痛みが限界に来たのか抑えつけていたベルを離してしまった。ベルはサッと桐生の背後に周りその光景を見ていた。
『いいか?てめぇは俺のダチに手を出した。そんなお前を俺は許すつもりは無い。楽しくだぁ?んなもん、てめぇの独りよがりじゃねーか。・・・調子にのんなよ?』
殺意を込め、桐生は男に詰め寄った。男は痛みよりもその殺意に呑まれガクガクと震え始めた。
『今後俺の周りの奴らに手ぇ出すな。もし出したら・・・分かるよな?』
桐生が凄むと男は縦に頭をブンブンと振り、逃げるようにその場を去っていった。
『・・・』
『・・・はぁ。疲れた』
先程までの殺意は何処へやら、桐生は普段の気の抜けた顔に戻っていた。
『大丈夫か?』
『え、えぇ・・・』
『ん。なら俺は行くわ』
『ちょっと待ちなさいよ・・・』
『あん?』
『・・・がと』
『??』
『ありがとうって言ったの!!』
『・・・お、おう』
『・・・ねぇ。あんたってこんな私ですら友達って思ってるの?』
『え?駄目なのか?』
『だって喧嘩ばっかするし・・・すぐに言い合いになるし・・・』
『ダチじゃなかったらそんな事しないだろ?』
『・・・』
『それに・・・Sクラスも他のクラスの奴らも世界を救う為に頑張ってるのに仲間意識もないなんてヤバいだろwww』
『・・・』
『・・・悪かったよ。手ぇ抜いてて。自分がどんだけ力があるのか理解してるから本気になる訳にはいかないんだ。でもベルみたいに努力して頑張ってる奴には俺の存在は確かに卑怯だ。だけど、それでも、俺は友達として一緒に頑張って行きたいし、楽しくやりたい』
そこまで話すとベルは小さく頷き俯いていた顔を上げた。その顔は今まで見た事も無い晴々とした笑顔だった。
『ホンっとね。手抜くのはカンに触ったけど。もういいわ。あんたがどれだけ周りを大事にしてるか分かったし・・・。』
ベルは諦めた様に話すがその顔は言葉と逆だった。
『・・・なんか拍子抜けだな』
ボソッと桐生が零した感想は2人の間を通り抜ける気持ちの良い風の音で消されてしまった。

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